2023年10月15日日曜日

ホンノ一言: 経済学は目標数値に厳格にこだわるほどの精密科学ではないだろうに

先日投稿したのはアメリカのインフレ率が終息しつつあるということだった。



確かに今回のインフレは落ち着いてきてはいるが、その割には粘着質(Sticky)であって、青いラインで示している目標値<2パーセント>まで戻りそうで戻らない ― 少し以前だとトレンド値は戻っていたのだが、その後また離れてしまっているのだ。将来予測をしても、そうそう早期には2パーセント線には戻りそうでない。

対前月比の年率換算値でみて大体2.3パーセントというのが現時点の基調である。ということは、足元の物価上昇ペースが今後1年間続くときに、1年後の前年比が2.3パーセントになるということである。

目標値は2パーセントである。

なぜ2.3パーセントではいけないのか?

2.3パーセントではダメで、景気後退のリスクがあっても引き締めを続け、2パーセントになればインフレリスクが解消すると、なぜ言えるのか?

世は「白か黒か」の二択で考えるデジタル文化に染め上げられて来ているが、自然は連続でアナログに変化する。リアリティはデジタルでなくアナログだ(というか、そう考える方がシンプルだ)。人間の政策だけはデジタルにするなど、あまりにも単細胞の発想だろう。デジタルでは必ず誤差が発生するのだ。

そもそも経済指標が伝えるリアリティの精度はコンマ1桁には達していない。

先日のWSJにはこんな下りがあった:

 議事要旨によると、高官らは、物価の安定と雇用の最大化というFRBの目標を達成する上でのリスクを「より両面的」とみていた。

 高官らはまた、利下げに転じる前に、どれくらいの期間金利を現在の水準に、もしくはそれに近い水準に維持する必要があるのかを検討し始めた。何人かの高官は、金利判断や対外発信の重点を「『政策金利をどれだけ引き上げるか』から『政策金利を景気抑制的な水準でどれだけ長く維持するか』へと移すべきだ」と述べた。

 さらに、インフレ率が目標の2%に戻ると確信できるまで、金利によって景気を「当面」抑制する必要があるとの意見で出席者全員が一致した。

 少数の高官は「実質」FF金利を注視していると示唆した。名目金利が一定なら、インフレ率が下がるにつれて実質FF金利は上昇する可能性がある。

Source: Wall Street Journal
Date: 2023 年 10 月 12 日 10:59 JST
Author: Nick Timiraos
URL: https://jp.wsj.com/articles/fed-minutes-show-officials-divided-on-future-rate-rise-7e3245ce

アメリカの実質長期金利は既に大幅に上がっている。インフレ率はそうそう急には2パーセント線には戻りそうにありませんゼ。

どうするおつもりで?考えがおありと観えますが、というところである。


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