2025年10月10日金曜日

ホンノ一言: クリントンの"It's the economy, stupid."、日本にだけは当てはまってないのかも

選挙がある度に日本人が最も関心があるのは「暮らしと物価」であるという事実は誰もがもう知っていることだ。つまり、経済問題こそ仕事をして暮らしを立てている有権者なら最も強い関心をもっている分野なのである(はずだ)。

これはアメリカも同じで、ビル・クリントンが1992年の米大統領選に打って出た時

"It's the economy, stupid"

要は経済なんだヨ! 愚か者が!!

オバマ大統領の

Change! Yes, We can!!

変えよう! ああ、できるとも!!

も有名だが、クリントン候補のこのスローガンは中身があるだけに非常な迫力があった。選挙必勝の戦略は、いつでも「経済政策」なのである。

フランスのマクロン大統領が信頼を失っているのも、インフレなど経済問題が根底にある。ドイツの政情不安がずっと続いているのも、確かに移民政策の失敗もあるが、エネルギー不安、生活不安、要は経済問題である。メルケル首相が16年間の長きにわたって宰相の座にあったのも、独ロ関係を安定させて、ノルドストリームを毅然として建設し、ドイツ経済の繁栄を導いたからである。その当時、一体ドイツ人の誰が、

ロシアと親密な関係を築いて、何か不都合が起きるのではないか・・・

こんな漠然とした不安を訴えていたか?

余程の変人だと言われるだけであったろう。

共産主義を放棄したロシアとの融和に不安を覚えたのはドイツ人ではない。英国と米国である。その果てに、今回のロシア-ウクライナ戦争がある。そして、ドイツはいま混乱しているが、これが米英のそもそもの世界戦略ではなかったかと小生は邪推している。

ことほどさように国を問わず、時代を問わず、最重要なはずの経済問題。日本人はどれほど自分の頭で考えようとしているのだろう。少しでも自分で考えようとしているなら、理にさといメディア業界がほおってはおかないはずだ。ところが、ワイドショーも情報番組も、ニュース番組も、経済分野の報道、解説にはあまり時間を割いていない。

「わかるだけの頭がないんだよネ」と心配なら、「経済戦略臨時調査会」なり、「経済審議会」なりを設置して、一流の専門家を集めて、公開で検討すればよいではないか。これなら中継報道できる。しかし、こんな提案をする政治家、ジャーナリストは一人としていない。

ということは、経済問題にはそもそも(ホンネでは)大した関心をもっていないのである。暮らしのことは、政治家におまかせだ。まかせているはずの政治家が、生活を楽にしてくれないので、腹が立つ。現時点の国民心理は、多分、こんなところではないだろうか?

大体、自民党と公明党の連立協議が不調に終わり、自公連立が崩壊したとして、それがどれほどの意味を持つのだろう?・・・日本人の暮らしには影響しませんよ。

日本経済において解決を要請されている問題は、自公連立とか、野党統一とか、そんな下らない些事とは関係なく、特定の形をとって現実に存在している。

  • 総需要が超過している時に需要を刺激すればインフレが激化する。
  • 労働生産性を上げずに、賃金を上げると、企業経営が不安定化するだけだ。
  • 政策目標の数と同じ数の政策手段は常に確保しておかなければならない。

等々、等々。

  • 医学の水準が低ければ、治る病気も治らない。医学の発達と水準次第。
  • 経済学のレベルが高まれば、経済政策のレベルも高まる。
  • 医師が治そうとしなければ病気は治らないし、政治家が必要な政策を実行しなければ経済問題は解決しない。市場だけではダメである。

ロジックは簡単で何も複雑な迷路に落ち込んでいるわけではない。


現在の経済問題への正しい取り組み方というのは、経済学の知識から大体のところは分かっていて、政治家が腹をくくって実行すればよいだけである   ―   それが中々難しいわけなのでございましょう。

それが出来ないでいる・・・確かにこれは一つの「政治問題」だが、将棋と同じで

もし手を付けなければ、〇〇〇〇となる確率が高い。

こんな予測なら現在の計量経済学の技術でも可能だ。というより、以前は結構そんな数字を政府は出していたし、メディアも数字を報道していた。数字を報道するあまり、数字だけが独り歩きすることが問題であったのだ。

4年、5年という長さの中期予測になれば、あらゆる与件が変化するので、経済予測の精度は大きく落ちる。しかし、1年程度の予測なら大いに参考に出来る程度の政策シミュレーションは今も可能である(はずだ)。

なぜ予測計算をグラフにして報道しないのだろう?政府内にそれが出来るスタッフはいるはずだ。

これが小生には《日本メディアの七不思議》になっております。多分、経済では視聴率がとれない、新聞が売れない、雑誌が売れないという、そんなマーケティングの事情があるのでござんしょう。

どの政党がどこと組むかなど、高級なエンターテインメントとしか思えない。端的に言って、下らない。実在する問題と問題解決の可能性に注意を集中するべきだ。

エッ、それが出来ない。出来るはずのことができない、と。政治家と日本のマスメディア業界は、ホント、似た者同士なんだネエ・・・そう思います。


「物価だ、減税だ、最低賃金だ、エンゲル係数だ」と騒ぐ割には、日本だけは

Stupid! It's the economy....,   except for Japan.

クリントン候補の選挙スローガンも効果が出にくい国、それがどうやら日本であるようで。

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