2023年10月1日日曜日

下世話な要約: ジャニーズ事務所の再生戦略をめぐるアジェンダ

「ジャニーズ事務所・性スキャンダル」は大揉めに揉めて当たり前の刑事事件である。その中で、企業としてのジャニーズ事務所をどのような戦略で再生していけばよいのか?

処罰するべき点は処罰しなければならない「企業犯罪」だと小生には思われる ― 創業者は既に亡くなっているが会社は存在している ― が、こんなディザスタラスなトラブルに見舞われた時の再生戦略には、いわば定石があるということは既に投稿している。一部を引用すると:

・・・、破滅的トラブルに見舞われた企業が採る方策は

事業全体のうち、クロの部分を切って(=償却計上する|身を切る)、白の部分を残す。結果として資金不足に陥れば、出資者を外部に求め「身売り」して事業体として生き残る。

これが共通原則であった(はずだ)と理解している。

ジャニーズも民間企業であるから、今後将来にかけて事業を続けて行ける部分と、トラブル処理をする部分とを分ける必要があるのではないか?どう分けるかは、色々な考え方があるだろうが。

今日現在の巷の噂では、大体、上のような方向でブラックとホワイトを分ける方針が明日の記者会見で表明される模様になっている。

つまり、「罪のない」タレントは新会社に移り、「賠償事務」を担当するブラックな会社と別経営にする。そして(ここからが)具体論であるが、新会社にはオーナー親族であるジュリー代表取締役は一切経営にタッチせず、また出資もせず、そして新社長には東山現社長が就く、と。


まあ、そんな素晴らしいプランが実行できるなら何よりだ。


ただ、こんなプランが例えばビジネスクールの授業《ビジネスプラン》でプレゼンする人がいたとして、当然、以下の質問はオーディエンスから出てくるだろう。それにどう回答するかだ。

  1. 新会社には現オーナーは出資しないということだが、そうなると外部のどこかが出資するということになる。それはどこか?決まっているのか?これから出資元を探すということか?
  2. もし外部の出資者が現れるとすれば、新会社の社長は出資者が決める筋合いであるから、東山氏がそのまま社長に座るという可能性は低いのではないか?
  3. 新会社設立までに、大枠、どのようなタイム・スケジュールでいるのか?
  4. 新会社が出来る場合に、現在のジャニーズ・ファンクラブも共に新会社の所有に移転されるのか?そうすると、ファンクラブの会費収入も新会社に移るが、そうなると残った旧会社にとっては大きな減収となる。
  5. 更に、著作権収入はどちらの会社に移るのか?
  6. 新会社はどのような資産を継承して設立されるのかという具体論がなければ、今回のプランの実行可能性には疑問符がつき、ビジネスプランとしては中身が伴っていないと評価せざるを得ない。
さらに
  1. もしも経営リソースを新会社に移してしまうと、旧会社は収入源を失い、そうなると旧会社のオーナーが保有している資産が主たる財源になる理屈だ。そもそも被害者への賠償義務があるとして、それは誰の義務と考えているか?会社の法的責任をどう考えているか?旧会社が債務超過か業績不振の状態に陥って倒産すれば被害者への賠償はどうなるのか?
  2. 旧会社の収入源が新会社に移転すれば現オーナーの所得はマイナスにならないか?現オーナーは私有財産を処分してでも賠償を行うという考えなのか?
  3. 新会社設立当初の経営リソースが不十分であると、新会社の収益は楽観できないのではないか?収支見通しはあるのか?人件費節減のため移転後に職員の解雇、タレントとの契約解除がありうるのではないか?
  4. 新会社設立時におけるバランスシートの概略をお示し頂きたい。基本方針はまとまっているのか?

