今月予定されている参議院選挙。小生が経験した中では最低レベル。最も下らない選挙になりつつある。情けない選挙だ。
文字通り、涙コボルル
だねえ、というところです。
大体、マスメディアが争点にしている《給付金 vs 減税》。
あの報道の仕方は何ダイ?
この一言につきる。
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そもそも物価高対策といっても、重要論点になっているのは食料品、エネルギーなど必需財である。特に食料品価格の高止まりは日本の家計のエンゲル係数にも明瞭に現れている ― 数字を盲目的に受け取るべきでないことは投稿済みだが、それでも家計のやりくりに相当の影響が出ている事は、小生も日常的に体感しているところだ。
食料品を下げるなら消費税率を下げればよい。この理屈は分かる。であれば、輸入食料品に日本政府が課している関税率を下げればよいと、こう提案する政党が何故一つもないのだろうか?
下げられるのは消費税だけではない。関税だって下げられるのだ。何故?
こんな疑問をなぜ誰も口にしないのか?七不思議であります。
牛肉、豚肉などは安倍内閣による《TPP協定》(及びTPPに代わる日米貿易協定)のお陰で、ほぼゝ関税障壁ゼロの状態に向かいつつある。日本国内の消費者でこの事を感謝している人がどの位いるのだろうか?もしTPP(及び日米貿易協定)なかりせば、牛肉事情、豚肉事情がどうなっていたか、想像したことがあるのだろうか?
他方、コメには極度に高い関税率がかかっているのは、最近のTV報道でも話題になっている ― それを批判する声が高まらないのは七不思議だが。
しかし、コメだけではない。小麦、大麦、脱脂粉乳、バター、澱粉、砂糖、豆類、そしてコンニャクイモにも200%超の高関税率が課されている。いわゆる《200%超の高関税品目》というリストで、食品加工業での利用を考えると、日本にとっての主要農産物でもある。
特にこんにゃく芋にかかっている関税率など、天文学的な高関税率で、こんな税率が世界で認められていること自体が、先進国(?)の中では例外的であろう。最近でこそ米の暴騰で関税を支払ってでもアメリカからコメを輸入する採算が取れ始めているが、これまでは正に「輸入禁止的関税率」そのものであったわけだ。
つまり
《200%超の高関税農産物》を牛肉・豚肉並みの関税率に引き下げるだけで、極めて強い食料品価格値下げ効果が期待できる。
例えば、コメの枠外輸入に課している341円/キロを小麦の55円/キロにまで引き下げるのは無理としても、半分の170円/キロに引き下げると、どうなるか?
例えば、いま急増している「カルローズ米」を考えて見たまえ。政府にはカルローズ米輸入の関税がおさめられているのだ。税収増だ。それでも消費者にとってはウェルカムなのである。更に国内販売米価を下げれば、もっと売れるだろう。消費者には嬉しく、財政が悪化するわけでもない。財政が悪化しないから、どこかを削る必要もない。
実際、ChatGPTで予測してもらうと
関税を 170 円/kg に引き下げても、輸入が「洪水」のように増えるわけではなく、最も起こりやすいシナリオでも 年間10万トン前後の上積み に留まる見込みです。これは(筆者追加:当面は)消費量の 2 % 程度で、市場を大きく揺るがすには追加の規制緩和や消費者嗜好の変化が不可欠と言えるでしょう。
こんな回答だ。米価は下がるが、国内農家も効率化されるので、輸入激増とはならないわけである。まさに事前の予想のとおり。牛肉自由化後の和牛事情を見るにつけても、日本のコメ作りを揺るがす打撃にはならない。農家、というより日本の農業にとって怖れるほどの打撃にはならない(と思われる)。むしろカンフル剤となるであろう。
お隣の韓国は、米韓貿易協定でほとんどの農産物に課していた関税を撤廃したが、米だけは撤廃対象から外している。それでも韓国は、年間で40万トンの米をWTOの関税割当制度の下で海外から輸入し、うち13万トンはアメリカ米であるということだ(ChatGPT調べ)。韓国もアメリカとの関税交渉で苦戦していると伝えられているが、もはや譲る所がなくて困っているかもしれない。
