が、今の段階で明確に批判/反論するべき見方はある。
先日どこかのTVのワイドショーであろう、こんな見方が大真面目に出てくるとすれば、大体以下のようなことであった。
フォードやクライスラーに比べればゴーン会長の報酬は少ないとか言っていますけど、これは世界が間違っているの! 社長や会長なんて何もしていませんよ!! 働いているのはエンジニアであり、社員なんですから!!!「失われた20年」を経て既に2018年も終わろうとしているいま、今もなお典型的な日本主義丸出しのこのような見解を堂々と開陳するとは吃驚したゼヨ、まだ夜は明けチャア、おらんぜヨ。こんな思いであった。
大体、それほど日産のエンジニアや社員が優秀なのであれば、なぜ倒産寸前になり、ルノーに救済を乞い、先方からゴーン氏を迎える危機に陥ってしまったのか。さっぱり合点がいかぬ。社員は優秀だったんでしょ?トップは何もしないんでしょ?失敗するわけないでしょうが、というわけだ。
ゴーン氏がトップになって何もしていなかったなら、なぜ日産の回復とその後の成長はあり得たのか? おかしいではないか、というわけである。
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「狼の群れを羊が率いる集団」と「羊の群れをオオカミが率いる集団」が争えば勝利はオオカミをトップとする羊軍団にあがる
勝負の天才ナポレオンの格言である。
才能のあるエンジニア達は彼らだけでは評価される仕事ができない。彼らを手持ちの資源として役割を与え、縦横に組み合わせ、それまでとは別の次元に属する強力な人間集団に再組織化できる才能は実に稀有である。故に、有能な経営者は世界的にも稀少であるのであり、有能な社員よりも遥かに高い価値を持つのである。こんな簡単なことはビジネススクールではイロハのイである。基本科目で最初に教わるトップマネジメントの役割を理解できない御仁には単位が認められない ー もちろん頭でわかっていても、それだけでは失敗するものだが。
単に勤勉で、そこそこ優秀なエンジニアや営業マンならば、数多いるのである。ただ彼らは使ってくれるトップに恵まれなければ、そこにいるだけの存在となる。
民間企業に限らず、国家、自治体、大学、競技団体等、あらゆる分野を通して、誰もが知っているはずの観察事実であると思うのだが、まだなお働いているのは身を粉にして汗を流して動いている人間たちだけ、とはネエ。
この傾向は、知識や科学というレベルを超えて、日本人のDNAに刻み込まれ、日本人がもはやそこから逃げることができないような遺伝的性向なのだろうか。とすれば「体質」という言葉が文字通り当てはまるというものだが・・・
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