2014年8月7日木曜日

いわゆる「微罪」は叱りおくだけで良いのか?

時代劇をみていると邦画・韓流をとわず、ちょっとした盗みでも「棒たたき」、「鞭打ち」、「流罪」等々、ほんとうに過酷で辛い刑罰が科されていたことが分かる。流罪になったりすると入れ墨や焼き印をつけられて、島帰りであることが直ぐにわかる。まったく個人情報保護どころの世界ではなかったわけだ。

それに対して、現代社会では拷問や過酷な刑罰は憲法で禁止されているのが普通である。たとえば「万引き」などの微罪は、警察で名前を書いて説諭されれば(特に初犯の場合は)そのまま帰されることが多い。それが実態ということだ。

それでいいのだろうか?

「まんだらけ」の中野店が、販売価格25万円の「鉄人28号」を万引きした犯人に対して、
8月12日までに盗んだ玩具を返しに来ない場合は、顔写真のモザイクを外して公開します
 こんな警告文を出したそうな……。これに対して弁護士は、仮に店側が防犯カメラで100%万引き犯を確認しているとしても、民間企業には捜査権、刑罰権はないので、やれば違法であると語っているらしい。しかし、警察におくれば、(少年であれば尚更のこと)ちょっと叱られるだけで釈放される。『またやるんですよ』、こう言いたいかもしれない。

☆ ☆ ☆

最近、公務員、大企業のサラリーマンなど、「なんでそんなことをするの」と言うような人が、盗み撮りや泥酔した際の暴行、痴漢などで現行犯逮捕されるケースが増えている印象がある。もちろん印象だけの話しで、データをとれば実は件数は減っているのかもしれないので断言はできない。が、微罪は発覚しないこともあるので、これだけマスメディアに登場する以上は、やはり社会全体で微罪の件数は増えているのではないかと思うのだな。

アメリカで発表された論文を随分前に何気に読んだことがある。ファイルは保存していないし、いまでもネットを検索すればかかってくるとは思うが、タイトルも著者名も忘れてしまった。残念なのだが、主な内容は再犯確率のデータ解析だった。

要旨の一つは、再犯確率に対して最も有意に効いている要因は「初犯時の年齢」であるようなのだ。たとえば30歳を超えて初めて犯行に及んだ場合、再犯確率はそれほど高くはない。しかし10代で何かの犯罪に加担した場合、ずっと後になって再び犯罪をおかす確率が極めて高いという結論だったかと覚えている。何となく思い浮かぶ要因としては、無職かどうかなどの経済状況、居住区域、教育水準、人種などが有力かと思われるが、初犯時年齢が決定的だという内容だったのでまだ記憶に残っている。

痴漢や盗撮で現行犯逮捕されている(形式的には)エリート達の過去を洗いざらい調べてみると、案外、少年時に万引きや嘘による隠蔽や、何らかの不正義な行動で得をしたり、自己保身に成功した経験があるのではないだろうか。ふとそんな点に思い当たったのだ。

☆ ☆ ☆

最近は、学校でも家庭でもいわゆる「体罰」は禁止される傾向にある。それはそれで正当であり、善いことには違いないのだ。しかし、その裏面で「ルールを破っても、大したことはない」、「やってしまえば得なんだ」と、不正な行動で自分が得をする誘因を強め、しかも弱いペナルティを徹底することで若いうちから成功体験を与えてしまう。そんな社会を構築しつつあるのであれば、長期的に社会秩序が風化していくことは間違いない。そうなってから厳罰社会に戻るのは国民を不幸にする。何が正しいかを学ぶ機会を幼いうちから提供するのが適切だと小生は思う。

引き返すなら今のうちである。

日本でも犯罪のデータ解析が必要である。ビッグデータ時代であれば、当然の発想だろう。

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