2013年6月18日火曜日

英国の脱EU願望 vs 日本の改憲願望

イギリスの北アイルランドでG8サミットが開催中だ。そこでアベノミクスが世界の賞賛を博したと日本では報道されているが、たとえば英紙Telegraphをみると、そんなことは書いていない。どこでも、自分の国と関係する事柄で頭が一杯なのだろう。

英国にとって、特に保守党政治家の持病とでもいえるものは<脱EU願望>だろう。元祖はもちろんサッチャー元首相というべきだが、寧ろイギリスは伝統的に欧州大陸から一歩も二歩も離れていたいという感覚を歴史を通じて一貫して持っていたとも言われている。

本日のDaily TelegraphにこんなG8報道がある。
Today, David Cameron welcomed world leaders including Barack Obama, Angela Merkel and François Hollande to the G8 summit in Northern Ireland.The summit was opened with a statement announcing the EU-US trade deal, which leaders hope will help to secure the global economic recovery. The deal is expected to lift a series of taxes and tariffs on inter-continental business, leading to a single market stretching from eastern Europe to the Pacific coast of America.The Prime Minister said it would be worth £11 billion to Britain, the equivalent of £384 for every household, bringing two million new jobs and “lower prices in the shops”.  (Source)The Telegraph, Tuesday 18 June 2013

米欧間でも自由貿易協定交渉が進行中だが、自由化によって英国民一人当たり384ポンド(=5万7千円程度)の利益を享受する。200万人分の雇用が創出される。こんな計算結果を示しているそうだから、やっていることはTPP交渉に臨む日本と概ね変わらない。

保守党の政治家ケネス・クラーク(Kenneth Clarke)が発言している。
However, in today’s article, Mr Clarke, a well-known supporter of the EU, unlike many of his Tory Cabinet colleagues, says that this country will not be able to participate in this deal and others without its single market membership. “Irony of ironies, it is of course the EU that is making deals with the United States and Canada possible,” Mr Clarke says. “It should come as no surprise that Obama’s officials have commented that they would have 'very little appetite’ for a deal with the British alone.”

英国人が脱EUを願うとしても、それは自由だが、英国単独でアメリカ+カナダと何かを交渉しても、相手にとっては何の魅力もないだろう。EU対米国の貿易交渉であって初めてアメリカも真剣に向き合う。そんな指摘であり、ま、当然のことでもある、な。

翻って、憲法改正を日本の保守党政治家が願うのは、それは自由だが、そんな日本と単独で何かを交渉することがアメリカにとって魅力なのか?韓国にとって魅力なのか?ASEANにとって魅力なのか?中国にとってはどうか?安倍総理は、自分自身の信念から、是非やりたいことが沢山あるに違いない。それは野田前総理、菅、鳩山元総理、いやこれまでの全ての総理大臣は、何かしらやりたいことがあったに違いない。では総理大臣たるもの、最高権力者になってから、やりたいことができたのだろうか?むしろやりたくなくても、巡り合わせでやらされてしまったことのほうが多いのじゃないか。日本で最高の政治権力を握ったとしても、日本国内で自分のやりたいことを出来るとは限らない。政治家としての実力がなければ、やりたいことの半分もできないだろう。

国家も同じことである。日本人が日本のことを「かくありたい」と願望しても、それが出来るとは限らないのが、現実である。その現実は、日本だけに厳しいのではなく、英国にとっても厳しいし、この事情は全ての国にとって同じであると、そう思うのだな。

他国が理解し、応援し、味方になってバックアップしてくれることを目標に掲げ、結果として自国のひそやかな願望が、他国の力によってかなってしまう。賢明な政治家であれば、そんな道を探すはずである。

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