ただ、今では名議長と評価されているBen Bernanke FRB議長も、2006年2月に就任した直後は、それまでのGreenspan時代と異なり、市場の不安定性が目立って高まったという記憶がある。というか、そういうタイミングでもあったのだろう。下が2006年2月1日から2007年12月31日までのダウ平均である。
Source: Yahoo! Financeで作成
実体経済のピークは2007年12月にピークアウトするので2006年初めはまだ景気拡大期間中であった。それでも就任直後の5月から7月まで10%程度の株価下落に陥った。これは「5月に売りにげろ」という米市場の格言の現れとも思えるが、その後の急騰のあと、2007年に入ってからインフレ抑止に舵を切ったことに市場が過激に反応して、10%から15%程度の値幅調整を頻繁に繰り返していたことが見て取れる。
石油価格急上昇とインフレ抑止のための金利引き上げと景気崩壊回避とのバランスをどうとるかが難しい局面であったが、その頃はまだ実力のほどが分からないバーナンキ議長の一つ一つのコメントがあまりにストレートで稚拙に感じられ、その度に市場は不安にあおられて、暴落を繰り返した記憶がある。振り回された小生は「バーナンキ暴落」がまた始まったと愚痴を言っていたように覚えている。
日経平均は今日もまた前場で500円近い急落になり株価は12800円を割り込んだ。4月に就任した黒田日銀総裁の「異次元緩和宣言」後の株価上昇は帳消しになった。長期金利の先高感が株価に現れているわけだが、通常緩和では金利低下、異次元緩和では金利上昇とこんな屁理屈を信じる専門家は本来いないはずだ。理屈になっていないのだが、とはいえ、異次元の政策をとったときにどんな現象が起きるか知っている人は実はいないのだな。やったことがないもので・・・これまた事実だ。
「クロダコースター」は、急騰・急落を繰り返しながら、半年・一年のスパンでみて、どうなるのか?4月の巨大ショックがもたらした誤差修正プロセスが進行中とみれば、それはそれでいずれ均衡に達するとみられるのだが、マクロ経済のレジーム自体がスイッチしたとも考えられる。とすれば、現在の変動メカニズムに関する情報はない。
異次元の金融緩和と並行して、異次元の規制緩和、財政戦略、対外直接投資拡大策、対日直接投資誘引策が出てくれば、それはそれで高度の総合経済政策として機能すると思うが、どうやら日本経済の岩盤を変える第二のバズーカ砲は出るのかどうか不透明になってきた。さすがの安倍総理もパワーに限界がある。金融だけが突出したマネーゲームで終わりそうだ。マネー拡大だけでインフレを起こせるか?それだけの話しになりそうだ。成長しない国がいくらインフレを起こしても仕事の数や暮らしの水準は前と同じだ。インフレによる国債償還がたった一つの結果になる。官民ゼロサムゲームで官が得をするだけになる。家計、企業は今よりもっと貧しくなるだろう。本当はこれが狙いだとは誰も言わないし、小生もそうではないと思ってはいる。しかし、政治家と官僚組織がどう妥協する気か、誰も分かっちゃあいない。
これが本当の<不透明>、<不確実>。
いよいよ日本のマクロ経済は、ICU(=集中治療室)で蘇生治療を受けている図に近くなってきた。本当は麻酔科だけではなく、心臓外科や脳神経外科の医師も入る必要があるのだが、とりあえず麻酔科だけで何とかしている。死んじゃったら元も子もないわなあ。そう思ってみているところだ。
それにしても、景気が良くなってきたので量的緩和政策をそろそろ止めるかというと、金利先高感が出てきてーこれは自然だー、何とドル安に持っていけるとは、アメリカもつくづく要領がいいと言うか、トクな国だというか、羨ましい国だと思うのだなあ。
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