2018年2月8日木曜日

戦前のベルリン、戦後の平昌が五輪史に残るか

北朝鮮が平昌五輪に参加できる道を開いたこと自体は文在寅大統領の政治哲学として共感できるところがある。

しかし、強硬外交を貫く意図を心の底に隠しながら、五輪を政治的宣伝の場に活用し、時間をかせぎつつ軍事力強化を続け、最終的には近隣諸国に圧迫を加えて様々な利益を獲得していこう、と。こんな国際政治戦略を北朝鮮がいま採っているとすれば、戦前期のドイツ・ナチス政権が採った戦略を再現していることになる。

ただし、仮面をかぶった狼の戦略を実行するには、騙される赤ずきんの役回りを演じる人物が必要だ。

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1930年代の欧州世界にあってはチェンバレン英首相がそうであったし、現在にあっては文在寅韓国大統領がそれにあたる。

ネヴィル・チェンバレン英首相はノーベル平和賞を受賞したオースティン・チェンバレンを兄にもち、自身は実業界でも成功し、政界に進出した後は女性や児童の人権問題に関心をもつハト派として活躍した。そのチェンバレン英首相が大陸欧州に対してとった政治戦略が<宥和政策>である。その外交戦略に沿って英国はドイツ・ナチス政権とミュンヘン協定を結んだ。

宥和政策は、ナチス政権をバックアップすることに目的があったわけではなく、台頭する共産主義国家ソ連への警戒心に基づくものだった。いわばソ連を牽制する番犬としてナチス・ドイツを使おうと考えたのだが、その番犬は島国イギリスのいうことを従順にきくような忠犬ではなかった。自らの意志をもつ猛犬であった。

中国大陸で台頭する共産党勢力を警戒するのであれば、アメリカのルーズベルト政権は日本と国民党政権との和解を調停するべきであって、そうすれば満州に勢力を張る日本はソ連を牽制することができ、最終的結果としてはアメリカの国益にも適ったはずである。しかし、イギリスの宥和政策の結末を見たアメリカはたとえ融和を演出するとしても大人しく日本がいうことをきくはずがないと悟った(はずである)。その後のアメリカの強硬外交は、経験から学んだ政治哲学であろう(と思われる)。

そんなことを振り返ると、たとえ文在寅大統領がいかに頑張ってもアメリカが対北朝鮮外交の方針を変えるとは思われない。日本も自分自身の過去を振り返れば、ソフト・コミットメントを選ぶ相手にはソフトに応じるどころか、逆にタフ・コミットメントをとってそのまま相手を押し出していく戦術を選ぶ、そのほうが得である、北朝鮮もそう考えるはずだ、と。そんな思考に基づき、故にアメリカの強硬方針に同調するだろうと思う。

なぜ文在寅大統領は北朝鮮に対して宥和外交をとろうとするのだろうか。なぜそれが効果的であると考えるのだろうか。宥和外交は失敗するケースが多いというのに。

まあ、先日も投稿したが、現在の韓国は韓国の国益を追求しているというより、中国外交戦略の駒の一つになっている、そう考えると理解できることが増えている。

やはりそういうことなのだろうか。

最終的には、朝鮮半島から米軍を含めた外国軍を撤退させることに目的があるのだろうか。しかし、北朝鮮が核武装し、むき身の韓国から米軍が撤退すれば北朝鮮主導の半島統一が実現可能になるのではないか。中国はそれで心から喜ぶとは思われない・・・。ムンさんの心の中はどうなっているのか?ともかくムン大統領、考えていることをすべて明らかにはしていないようである・・・

どちらにしても、平昌五輪は北朝鮮・金正恩政権にハイジャックされてしまった感がある。ナチスによる政治的プロパガンダの舞台を提供したという悪名を残したベルリン五輪の二の舞にならなければよいがネエ・・・。

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