2012年9月13日木曜日

メモ ― EU、EURO、ドイツに関するソロスの意見

墺紙Die PresseのWEB版を訪ねてみると、著名なベテラン投資家George Sorosが寄稿していた。タイトルは

"Wenn Deutschland den Euro verlässt, sind alle Probleme gelöst"


ドイツがユーロ圏から去るときに、欧州がいま取り組んでいる経済問題は全て解決される。なるほど、ギリシアのユーロ脱退、イタリア危機、スペイン危機、南欧危機が取りざたされているが、ドイツ一国がユーロ圏から去れば、それが一番早道ということか。ま、現実に立脚する限り、これが経済的かつ論理的な道かもしれんねえと気がついた次第。
Die Presse: Herr Soros, wollen Sie, dass Deutschland den Euro verlässt?
George Soros: Nein, ich würde es bevorzugen, wenn Deutschland seine Politik ändert. Dass Deutschland Wachstum unterstützt, damit wir aus Deflation und Depression kommen. Das würde nur temporär eine Inflation von mehr als zwei Prozent bedeuten. Deutschland muss einsehen, dass die Bundesbank nicht recht hat. Aber ich kann auch respektieren, wenn die Deutschen sich dagegen entscheiden, weitere Verbindlichkeiten zur Eurorettung auf sich zu nehmen. In dem Fall sollte Deutschland den Euro verlassen, und die Probleme der Eurozone wären gelöst.
Source: Die Presse, 2012,9,13 
ドイツがブンデスバンク流の厳格な金融規律を緩め、より成長重視的な政策をとる方向をソロス自身もより好ましく思うものの、もしドイツが欧州の絆を救済するために自らがユーロ圏を脱退すると決めるなら、自分は(=ソロスは)ドイツを尊敬するであろう。その場合は欧州の経済問題は解決される。そう述べている。要するに、ヘッドライン下の次の要約につきるわけだ、な。
Großinvestor George Soros sieht für Deutschland nur zwei Optionen: Akzeptiert eine höhere Inflation oder steigt aus dem Euro aus. Wenn die Politik so weitermacht wie bisher, drohen das Ende des Euro und der EU.
ドイツには二つの選択肢しかない。インフレ率を上げるかユーロ圏を去るか、である。従来の政策方針が継続されれば、いずれユーロとEUは終焉を迎える。

いまは、欧州の財政統合、銀行管理の一元化等々、アイガー北壁級のロック・クライミングさながら、どの国も大変な政治的エネルギーを投入し、各国の国民を言いくるめながら、直面している難問を解こうとしている。しかし、数学の難問を解くときに、10ページを要する解答よりは、1ページで済む簡潔な解答が、遥かにエレガントであろう。<エレガントな解決>は、それだけ問題の本質に肉薄しているから、初めて着想できるものだ。犠牲を最小にしながら、求める成果を得るならば、普通それを<正解>と呼ぶ。ま、あくまでも論理的には、だ。

実際、ソロスはこうも言っている。
Also wäre ein Euro-Exit Deutschlands sogar der einfachste Weg, die Probleme in Europa zu lösen? 
Ökonomisch und finanziell: ja. Aber politisch wäre das viel gefährlicher. Die Zusammenarbeit von Deutschland und Frankreich ist das Fundament der europäischen Einheit. Wenn das durch einen Euroaustritt Deutschlands in Gefahr gerät, gibt es einen politischen Schock. Aber ökonomisch würde es besser funktionieren, wenn wir wieder Flexibilität zwischen Gläubigerländern und Schuldnern hätten. Dann könnte der Wechselkurs die Ungleichgewichte ausbügeln.
経済的には正しいが、政治的にはずっと危険である。だからこそユーロと言う共通通貨圏構築は、経済の自然な流れから発生したものではなく、<陰謀史観>が当てはまる対象にリストアップした方がいいのじゃないかと、先日の投稿でも悪態をついたわけだ。

政治が経済の進化に追いつけない。サービス業の低生産性が経済全体の足を引っ張るのと酷似して、政治が政治的成果を上げられない現状が、経済社会の進歩を押しとどめ、混乱をもたらし、多数の国民の生活水準の低下を招いている。足元一年間の経済迷走も、つまりは”Human Factor”、<人災>であると言ってもいいのかもしれない。

良かれと思って皆のために努力していることが、実は多くの人間を苦しめる原因になっているとすれば、政治というのは本質的にトラジックな行為なのだろう。本当に政治家って人種は<業>というか、<宿命>というか、救われないねえ。

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