景気が悪くなるのじゃないかと、悪いデータを探せば、それなりに悪いデータが出てくるものだ。
本日の日経記事は
「変調」米景気 NY5番街を歩いて見えた実相というもの。
個別企業で賃上げの動きは出てきたが、点が線につながるには時間がかかりそうだ。3月の勤め人一人あたりの平均時給は前年同月比2.1%増の24ドル余り。10年以降、伸び率は2%前後を行ったり来たりで、08年のように3%台に乗せる兆しは少ない。米連邦準備理事会(FRB)の地区連銀経済報告によると、賃上げを通じて人材獲得が過熱しているのは「IT(情報技術)など一部の専門職」で、賃金全体の底上げは「緩やか」にとどまる。主な景気指標でほぼ唯一安定していた雇用統計も、3月は非農業部門雇用者の増加数が12万人余りと1年3カ月ぶりの低水準となり市場関係者を慌てさせた。(出所)日本経済新聞、NQNウィークエンドスペシャル、2015-05-02
まるでバブル崩壊後の日本経済と相似形である点を強調したいがようである―もちろんアメリカ経済と日本経済とでは同じバブル崩壊後であっても、データを見ればパフォーマンスが全く違うのは明らかだ。ま、リーマン危機が起こった2008年からまだ7年もたっていないわけだが。いずれにせよ、今のアメリカ経済に日本の「失われた20年」を投影する発想は的外れだろう。
それにしても3月の非農業雇用者数をみて市場関係者は慌てたと言っているが、どうなのかなあ・・・ちょっと眉唾ものだと感じる。裏には何か素人を誘導しようという玄人側の無意識の企てがあるようだ。そんな香りがする。
確かに雇用者数の前月差をみると3月は126千人増であったから増勢は鈍化したと。そう言うなら、それを否定はしない。
Source: Fed. St. Louis, FRED
上がそのグラフだが、『だからどうなの?』。毎月の増減は、上がったり下がったりしている。凸凹は経済データにつきものだ。『今月はたまたまあまり増えなかったんですよね』と言われれば、素人は「そうみたいですねえ」と、そのまま納得する動きではないか。そうは言っていない点こそ鍵である。
上図は同じ非農業雇用者数を前年同月差でみたものだ。1年前と比べて本年3月の雇用状況は格段に改善されている。改善のテンポが非常に速いため、4月にはその反動が出るのではないか。そんな心配すらある。
どちらにしても、アメリカの雇用状況は全く心配はない。
☆ ☆ ☆
にもかかわらず、悪いニュースを探しているのは、株価は下がるかもしれないと伝えたいためだ。そう勘繰る余地はある。
株価が下がると分かっていれば、分かっている人は必ず儲けられる。
そもそも5月には株価は下がることが多いと多数の人は知っている。なので、少し下がるだけでは株を売らない。しかし、いまの低下には実体経済の裏付けがあるのだと思えば、やはり売るだろう。
最近の悪いデータはビジネス・ツールなのだ。そ~んな気がしますがなあ……
経済データ自体はウソではない。無機的な数字である。しかし、それを語るのは邪念に満ちた人間であると言うのは厳しすぎるか。
経済データを語る玄人たちは、自らも投資を行っている当事者であることが多い。いわゆる「市場関係者」と一般の素人投資家の間には利益相反の関係がある。これまた事実だろう。
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