韓国サムスンが半導体事業に極めてアグレッシブな拡大戦略に打って出るということだ。
【ソウル】韓国のサムスン電子は6日、韓国に半導体の新工場を建設するため15兆6000億ウォン(約1兆6千億円)を投資すると発表した。同社は陰りの見えるスマートフォン(スマホ)以外に成長の活路を求めている。
新工場の着工は2015年で、17年の稼働を目指す。(出所)Wall Street Journal Japan, 2014-10-6
新工場はソウル近郊の京畿道平沢(ピョンテク)市に建設される予定。同社は現在、国内では器興(キフン)区と華城(ファソン)市に主な半導体工場を持っている。
権五鉉(クォン・オヒョン)共同最高経営責任者(CEO)兼副会長はこの投資について「サムスンの将来的な半導体事業に著しい影響を与えるだろう」と述べた。
1980年代に世界半導体市場の覇権はアメリカから日本に移った。しかし90年代になって、日本はバブル景気の後始末で『三つの過剰』 ー 過剰債務、過剰設備、過剰雇用 - の解消に専念した。採った戦略はスリム化、協調的設備廃棄だった。政府自らが「過剰▲▲脱却が急務」と、そう音頭をとったことも影響した。
世界市場で攻勢をかける好機をうかがっていたサムスンは、日本の縮小路線に乗じて、攻撃的拡大戦略をとった。そしてそれが成功した。生産能力については「押さば引け、引かば押せ」の戦略的代替関係が当てはまることが多いからだ。韓国の進出と日本の後退は、日韓半導体生産ゲームのナッシュ均衡でもあったのだ。スリム化した日本勢は巨大化したサムスンと戦う意志はもはやなく、ひたすら製品差別化と「匠の技」路線を歩いていった。以後、半導体市場の覇権は日本から韓国へと移り、サムスンはその後スマートフォン市場へ参入し、今日までの成功物語を演出した。
そのサムスンが、利益の限界が見えたスマホから半導体に経営資源を集中させるという。
逆なら分かる。
利益の見込めない半導体市場から撤退する。スマホ市場に資源を集中する。ハイエンドのR&Dを強化する。ローエンドでのコスト優位性を徹底する。それなら分かる。サムスンが半導体をすてて、スマホに集中すると決定すれば、ライバルに対しては相当強烈なコミットメントになる。それと、スマホ市場は、確かに急速にコモディティ化しているが、バッテリー、GPSの活用、ビッグデータの活用等々、まだ未開発の分野は多く残されているはずだ。サムスンの利益機会は、半導体ではなくスマホ市場にまだ多く残されているのではないか。
これに対して、半導体は、単なる「IT産業のコメ」である。ウォン高も逆風だ。そして、なんと1兆6千億円の拡大投資!……差別化できるのか?コスト競争力は持てるのか?これが逆噴射にならなければよいが。
それを敢えて半導体市場で攻勢に出るとは……川上部門を内製化するシャープの垂直統合モデルをイメージしたか?それとも半導体市場でシェアを高めて価格支配力を握ろうというハラか?スマホ市場のライバルである中国スマホ企業に対して売り手交渉力を持とうというのか?色々と考えての選択だろうが、いまの世界半導体市場において価格支配力を行使するのは、参入の容易性を考えると、不可能ではないか。現実にはシェアを握っても価格を支配することは難しいのではないか。
今回のサムスンの決定をライバル陣営は歓迎しているような気がする。
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