2015年2月25日水曜日

経営者感覚: 大和魂よりは平和で良いかもしれないが・・・

この国の政治や行政に「経営者感覚」が求められることは多い。

公務員の勤務姿勢、管理体制が甘すぎることを指摘する時、「民間企業ではありえない」としばしば語られる。民間企業には必ずあるはずの従業員の団体交渉権、争議権をも語るなら、そこで初めて傾聴に値する社会経営論になるのだが、小生の不勉強もあってか、経営者感覚を愛用する御仁にして、公平で客観的な議論をする人は一人もいない。

誰だったか、名前を目にすることの多い評論家だったが、消費税率を3%も引き上げたのは経営者感覚に欠ける、と。うまく行くはずがない、と。まあ、確かに経常赤字という問題を解決するなら、値上げは必ずしも有効ではない。その話と財政健全化とを同じ土俵で論じるかねエ……

目を疑いました。

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いわゆる「公共政策大学院」ではなく「ビジネススクール」で勉強した人は特にありがちなのだが、会社経営が即ち組織経営の原理なのだと。そんな思い込みをする人が多いように感じている。

そもそも民間企業の−営利企業が大半を占めるので暗に想定しているのだが−目的は利益だ。まあ、最初から「当社の目的は利益です」といって、そのための戦略、そのための組織をどうするかと話をすれば、これはうまく行かない。スティーブ・ジョブスも、儲けようと思って仕事をしてきたわけではないと、語っている。しかし、企業の成長、ブランド価値向上など、民間企業の最終的成果は利益からもたらされる。これは当たり前の事実である。

損失ばかり出していますが、我が社の経営理念はしっかりと実現できています。そんな報告をして株主総会がすんなり収まるはずはないのだな。

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民間企業なら事業戦略の前に企業戦略を練り直すことが可能だ。

経常赤字を解消するには、事業戦略の見直しが必要だが、もっと大事なのは事業全体の見直しである。そこに「経営者感覚」の精髄がある。

しかし、国家は赤字事業を切ることができない。切ることができるなら、医療保険、年金保険事業から即刻撤退するのが合理的である。それは分かっていることだ。

医療保険の赤字を解決するには、保険の多額申請者の保険料を引き上げることが即効的である。民間企業なら当然そうするだろう。なぜなら民間企業は利益を求め、そのため自由に撤退参入を行い、顧客とは自由に契約できるからだ。

逆説的ロジックだが、国営事業には赤字がつきものである。だからこそ、国家は対価性をもたない租税を徴収し、収支バランスをとるのである。

国家の徴税権は商品対価ではない。国会が議決する税法に基づいてただとられるのである。憲法上、国民には納税の義務がある。その納税額が歳出額の6割程度でしかないのは、行政を管理する政治の問題、即ち有権者の要求に問題がある、ひいては社会システムの設計に問題があるのであって、システムの一類型である会社経営の問題ではない。

故に、税制改革に経営者感覚を混ぜて議論するのは、文字どおり、「木に竹を接いだ」議論になりがちである。

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