日中関係は(歴史問題をたとえ脇に置くとしても)100年単位でみて、決して蜜月関係にはならないだろう。
そもそも米中関係がどれほど改善されても、米軍基地が日本国内にあり、中国軍基地がまったくないわけであるから、米と中はいわゆる《タカ・ハト・ゲーム》の状況に置かれているのであって、である以上は自ら《ハト戦略》を選択するロジックはない。そんな戦略的状況の下で、日本は米側に属しているのは(ほぼ?)自明であるから、中が日に対してソフトに行動する理屈は(ほぼほぼ?)ない。
高市首相の国会答弁から又々こじれている様だが、日常茶飯事の小競り合いと達観して、覚悟しなければやってはいけない。
ただ、外交には全く素人だが、簡単な理屈くらいならカミさんともよく話している:
カミさん:また台湾のことで高市さん何か言ったの?
小生:中国が戦艦を繰り出して台湾を包囲して、アメリカ海軍との武力衝突があるとするなら、これはもう日本にとっては「存立危機事態」だと、そういったんだよ。中国は台湾のことに口を出すなって激怒しているわけさ。
カミさん:起きてもいないのに、なんでそんな事を言ったの?
小生:高市さんの本音が出ちゃったんだろうネ。日本が「存立危機事態」を宣言すれば、自衛隊は行動を起こすし、そもそもそういうことをしようというのが高市さんだと言うことさ。
小生:ハッキリ言わなくてもイイのに・・・怖い人なんだね、高市さん。
小生:外交や国防に詳しい人はみんなそう言ってる。お手本はサッチャー首相みたいだし、これからもあるんじゃないのかナア・・・
一介の専業主婦である小生のカミさんすら「いまそれを言う?」という感性はあるようだ。
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ただ思うのだが、「台湾は中国の領土と日本が認めている」というのは、(専門家の議論があるようだが)やっぱり一寸違うのだろう。
台湾は日清戦争のあと日本に割譲された。日本が太平洋戦争に降伏するまでは日本の領土であり日本が統治した。ただ領有権を日本に譲渡したのは清王朝だった。その清王朝は辛亥革命で崩壊したのだが、それを継ぐ中国の公式政府は北京の袁世凱から軍閥へと混乱し、やがて孫文・蒋介石と続く国民党が北伐を開始し優位に立つことになった。日本は反・国民党の立場を選び日中戦争への道を歩んだ。日本は第二次世界大戦で無条件降伏し、台湾は中国に返還された。その時の中国政府は蒋介石の国民党政府だった。国際連合の常任理事国に選ばれたのも国民党の「中華民国」である。その後に起きた「国共全面戦争」はとても複雑で本稿で短く要約するのは無理である。結果としては、共産党が軍事的勝利を得て毛沢東が「中華人民共和国」の建国を北京で宣言し、国民党勢力の掃討戦を行う。蒋介石は中華民国首都を重慶から成都へ移し、最終的に台湾・台北に首都を遷都した。その後、中国統一を目標とする北京政府は台湾を制圧しようと前哨戦である金門島上陸作戦を展開したが想定外の猛反撃に遭い敗退した。形の上では、正式な政府である中華民国と、中華民国を軍事的に打倒した中華人民共和国が並立・対立する状況がずっと続くことになった。
アメリカと大陸・中国との国交は1971年の米中接近を経て1979年に正常化し、アメリカは中華民国と断交し、北京政府が中国の唯一の公式政府として認められた。が、アメリカはその後も台湾との外交関係を非公式に続けてきている。日中国交回復も枠組みは同じだ(と理解している)。
台湾が日本の領土でないことは自明である。もちろんアメリカの領土でもない。ではどこの領土か?
北京政府と台北政府はなお敵対関係にあって《講和》は成立していない。台北政府にとって台湾は仮の居場所なのであろう。ちょうど首都・開封を追われた「北宋」が南方の臨安(現・杭州)に首都を遷し「南宋」と称した故事と似ていないまでもない。臨安とは「臨時の首都」であるという意味だ。北京政府からみれば台北政府は(軍事的に敗北しているにもかかわらず)台湾を「占有」し、北京政府の統治権を認めようとしない。
故に、台湾を領有するのは北京政府か台北政府かを単純に決めるのは中々難しい。
確かに北京と台湾の関係は「中国の内政問題」であるのだろう。この認識は北京と台北双方に共通の認識のはずで、日本やアメリカ、その他の外国が介入する事柄ではないと、双方とも考えているはずだ。少なくとも日本の領土に関する問題ではなく、アメリカの領土問題でもない。たとえは悪いが、日本にとっての「北方領土問題」を見る視線とロシアが見る視線が正反対の関係にある事情と似ているかもしれない。アメリカが北方四島の領有権に何か意見を言えば、ロシアは『これはロシアと日本の問題だ』と口先介入を非難するであろう。
中国を統治している唯一の公式政府だと自認し、また承認されている北京政府としては、台湾を占有している「台北政府」を解体し、大陸と統合するのは国家目標なのだろう。しかし、日本が返還した台湾を受け取った「中華民国」が台湾に移り、台北政府が台湾領有権を主張するとすれば、日本がその正統性を否定するのは難しい。少なくとも、北京政府が台湾領有権を継承していると主張するのは、旧政府が現に台湾に存在し領有権を主張している以上、無理があると感じる(はずだ)。
「北京(=中国)が台湾領有権を現にもっていると日本が認めたわけではない」という議論にはそれなりの理屈がある。
このように、どこまでも平行線である。
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仮に、北京政府がソフト・コミットメントを採って、地方分権的原則に基づく《中華連邦制》を目指すとすればどうなるだろう?
中国は共産党による集権的計画経済では最早ない。共産党の優越的地位さえ認めるなら、それでイイと北京政府が達観してしまえば、あとは高度の自治権を獲得した方が、台湾ばかりではなく、中国国内の各地域にとってもウェルカムであろう。
国を問わず、時代を問わず、領有権の筋道など普通の人にはどうでもよいことだ。毎日が楽しく、暮らしが豊かになれば、その体制が最も好いのである。
政治は宗教とは違うし、理念は信仰と違う。政府は教会ではない。価値観などと小理屈を言わず、人々の暮らしを豊かにする平和な空間を創造してくれるなら、それが客観的な意味合いでも最良の政府であるに違いない。
豊かで広大な社会を造ったうえで、中国発祥の新たな文明を創り出していくのが、北京政府にとっては最適戦略だと思うがいかに?
ただ、創造と破壊を共産党が心底から怖れているなら、こんな方向は無理だろう。
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