2014年10月14日火曜日

世界市場はデータ過敏症?それとも中国不安?

ドイツ経済が景気後退局面に入ったと言うのでEU経済についてはにわかに先行き不安が高まってきた。先日OECDから公表された景気先行指数(Composite Leading Indicator)も確かに欧州については頭を下げた形になっている。




う~む、確かにEURO地域全体の景況は、5月の101.0をピークにして、100.9、100.8、そして8月の100.7と次第に低下している。これを称して『欧州経済の先行き景気不安』か…、そして昨日のNY株式市場は大きく下げた。本日は新聞休刊日だが、日経WEB版には『世界的な景気の減速懸念から、売りが続いた。ダウ平均の3日間の下げ幅は673ドルに達した』と報じている。

噂や不安ではなく、実態をみると不安は欧州ではなく、むしろ中国の方だろう。中国は、いま現時点でソフトランディングに懸命のようだが、中国バブル崩壊の心配はずっと潜在意識の中にある。

ま、日本は(幸か不幸か)尖閣国有化とその後の反日暴動をきっかけにして脱・中国経済依存を基本方針にしている。その間隙にドイツ製品が中国に浸透してきていた。欧州の景気後退は、中国経済の足踏みを反映するものだと思われる。

アメリカは自律的に回復しつつある ― テンポは極めて緩やかだが。原油価格(WTI)は本年前半に上昇したが、基調は横ばいである。住宅価格はシラー住宅価格指数の上昇が一服しているが、これは当然の調整であり、これまでの住宅価格回復が急テンポすぎた。FRBの量的緩和終了が意識されるたびに、株式市場の心理はクールダウンさせられているが、いまアメリカ経済を測る数字に異常が出ているわけではない。

ロシア経済は数字的に落ちているわけではない。同じEUでもフランスは回復ステージにある。

日本は……、4月から8月にかけて、景気のピークアウトを示す典型的な形をとっている。


(出所)上と同じ

もちろん消費税率引き上げの反動である。

が、ならしてみると結局、2012年末から13年にかけて何が何だかわからず浮き立った半年間があり、消費増税の前の駆け込みがあったものの、全体としては横ばい圏内。潜在成長力に沿った軌道から上放れしてはいなかった。現状はこんなところだろう。

円安で少しは製造業の海外移転がスピード調整されたか…、それと円レートが下がったので、ドルベースの収益が上がり、その分だけ円ベースの株価がレベル調整された。これで儲かった人も多かろう。とはいえ、日本経済を活性化するための<実質に踏み込んだ構造改革>は何かやったか……?社会保険料は少し上げた。消費税率も少し引き上げた。が、もうイヤだという国民の声がある。10%は勘弁してほしい。次第に強く意識されるようになってきている。中途半端だ。国の姿はこうあるべきだという志がない。が、ホントに嫌なら仕方がない。

あと死ぬまで10年か15年、日本経済がもってくれればいい……。まさかそんな思いが「世論」ではないのだろうが、どうも志が衰えている印象だ。

こころざし衰えし日はいかにせましな
冬の陽の黄なるやちまた
つつましく人住む小路
ゆきゆきてふと海を見つ
波のこゑひびかふ卓に
甘からぬ酒をふふみつ
かかる日の日のくるるまで

三好達治の『志おとろへし日は』の第二連の2行目は、断然、「冬の日」よりも「冬の陽」がいいと思う。高齢化した日本社会は、いま、社会全体が「志おとろへし時代」に入ろうとしている。世論にはかなりのバイアスが混じってくることを考えなければならない。

数字は現実を正直に映し出す。要するに、中国経済の混迷、何もしない日本。匍匐前進するアメリカ。世界経済のポイントはこんなところではないか。

国民に「匍匐させるなどそれでも良い政府か」といいかねない日本社会と、「匍匐するときにはその前で旗をふるのが良い政府だ」と考えそうなアメリカと。観察される違いは、その違いを生み出している国民の違いによると考えるのがロジックだろう。



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