昨日辺りの日経では、ソフトバンクとKDDI(AU)との間で現在進行中のiPhone販売戦争が報道されている。
KDDIは、通信料をソフトバンクと横並びにすると予想する向きもあったが、実際はKDDIの毎月通信料が4980円とソフトバンクより570円高くなった。これに関しては「当社は山の上にも基地局がある」というKDDI社長の言が紹介されている。つまり、より良質の通信品質を提供できる以上、KDDIはより高い通信料金を課しても顧客は納得できるはずだ。そういう議論に見受けられる。
しかし、それほど回線品質に自信があるのであれば、料金を横並びにすれば全面的に顧客を奪うことが可能なはずだ。それを敢えてせず、相対的に高い料金を設定したのは契約数量を抑えて、利幅重視の販売方針を選んだものと見える。契約数量を抑えるのは、利用者急増による回線劣化を避け、既存ユーザーをつなぎとめるためだろう。
しかし、この料金設定によってAUのiPhoneを選ぶインセンティブは弱まる。端的にいえば、経済的には両者イーブンと言えるかもしれない。品質が良ければ価格は高い。品質が劣れば価格は安い。ここ10年の間、日本のマーケットでヒットしてきたのは、品質はまあまあだが、価格が安い商品である。元々、ソフトバンクはユーザー急増で3Gから無線LANへ流し込み、回線の混雑緩和を迫られていた。条件がイーブンとすれば新規顧客獲得で両者は50%ずつシェアを分けるかもしれない。確かに新規契約者の増加率は鈍化するだろうが、回線への負担はソフトバンクで軽くなり、KDDIで重くなる。KDDIが評価されるポイントである回線品質は、契約数増加で相対的に魅力を落とすだろう。そうなれば通信料金を維持することも難しいかもしれない。
KDDIは、回線品質で勝負するようだが、どうもこの勝負、激しい価格競争を経て通信回線自体のコモディティ化が進み、結局、KDDIは自社回線の差異を守れないのではないかと予想する。ソフトバンク側に立って見ると、iPhoneは金のなる木ではなくなるかもしれない。Appleの政策変更によって迫られた事態であるにせよ、アンドロイド機種を導入することは、iPhoneに偏った製品構成をリバランスする「縮小戦略」になる。日本市場においてドコモが優位なポジションを作りつつあるアンドロイド市場に参入し、正面から競争を挑む模倣戦術をとる一方で、iPhone市場の過当競争を回避する。ビジネススクールであれば、このような戦略案は聴衆の関心をひきつけるだろう。
このように戦略的意図が分かりやすいのはソフトバンクの方である。KDDIはレイトカマーとしてiPhone を選んだ。なぜアンドロイドではなくiPhoneを採ったのか。KDDIはマイクロソフトのウィンドウズフォンも販売開始したはずだ。こちらは、あまり周知されていない。小生はWindows Mobileは侮れないと思っている。KDDIの真の目的はどこを向いているのだろうか?同社は、アンドロイド機種のホームページを閉鎖した。
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