愚息はこの3月に地元の法科大学院を卒業したが、国家試験を受験したのは卒業後のことである。在学中に受験しなかったのは、制度上できないからである ― 予備試験という抜け道は余りに人数が少なく、狭き門なのでとりあげない。司法修習は12月(11月下旬とも言っているが)から始まる。卒業後の半年余りは、奨学金給付も終了しているので、無収入になる。まあ、親御さんがいるでしょうとか、アルバイトをすればいいでしょうとか、その程度に国は考えているのだろうが、合否も分からないのに5月に受験をして、すぐにアルバイトをする志願者はいない。大半は親が金を出し、アルバイトをするのは親にカネがない家庭の子息だけである。この一点だけでも、これでいいのか、という疑問がある。
もっと奇妙な点がある。今日、職場の健康保険における扶養者認定の更新手続きをした。無収入である以上は、愚息を引き続き扶養し、医療機関受診に障害があってはならないからだ。ところが12月から司法修習が始まる。司法修習生は、従来・現在とも<準公務員>として位置付けられている。旧制度の修習生は、医局に配属された研修医と同様、毎月給与を支給されていた。しかし、給付方式は既に廃止され、新制度の下では生計費が貸与されるようになった。公務員に準ずるからアルバイトは禁止される。しかし「貸与」であるから支給される金額と同額の負債が生じる。それ故に貸与は所得とは見なされないのが論理である。親の被扶養者であったなら、そのまま扶養を必要とする経済状況にある。それが理屈だ。ところが民間企業の健康保険組合の中には、たとえ貸与という制度であれ、毎月定額の安定した収入がある以上は、親の所属する健康保険組合の被扶養者としては認定できない。それ故、国民健康保険に移行しなければならなくなる。そんな例も現実にあると聞く。
× × ×
小生が所属する健康保険は文科省の共済組合である。そこではどういう取扱いになっているかを事務官に質問すると、「司法修習生の取り扱いについては読んだ記憶があるんですよね。それを確かめればいいのですが、ただ文科省のポータルサイトは中国からのサイバー攻撃を避けるため、いま閉鎖されているんです」、と。
準公務員と定め、すべての関係者を同一に処遇するべきところを、結果としてバラバラの処遇をしている現実がある。その点に絶句していたのだが、それに加えて確認するべき事項を確認しようとすると、<中国のせいで>できないという。空を仰ぎました。今日は北海道も残暑で空は真青に澄み切っている。<中国のせい>だけではないだろう。<日本の統治者の暗愚のせい>でもあろう。そう思いました、な。
× × ×
「中国からの攻撃があるかもしれないので、今日は難しいんですよね・・・」。中国は台風とか地震ではないのである。人が住む隣国であって、モノ言わぬ自然現象ではないのだ。単純な行政事務が、対中関係のトラブルでできないとは・・・。
運転には、上手な運転と下手な運転がある。同じ目的地を目指すなら、燃費をおさえて、不必要なトラブルを避けるのが上手な運転の名に値する。この3年間の民主党政権は酷い運転ぶりである。たしかに法曹専門家制度は、制度自体が奇妙かつ杜撰である。それを洗練したものに改善してくれば、それはそれで司法改革の理念を実現しようとする努力の証となる。しかし、民主党は常に「もっと大事な事柄がある」と強弁し、必要なことは放置し、強弁したことは全て諦めるに至った。唯一の成果である消費税率引き上げは、そもそも民主党が約束したことではなく、官僚組織の成果である。これほど怠惰であった与党・政党を小生は知らない。何か一つは結果を出してきたという記憶がある。政権交代は無残な失敗であったというべきだ。<政権交代自体に意味がある(あった)>。もちろんこういう見方もあろう。5年連続でBクラスに沈めば、監督交代自体に意味がある。しかし監督を代えても駄目だった。<交代>にはもはや意味がなく、<力量>だけが意味のある事柄になってきた。そう言えるのではないだろうか。
いやいや、専門家養成制度の在り方から、民主党政治批判へと、またまた話が拡散した。この辺でやめておこう。
0 件のコメント:
コメントを投稿