『申酉騒ぐ』が日本の格言なら、"Sell in May"はアメリカ株式市場の格言だ。これには続きがあって『5月に売って、9月まで戻るな』となっている。
要するに、秋口に株を買い値上がりをまち、5月には売れという投資ルールが当たることが多い、そんな経験則を伝えている。
そういえば、昨年の4月、5月は底値を探るような展開だった。が、1年毎の季節変動というより、夏のブレグジット(Brexit)をどう見るかで不安が先立っているという説明が多かった。その前の2015年の5月も冴えない動きだったが、これも株価の季節性というより国際商品市況の暴落と景気後退が心配されているような説明であった。すると案の上、15年には上海市場が大暴落を演じた。5月に売れという格言はまさに的中したのだが、マクロ経済の変動とたまたまマッチしただけだという人が多かったろう。
今年はどうか。
やはり冴えない動きだ。
しかし、WSJの見方はかなり強気である。
足元の景気拡大ペースが遅いという懸念は過去のものとなった。目下の注目は次のリセッション(景気後退)にどう備えるかだ。(中略) 5日に発表された4月の米雇用統計が堅調だったことを受け、米経済は正しい道筋をたどっており、FRBはこれまでやってきたことを今後もただ続けていくべきだという見方が一段と強まった。金融情勢は「安定期」にあるようだ。
(出所)WSJ、2017年5月9日
頭打ちのNY株価には、現在のアメリカ経済やFRB当局の見方が織り込まれているはずだ。とすれば、6月から9月まで今年のNY市場はプラスのサプライズが続き上げ基調を辿るのではないか。
理屈で考えると、株式市場に特定の格言が当てはまることはない。その裏をかいて利益を期待する投資家が必ず出てくるはずだからだ ー 市場が十分に効率的なら。故に、単純に過去の経験が繰り返されることはない。
しかし、毎年の年中行事は固定されていて、会計制度や決算の時期も固定されている。同じ時期に、投資家が同じような行動をとりたくなる。そんな反復性があるならば、株価にも現れるはずだ。だから『5月に売れ』。下がるべくして下がるなら、予想通り横ばいになるのと実質は同じである。
たとえ株価が停滞してもアメリカの金融情勢は「安定期」にあるとは、そんな意味だろう。
とすれば、『申酉騒ぐ』が文字通り東京市場で演じられたとしても、それほど驚くことではないことになる。北朝鮮リスクで東京市場は4月から5月にかけて低迷したという人が多かったが、その低迷は本当に北朝鮮リスクでもたらされたものなのか?怪しいものだ。そうなるべくしてそうなった。予想通りであったのかもしれない。予想と外れたトランプ大統領のシリア空爆はあまり関係なかった、その後の心配もあまり関係なかった、実はそうだったかもしれない。
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