安保法案閣議決定でそれどころではないという向きもあるかもしれないが、真の政策的失敗が現に発生しているなら、失敗であることが時間の経過とともに露わになっているはずである。
しかし、AIIB不参加が判断ミスであるという批判は大きなうねりになって出てきてはいない。「うねり」どころか、「さざ波」ほどの批判も耳にしない。どうやら、一過性の外交トピックであった。それが話の本質であったのかもしれない。日本国内で中国シンパがプロパガンダを展開していたのかもしれない。ま、解釈は色々とあるだろう。
大前研一氏が以下のように指摘している。
約50か国が参加表明している中国主導の「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」に日本も参加すべきかどうかをめぐり賛否両論が入り乱れている。ドイツ首相からも参加を呼び掛けられ、政府に参加を促す意見が大きくなりつつある。中国は国内事情のためにAIIBを創設するのだと喝破する大前研一氏が、参加するのは愚の骨頂と断言する理由は何か。同氏が解説する。
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これまで中国は世界の歴史に例がないほど長大・膨大な高速道路や高速鉄道、港湾、空港などを建設し、大がかりな都市開発を推進してきた。たとえば、1990年代の初めには16しかなかった100万都市が今や200に上り、高さ200m以上の超高層ビルが345もあって世界一多い。高速鉄道網は2015年末に総延長が2万5000kmに達する計画だ。
ところが、そういうインフラを建設してきた中国国内の鉄鋼・機械メーカー、鉄道車両メーカー、建設会社、セメントメーカー、デベロッパーなどの“巨大マシン”が、中国経済のスローダウンによって、いま突然止まりかかっている。このままでは巨大マシンが設備過剰で崩壊して国家そのものが破綻しかねない。
だから、AIIBを創設してそれらの企業を労働者も含めた“人馬一体”で海外に持っていこうとしているのだ。決して一部マスコミが解説している「欧米先進国の金融覇権に対する中国の挑戦」とか「豊富な中国マネーで途上国を潤すため」ではないのである。
それにヨーロッパ、アジア、中東などの国々が便乗しようとしているわけだが、甘い幻想と言うしかない。
AIIBは海外で中国企業の仕事を創出することが主目的だから、プロジェクトのメインの部分は中国企業が持っていくので、あとの国の企業は“刺し身のつま”か“ピザ一切れ”になるだけだ。中国主導のプロジェクトの中で、そのおこぼれだけをもらっても、何の意味もないだろう。
(出所)Yahoo!ニュース、NEWS ポストセブン、4月23日
上で指摘されている目的が100%、それ以外にはない。そんなことはないと思うが、国内で過剰になった土建業に仕事を作ってあげるのは、かつて日本も円借款でやってきたことだけに、容易に理解できることであり、また経済の理屈にかなってもいる。
しかし、産業覇権を握ったあとに金融覇権を狙うというのは、多くの国家が辿ってきた経済覇権の勝利の方程式であるわけで、大前氏の指摘はとっくに分かっていることを別の言葉で言い換えただけだ。ま、そんな風にも言えるかねえ・・・と。日本の円借款もうろん臭げにそんな風に見られていたかもしれないと思うと、ずっと昔に少し携わっていたこともあるだけに、後ろめたい・・・という程ではないが、落ち着かない気持ちになったりする。
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