日本は韓国に比べれば、まだ譲るべき所がいくつか残っているだけマシであるともいえる。
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なぜこうした効果のある政策を選挙で公約する政党が現われないのか?それは(いまの)農家に打撃となるからである。
恨みを買いたくないという《動物的本能》が与野党含めて全ての政党を支配している。
安いコメを輸入すれば、確かにコメ作り農家は困るだろう。特に非効率、低能率の兼業農家は困る。低コストで安いコメを大量に作れないからだ。ある政党はそんな農家の味方になるはずだ。しかし、農業とは関係のない他の消費者は全員が助かるのだ。消費者だけではない。その消費者を雇用している非農業企業にとってもウェルカムである。なぜなら賃上げ圧力がその分弱まるからである。非農業・消費者世帯の味方をする政党が現われてもよい理屈だ。
しかし、そんな政党は出てこない。
「政治を目指す」という輩は、どうやら困る人を出したくないという妄念に支配されているらしいのだ、な。
思うのだが、これでは《政治》に取り組む資質に欠けている。
故に、大半の候補者は資質にも覚悟にも欠ける大根役者で、選んで投票するのも、実に下らないのだ。
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消費税率引き下げも、国民の全てに恩恵がまんべんなく及ぶわけではない。税収が減る以上は、どこかにマイナスの影響が現われる。小生は、年金保険料、医療保険料、介護保険料のやむなき引上げに追い込まれると予想している。そうでなければ、保険診療、介護サービスの低下、年金の減額、介護職員の処遇の劣化という結果も(可能性としては大いに)ありうる。
しかも、消費税率引き下げによる物価安は一過的で、需要を刺激することから、やがて物価は再び上がると予想するのが学理的には常識だ。このとき、また消費税率を下げるのか?このシナリオは、かつてギリシアが辿ったみちであることをいま誰が話しているのだろう?
農産物に対する関税率引き下げの場合、(上述したように)政府の揚超か、せいぜいが中立的だと(小生は)思う。とすれば、財政は悪化せず、インフレ圧力にはならない。円レートへの影響は・・・後で、ChatGPTに予測させよう。
いずれにせよ、高齢のコメ作り農家の怒りを怖がっている政党が、退職高齢者や入院患者の怒りなら平チャラだという、そんなロジックはない。選挙が終わってしまえば、必ず四方八方に忖度して、公約を反故にするのは明々白々であろう。
有権者は自らに都合の良い政策を求めれば良いのであって、アメリカのカルローズ米を買えば、日本のコメ作り農家に悪いのではないかと心配する必要など全くない。そうなれば、そうなればで、どう対応するかはコメ作り農家が戦略をたてれば良いことだ。アメリカ牛肉を買うときに、日本の国内業者のことを心配する人はいないはずだ。吉野家がアメリカ牛で牛丼を作っているからと言って、国内産牛肉を使えよとクレームをつける人はいない。同じことである。
やれば出来る事をなぜ政治家は提案しないのだろう?
これが小生には七不思議でありまして、各政党の幹部の頭脳のレベル、及び度胸と胆力、誠実さを疑っているものであります。
最後にもう一言。
消費税減税の財源として、岸田政権が約束した防衛費倍増の撤回を、なぜ野党は公約しないのであろうか?
これも小生には解けない難問であります。対米外交を重視したいなら、トランプ政権の要求に沿って農産物市場を開放しながら関税障壁を相互になくしていくのが理屈だろう。安全保障、軍事費拡大を志向しているなら、減税を提案するなど、下策であります。
マア、とにかく、今回の参院選は「下らない」の一言であります。
【加筆修正:2025-07-09、07-10、07-12】
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