ちょっと考えるだけでも、上のような論点が出てくるわけで、ここまでまとまって初めて新会社設立構想には説得力が出てくる。

まあ、個人的憶測ではあるのだが、会社分割でジュリー・オーナー代表取締役が保有する株式を旧会社・新会社に分割し、その上で新会社株式を外部の第三者が買い取る、と。そういう狙いかもしれず、もしそうなら新会社の大株主はジュリー・オーナーから、例えば民放テレビ局、新聞社、映画会社などに変わるかもしれず、あるいは新会社に移るタレントが共同で結成する(?)持株会が一部出資するかもしれない。そうすれば外部の安定株主が定まる。ジュリー・オーナーは株式をキャッシュに変え、それを賠償の財源にするかどうかが残る問題だ。もしこんな風に移行作業を進めうる人がいま社内にいるとすれば、ジャ社も捨てたものではない。が、しかし、会社資産のどこまでを新会社に移すかで新旧二社は利害が対立するので結構複雑な駆け引きとなるだろう。まとまるかどうかだネエ……というところだ。


それと同時に、旧会社が進めるべき賠償方針について語る必要がある。こちらは被害者全容の把握と個々の被害者に対する賠償の中身が主論点になる。こちらについても、大枠としてのタイム・スケジュールとフェーズ分けが求められるだろう。賠償事務には、何より《水平的公平性》と《垂直的公平性》が求められ、その業務完結には長い歳月が要されるだろう。そして円満な完結なくして、新会社の経営が企業モラルの意味から正常状態に復することはないのである……たとえ、新会社は賠償義務から免責されるという一札の下で株式買い取りに応じるとしても。

大変な作業量だ。ボロボロになったジャニーズ事務所の現スタッフでやれるのだろうか?


いずれにせよ、前回記者会見からたった時間を考慮すると細部を詰め切った上での会見とはとても想像できない。


とはいえ、口にした以上は実行する義務が生じる。また、そうするしかない、とも言える。

これからジャニーズ事務所・経営陣が歩く道は、想像を絶してドロドロした修羅場になるのは必至である。プランが確実に実行されるまでは《ジャニーズ忌避》の流れは勢いが増すばかりだろう。所詮は

親の因果が子に報い

ではあるのだが、それは(かつての)傍観者として負うべき《罪》であった、ということなのだろうか? 

【加筆修正】2023-10-02-10:27


【追記】2023-10-02:15:26

テレ東を除いてTVは全てジャニーズ記者会見を中継したので、否が応でも目に入るし、耳にも入る。

新会社は企業分割ではなく新規開設であるようだ。かつ、ジャニーズ社から継承する経営リソースはなく、ジュリー・代表取締役による出資もない。であるにも関わらず、ジャニーズ社が保有している著作権、肖像権、ファンクラブとの繋がりなど無形資産は、(出来る限り?)新会社に移転(というより、譲渡?)してもらいたいという希望もあると発言していた(当然だ)。外部からの出資は予定されてはおらず、何人かのタレント(と職員?)が資金を出し合って「持ち株会」でも結成するのかどうか、とりあえず資本金5千万円か1億円程度でスタートするのだろう。後は、全てジュリー・オーナーと今後相談して決めるということなのだろう。

ズバリ

オーナーと相談するとして、果たして新会社はやっていけるのだろうか?

社員数は?そもそもマネジャー・クラスへの給料の支払い能力は?

様々な疑問が残ります。学生のビジネスプランなら評価<良>かもしれないが、プロが発表するプランとしては評価は<可>。残念ながら落第ギリギリの出来栄えにしか見えない。<不可>と評価する先生もいるに違いない。

不安が先立ちますナア……という印象で、とりあえず今回が一つの節目か。


ま、具体的な中身は何も決まっていない。構想だけだ。

これから追々実行、確認されていくということなのだろう。が、一歩一歩というペースでタレント諸兄の生活は成り立つのだろうか?

耐えられない人から五月雨式に退所、契約解除する人材が続き、会社としての体力が衰えていくのではないかと予想する。これまた

日の下に新しきことなし。親亀こければ、子亀もこける

古言はいつでも世間の本質をついている、という一例か。


0 件のコメント: