全体にブランド店が並んでいるので、いくら「アウトレット」とはいえ高いことは高い。それでも米国・サンフランシスコに本拠を置くGAPに入ると、手ごろな品が色々と並んでいる。先週は東京から帰省した下の愚息にリーガルの靴を買ってやったが、上の愚息の誕生日も近づいているので、上は上でポロシャツなどでも買ってやるか。バランスもとれると、そう思って、二つ、三つと手にとる。サイズは、米国製などで日本の表示とは異なっている。上の愚息は、大変小さいので『Sは大きいよ、ピッタリなのはXXS、XSでも合うことは合うけど丈が長くなるのじゃないかなあ…』、そんな話をしながら二着買う。
GAPと言えば日本のユニクロの最大のライバルである。最近、株式価値でGAPを超えたという記事を読んだことがある。ま、ユニクロと似ているといえば似た雰囲気の店舗だが、デザインの志向は全く異なっている。消費者は、好みに応じて両者を使い分ければいいわけで、選択の自由が与えられている分、社会全体としては豊かになるわけだ。
そのあと歩いている内に、カミさんはT‐falをみつけた。鍋がほしいと言っているカミさんは、しばらく鍋を探した。小生が『そういえば、こないだTVでホームベーカリーが売れていて、普及率が20%を超えたと言ってたね。あの一つはT‐falだったろ?』、『そうそう、あれどこかな?』と回りをカミさんがみると『あった、あった、あれだよ』という。近寄って、左右前後をみていると、店員が寄ってくる。『いまは1万5千円ですが、9月にはまた元の価格に戻す予定です』、『先週までは2万円でした』などとアピールする。『そうかあ、定価が4万円だから、60%以上ひいているわけか、これは買いだなあ』と。パナの「ゴパン」も競合品として有力だが、これだけの価格差ができると決めるのも容易だ。
これまた「選択の自由」である。どの国に住んでいても、良いものは国境をこえて販売され、それが良いと思う消費者がいれば、それを買う。豊かさとはそんなものだろう。これを被害者感情から出発して見れば『外国品が入れば国内品が売れなくなる』という反応になるのだが、国内の良いものを相手国に売るのも自由なのだから、自分が「被害者」と言うなら相手国への「加害者」でもあるわけだ。相手国のライバルはやっぱり『外国品が入ってくるのは困る』と思っている。企業から見るとお互い様、消費者から見ると豊かになる、合計すればプラスになる。これが国際化のロジックである。
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ただ、疑問もある。贅沢品を輸出して、必需品を輸入する。食料自給率はもっと低くなる。エネルギーや食品を外国に依存する。これでいいのか、心配だという意見は当然ある。そもそも"Made in Japan"の製品は、世界市場で激しく競争している。日本は顧客国に対して強い交渉力をもっているわけではない。いかに差別化に成功してオンリーワンのポジションを得るにしても、潜在的参入企業は常にいて世界市場で独占的な支配力をもてるわけではない。円高に対してもヴァルネラブルである。反対に、日本に石油を輸出している産油国は日本に対して強い交渉力をもつ。そもそも価格弾力性が1を下回る財貨については、<際限なき値上げ>が利益拡大の早道なのだ。価格非弾力的だから値上げは収入を増やす。数量をしぼればコストは低下する。利益が増えるのは当たり前なのだ。
経済の国際化は、確かに日本人を豊かにする。しかし、食糧とエネルギーを外国に依存するのは日本が豊かになる分、その分を日本との交渉で略取しようという誘因を外国に与えることになるだろう。日本が輸入する必需品は高値となり、日本が輸出する製品の価格は買いたたかれる。日本全体としては、ちっとも豊かにならない。そんな状態も実現可能だろう。
経済のグローバル化に努力した国が、努力した分だけ豊かになるためには、世界市場でアンフェアな経済取引が横行するのを抑止する機関が必要だ。不当な市場支配力を行使するメガ企業、国営企業にペナルティを課す権限をもったIFTO(=International Fair Trade Organization)が設立されれば、経済の国際化に異をとなえる人や国はもはや誰もいなくなるだろう。そんな国際機関の設立に向けて努力を払うことは日本の国益とも合致する ― いや、それでも問題はすべて解決はしない。
ローカルな地域において政治的影響力を駆使したい人間集団はゼロにはならないだろう。困ったもんだ、小生は感覚的にそう思う。が、21世紀の<国家>とは所詮、というか徐々に、その程度にまで無用で大したことはない位置づけに収束していくのではないだろうか、収束させていくべきだ、と。そう思っている。
人間の暮らしに<国家>が影響を与えうる度合いは段々と低下していくのが望ましいとしても、それでもメガ企業の自己利益追求本能は抑えがたいものがある。こんな記事が2年前に出ている。
Amazon faces UK corporation tax probe
Amazon, the world's largest online retailer, is facing an investigation by British tax authorities, it has been reported.
The company disclosed the investigation in a filing with US financial regulators. It was alleged that the company recorded sales of more than £7.6bn in Britain over the past three years without paying corporation tax.
Amazon does not disclose how much tax it pays in Britain.
However, its main UK subsidiary, Amazon.co.uk, is regarded as a "service company" rather than a retailer.
That means that the British company provides services to a parent company based in Luxembourg, where the tax rate is lower, the Guardian said.Source: Daily Telegraph, 2012-4-5
北海道・苫小牧市にはトヨタの関連工場がある。会社としては独立しているが、製品販売価格は市場で形成されているわけではない-そもそも市場で効率的にアウトソースできるなら、関連会社として組織化する必要はない。それ故、トヨタ自動車北海道は愛知県のトヨタ自動車本社の利益形成に寄与している部分が大きい。いわば本社に対するサービス企業の位置にある。英国のAmazonは、ベルギーのAmazonに対するサービス会社である。この種の関係は、一国内多地域間で、国際多国間で多く形成されている。
要するに、企業は節税の動機をもつ。利益は本社に計上してマネーは効率的に使いたい。企業には合理的でも日本という観点からは非合理なことはある。一国には合理的なことでも世界全体では非合理なことはある。経済政策のグローバル化がないままに、無秩序なグローバル化が進めば、世界経済は「ジャングルの経済」になるだけだ。結局は混乱して終わりになる。経済と政治は一体のものでなければならない。
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