2025年10月31日金曜日

ホンノ一言: コメ政策。これもお目出度いのはメディアで、政府はリアリティが分かっているパターン

高市内閣で任命された新農水相が、前内閣のコメ増産方針への転換を(部分的に?)否定して、

米は需要に見あうように生産する

聞きようによれば、従来の減反政策に復帰するとも解される発言をしたというので、非常に不評である。

今年初来の米価暴騰を受けて、

米は増産する。余れば輸出すればよい。

こんな路線が日本米作農業の「最適解」(?)であると、メディア業界はこぞって賛同していたから、なおさらの事、需要に見合った米作は不評なのである。

確かに、二つの路線は真逆の方向を向いている、かのようにみえる。しかし、某ワイドショーに出演した時の新農水相の発言をよく聞いていれば分かるように、

「増産転換」は、言うは易く、行うは難し、である。

実際、ChatGPTにデータを確認してもらえば、誰もが知っているはずの事実が指摘される。

例えば

日本が国内産米を輸出できる国際競争力はありますか?

という質問に戻った回答の要旨は以下のような内容だ:

  1. コスト高・生産効率の課題
    • 日本の米生産コストは、輸出を念頭に置いた競争力ラインに比して高いとされており、例えば輸出用米の生産コストを「60kgあたり約9,500円」まで下げる必要があるという指摘がある一方、現状では16,000円前後とも報じられています。
    • また、農地の分散、兼業・高齢化、機械化・省力化の遅れなどが生産効率向上のボトルネックとなっています。
  2. 輸出量・シェアの小ささ
    • 日本の米の輸出量は増えてきてはいるものの、国内生産量に比して極めて小さい規模にとどまっており、2021年には22,833トン(国内生産量に対して“0.5%未満”)と報じられています。
    • 2023年のデータでは、輸出額が約6900万ドル程度という報告があります。
    • このように、「量を競う」市場では競争力が非常に限定されており、規模の経済を活かしづらいという構造上のハンディがあります。
  3. 価格競争力の制約・保護政策の影響
    • 多くの国の米輸出産業と比して日本の農業政策・流通構造・価格水準は保護的で、高価格設定が続いてきました。結果として「やや割高=量を取る国際市場ではハンディ」という評価があります。
    • また、輸出向けに生産を切り替えたとしても、農地転換や機械化・加工・梱包・物流などの新たな投資が必要となるためハードルが高いという指摘もあります。
  4. 市場・流通・規制の課題
    • 輸出対象国・地域の需要を開拓し、安定した物流・パッケージング・ブランド戦略を構築する必要がありますが、これがまだ十分整っているとは言えません。
    • また、国内では消費量の減少・人口減少・農業従事者の高齢化など構造的な課題もあり、輸出を本格化させる“余力”に疑問が残るという分析もあります。

要するに、割高な生産コストをかけたコメが日本国内で余ったからと言って、海外で売れるのか?販売価格がコスト割れになるだけではないか?日本米はプレミアム商品であるとしても、海外市場で認知されているのか?・・・こんな当然の点が指摘されてくる。

トヨタ自動車がブランドイメージを築くだけでも長い年月を必要とした。海外で売るには、売るだけのマーケティング努力が要るということだ。いまでも高コスト体質の日本農業である。どこから規模拡大投資、農業労働者の雇用拡大、国際プロモーションのためのカネをねん出するのか?JA(農協)など、ノウハウも人材も、何ももっていませんゼ・・・

なので、米作に関する限り、お目出度いのはメディアの側、リアリティがどこにあるか(それも初歩的認識の範囲だが)を知っているのは新農水相であると感じた次第。

ただ新農水相の発言に非常に不誠実な部分もあった。それは

政府は米価に介入するべきではない。価格は市場にまかせるべきである。

この部分だ。

この「米価は市場にまかせる」という発言は現行の米価政策の現実に反している。いまガソリン税の暫定税率廃止で激論が交わされているが、コメも高い関税がアメリカなど輸入米に加算されているのだ。だから、国産米が競争力をもてている。その関税は日本政府が課しているのだから、関税を若干でも引き下げれば、日本国内の米価はたちまちの間に急落するはずである。この理屈は、ガソリン価格と同じである。

ただ売れなくなるのは割高な日本米。売れるのは安価なカルローズ米などだ。これが許せないと日本人が思うなら、高い米価は自らの意思決定の結果なのだから、これを嘆くべきではない。

ガソリン税は議論するが、コメ関税は口に蓋をして一言もふれない・・・触れずにおいて「米が高すぎる」という。しかし「高すぎる」ことの原因は追求しない。メディアの報道方針はそのようである    ―    さすがにコメが高いのは「円安」が原因だと、そうノタマウ阿呆な御仁は見かけないが、現代日本のこと、そんな人物が現われていた可能性はあった。

トラック運賃の上昇に困る財界からの苦情は受け付けても、エンゲル係数の上昇に困っている一般消費者の苦情は聞こえない振りを政府はしている。メディアもそんな政府の思惑に協力する。何かの見返りがあるのだろう・・・

だから日本の報道機関は不誠実・不正直だと思われて、信用されないのである。

以上、覚え書きまで。

【加筆修正:2025ー11ー01】

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