『一利を興すは一害を除くにしかず』というのはモンゴル帝国の宰相をつとめた耶律楚材(ヤリツソザイ)の言である。
実は、歴史に名高い名宰相であるはずの耶律楚材は、特にこれといった業績(=軍功や政策)は一つもないと言われているようだ。ただ、モンゴル帝国の非文明的な蛮行から数多くの文化的遺産を守り抜いた。そんな点で中国では大変評価の高い人物であるそうな。文字通り、一害どころか多くの害を除いてくれたわけである。
不透明なカネの問題が与党の政治家にあるとき、野党はその問題を鋭意追求する。確かに不可欠の行動である。正に文字通りの『一利を興すは一害を除くにしかず』だ。いま日本の野党は政治の定石、政治の王道を歩みつつある。そう言えそうだ。
とはいえ、定石ばかりに頼っていては勝負に勝てないのも事実である。そもそも「定石」とは、基本的にはこうすれば危なくない、思わぬ不覚をとる心配がない。それが「定石」なるものの目的である。大体、勝つための定石などある方がおかしいでしょう。双方が勝つための定石をとったらどうなる。矛盾しているのだな。その意味では、民主党はじめ、いま野党がとっている戦術、与党のカネの問題を追及する戦術は、相手を弱体化し、自らは安全な立場に身を置くことになるので、この先政治的発言力は高まりこそすれ、弱くなることはない。負けない戦術をとっている。これは言える。
しかし、自らの実力を高めているわけではない。相手を自分と相応のレベルに引き下げて、それによって自分の敗北を回避しようとする戦略であると言える。
これをしも『一害を除くにしかず』と堂々と言えるのか?
ま、ほかに名案がなければ、カネの問題を追及するのが上策だ。うん、理屈はとおっている。
日本の国益を得るには、まずは「政治とカネ」にまつわる一害を除くのが早道だ。確かに「国益」には違いないが、そちらには"Grand Strategy"というか、大戦略はないんですか?そんな情けなさというか、冷めた思いというか、確かに言っていることは正しいけどねえ…という割り切れなさは多くの人が感じつつあるのではないだろうか?
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