2013年12月12日木曜日

愚かな選択-公務員宿舎の賃料引き上げ

住宅の賃貸料が引き上げられるのは、需要が供給を超過している場合、もしくはインフレーションが進行している場合である。

国家公務員宿舎の賃料引き上げが行われる。日経報道から一部抜粋したのが以下である。
政府は16年度までに公務員宿舎を16万3千戸と現在に比べ25%削減する計画だ。現在の賃料水準のままだと、18年度の賃料収入は年300億円程度にとどまる。支出にあたる維持・管理費の460億円をすべて賃料でまかなうには大幅な値上げが必要だった。

 民主党政権は公務員宿舎の賃料が民間の賃貸住宅に比べ大幅に安い点を問題視し、昨年11月に賃料を「おおむね2倍」に上げる方針を打ち出した。安倍晋三政権も値上げの方針を受け継ぎ、財務省が最終的な上げ幅を検討していた。

 多くの宿舎が値上げの対象となる一方、財務省は主に自衛隊員が入居する宿舎は無料化を進める。財務省が無料と指定する場合、宿舎と勤務地の距離が100メートル未満にあることが条件だったが、来年度から2キロメートルに条件を緩める。値上げを受け隊員が基地や駐屯地から遠い民間住宅に引っ越すと、自然災害など有事への対応がおろそかになりかねないとの懸念に対応する。(出所)日本経済新聞、2013年12月12日
今回の賃料引き上げは、民間に比べて<安すぎる>というのが理由である。希望状況を踏まえたものでもないし、物価はデフレである。上げる状況ではないだろうと思う。

小生は、国が経営する機関の末端で仕事をしているが、この町に移ってきた当初は短期間だが宿舎(官舎と通称している)に居た。それまではずっと官舎暮らしだった。その官舎暮らしを北海道に来て短期間でやめたのは、余りに古く、劣悪で住み心地が悪かったからだ。確かに町のマンションのほうが賃料は高額だが、品質がいいのだからそれは当たり前である。建物の賃料は、場所だけではなく、品質も見て妥当かどうかを判断するべきだ。ただ「安い!」、「不公平だ!」と言い募るのは、あまりに単細胞的言動であろう。

大体、維持修繕など毎年のメンテナンスをさぼってきたから、要修繕住宅が増えて、これ以上は待てないということになるのだ。そもそも官舎など、ほとんどは減価償却済みで、賃料が入れば収益になるだろうと思えるほどだ。その土地を官舎にしておくか、民間に売却するのが得か。機会費用だけが問題である。もし民間転用との機会費用を考えて合理的な土地利用をするなら、官舎の立地場所の多くは1等地点であるのでー 小生は新人時代に横浜山手町の寮で暮らした ー現在の官舎の多くは2倍どころか、賃料を数倍ひきあげてしかるべきだろう。

だとすれば、内装も綺麗にして国営の賃貸住宅にすれば財政収入にもなろう。よいではないか。そこに入る多くの人は、しかし、場所柄「外資系企業の取締役クラス」、大体は外国人だろうなあ。国有地を使って、そんなビジネスをするか・・・。確かに<官舎は安い>という不平はなくなるだろうが、どこか可笑しくはござんせんか。

市中相場よりも安い賃料で住宅を提供するのは、給与の現物給付にあたる。支給した現物給付の金額ばかりを問題視するのではなく、官庁から近距離の場所に住宅を与えることのプラスの価値はあるのかを問うべきだ。大事な点は、これだけである。国家にとっての利益がコストを上回るなら、問題は何もない理屈だ。いまはないが「下駄ばきマンション」よろしく庁舎ビルの上半分を「幹部用宿舎」にしてもよいのではないか。正に職住近接。緊急召集にも即応できるので危機管理にもなる。その時、多くの国民は「あんないい所に住んで不平等だ」というだろうか。

安い住宅に入ることを羨むばかりではなく、もっといいやり方はないか、と。福沢諭吉もいうように、怨望(=羨望・妬み)は社会にとってプラスの価値は何ももたらさない。ただただ、完全にマイナスの動機。それが羨望である。そんな心理的な動機が今回の引き上げには混じっていなかったか・・・。

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それにしても、最近はやけに自衛隊優遇が目立つ。僻んでいるわけではないが、そのうち防衛大学付属高等学校、その下には「防大付属小、中学校」まで創立されるのではないか。そしていつの間にか全国の県庁所在地には「防大付属」が設置されるなどということになるのではないか。おそらく防大付属高は全額国費、無料であり、逆に給与が支給され、付属小、中学校も一般公立校より安くなるのではないか。最後に、教育機関である防大・大学院とは別に「国家安全保障研究センター」なるものが共同研究機関として設立されれば、その時は戦後日本の在り方は決定的に変わることになる。そんな風にも想像される今日この頃である、な。


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