2018年2月3日土曜日

一言メモ: 角界の行方を予想する

相撲は「国技」と言われれば特別の行事・団体と感じる向きもあるが、現実は相撲好きのマニアを顧客としている「興行」である。純粋に勝敗や記録を争う「スポーツ」と言えるのかすら、小生は疑わしいと思ってきた。

ただ、幼少期からずっと相撲は好きであった。その「好き」は北の湖をもって最後となり、千代の富士の時代になると、もう熱烈ファンとは言えなくなった。その後の若貴時代などは小役人の頃の仕事の忙しさもあって、思い出も思い入れもないというのが正直なところだ。

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やっと静かになる。やはり不祥事で揺れる角界が毎日ワイドショーで「あれこれ」と批判されたり、憶測されるのは不愉快であった。

10年ほど前に貴乃花親方が起こした「貴の乱」。それほど衝撃であったのか・・・千代の富士が北の湖にしかけた権力闘争のほうは、何となく記憶があるが。まあ、その時点で興味をもってフォローしていなければ、こんなものだろう。今回の顛末もやがて時がたてば何事もなく、忘却の彼方に消えていくような気はする。

10年ほど前に貴乃花が在籍していた二所一門を離脱して、理事職に立候補した時、一門の大御所であった大鵬はまだ存命中であり、若い者が頑張るのはいいことだと、後ろ盾になってくれたという話をきいた。大鵬ならやりそうなことだろう。理事会に入った貴乃花は出羽一門という本流出身である北の湖から評価され、後に抜擢され、角界改革の将来戦略を担当した。伯父が初代若乃花、父親が名大関・貴乃花、自分自身は平成の大横綱。その血筋は関取なら誰もが「この人は貴種なり」とリスペクトするだろう。そもそも日本人は家柄好き、世襲好きの潜在意識が強い。戦前期は新体制を唱える旧五摂家・近衛文麿に人気が集まり、今は梨園の御曹司・市川海老蔵の13代目團十郎襲名を心待ちにする。

角界の御曹司は一人飛び出しても一門の大御所・大鵬が盾となり、出羽一門出身の理事長・北の湖が後ろ盾となり、引き立ててくれた。そして、若年でありながら要職を占め続けてきた。北の湖理事長が急逝する前に遺言があり、まず八角親方が跡を継ぎ、程なくして貴乃花親方に禅譲せよ、と ー この話は真実かどうかわからないが、そんな遺言があったという。既定路線であったのだろう。

小生の知っている世界は角界とは全く様相を異にしているが、貴乃花親方が歩いてきたような人生をおくれば、まず確実に自分を過信し、他人は自分を尊重し、自分の意思を必ず忖度してくれるものと誤認するであろう。

大鵬も北の湖も世を去った。実父・初代貴乃花も伯父・初代若乃花もこの世の人ではない。実兄・二代目若乃花とは縁が切れてしまった。

戦前期・日本の何よりの失敗は、国をリードする指導層の養成に失敗した点にある。日本のエリートは、エリート教育を受けながら、そのエリート達の視野が実に狭く(組織に忠実だったとも言える)、杓子定規な発想にこだわり(受けた教育に従順に従っていたともいえる)、現実的な問題解決能力に欠如していた。十分な能力に欠けながら、日本のエリート層は、自分の能力を自ら評価し、過信し、外部の人間の介入を嫌悪し、そのため人事には常に執着し、処遇には常に不満を抱きがちであった。

貴乃花という一人の力士が角界においてエリート教育されてきたが故の決定的弱点をもっているのであれば、今回の理事選における敗退は、角界を現場で支える親方衆の日常的な感覚とあまりに遊離してしまった結果である。そのようにも見える。現場を支える人間集団から広く(本当の意味で)理解され、広く会話をし、信頼され、支持されない人は、いかに世間で正論を述べても、真の問題解決能力が欠如しているが故に、結局は評論家として外に出るしかない。古くて当たり前の組織論的な原理がここにある。

小生の上の愚息は、昔の小生に匹敵する相撲マニアであるが、将来の角界は「貴乃花理事長」という既定路線を離れ、次第に元横綱・大乃国である芝田山親方に衆望が集まってくるのではないか。そんなことを言っている。

その発言を文章で読む限り、予想として当たるかもしれない、と。そう思っている。

副理事の藤島親方(元大関・武双山)も人柄手腕とも優れていると伝えられる。
約束はみんな壊れたね。

海には雲が、ね、雲には地球が、映つてゐるね。

空には階段があるね。
(備考)三好達治『測量船』より

そもそも「将来の人事戦略」などは、言葉の遊びに近いのであり、「御曹司」は9割方、自ら転んでいくものである。

今回の角界騒動もまた世の中に掃いて捨てるほどある「必敗のパターン」だと。そう見るのが自然な受け止め方だろう。

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暴風雪でどれほど海が荒れても、海面の下はいつものように静かである。角界騒動とはいっても、強風に砂嵐が舞うようなものだろう。現実の世間は何も変わらない。1年も過ぎれば新しい体制が定着し、3年もたてば人は今回のことを忘れるだろう。まあ、その前に次の理事選があるだろうが、その頃には世間の人の頭も冷静になっているだろう。

やれやれ、よかった。もうウンザリである。

国会の線香のほうもいい加減にしてほしいネエ。

これらはマスコミが騒ぐからこうなるのか?そもそも騒動になっているからマスコミが食いつくのか?一体、どちらが真相なのだろうか?

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