9月の世界の株式売買代金は前月より28%の減少になった。その傾向は10月にも続いている。その背景は7月末から8月にかけてのギリシア危機と米国債。つまりは、ズバリ、金融市場の混乱である。一口に言えば「欧州債務危機に対して強力な対応策を決められるか」、ここが分からないので「世界景気の先も読みづらい」、したがって将来不安が高まり、リスクプレミアムが上昇し、末端金利が上昇している。そのために株価が低下している。金価格はピークから急低落したが、このところ国内市場ではグラム4300円前後で底打ちしている
資産を決済通貨でもつか、金・銀などハードカレンシーで持つか、債券で持つか、株式などリスク資産で持つか、でなければ事業投資するかを私たちは常に考えている。毎日の支払いにも事欠くような流動性危機に陥れば、資産保全をさしおいても決済通貨の確保が最優先になる。
現在進行中の事態は、明らかにマネー需要関数が上方へシフトして、そのために末端金利をおしあげている状況だ。金、株価ともに通貨ベースで下落したのはそのためだ。流動性不安からマネー需要関数が上方へシフトした時に、市場全体の流動性危機を鎮めるにはベースマネーの供給が特効薬である。一口に言えば強心剤だ。そのベースマネーはどこが供給してもよい。アメリカでもよいが、いま円・ドルレートが75円まで上がるドル安である。市場は円に逃避している。ならば、日銀が円のベースマネーを市場に放出することが最も有効であるはずだ。大規模な円高防止介入をすればよい。
これは特効薬だが、背景には欧州ソブリン危機による金融機関の経営不安がより基本的である。これを解決するには、厳格な資産再査定と公的資金投入が本筋だ。しかし独仏の駆け引きでらちが明かない。駆け引きがなくとも、拡大後の玉石混交集団であるEUの経済的実力を考えてみれば、近い将来にテキパキと適切な政策が実行され、金融市場の不安が払しょくできるとは思われない。ECBというより、IMFが欧州金融機関に対する最後の砦になることが最も有効だ。つまりはアジア→IMF→EUという経路で公的資金を投入するのが、世界市場にとってベストの解決法だと思われる。しかし、IMFの意思決定には欧州の利害損得が反映されている。
いま欧州が<瘦せ我慢>をして頑張ってみても、それは世界市場にとってマイナスである。IMFの機能強化と意思決定システムの見直しが課題だろう。マネーのある所へ経済ヘゲモニーも移り変わっていくのが歴史の法則である。
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こんなところかなと思っていると、政府は人事院勧告によらずに公務員給与を7.8%引き下げることを給与関係閣僚会議で決定したとの報が入った。28日にも閣議決定するよし。さては団体交渉権を付与して公務員制度が改革されるのかと思って詳細を読むと、そうではなく連合と同意した団体交渉権付与は後回しにして給与引き下げのみを先行実施したいということだった。
う~~ん、これは流石に無理筋になるのではないか・・・?
おそらく連合は引き下げのみを先にやるというのでは「約束が違う」というのではないか?いずれ団体交渉権(=協約締結権)を付与する法案は通すからと民主党が言っても、野党が過半を占める参議院では審議にすら入れないだろう。労組が行政訴訟に打って出れば、裁判所はさすがにこの措置を合憲とは判決できないのではないだろうか?川端総務相は「地方は地方で考えてほしい」と言ったそうだが、前原政調会長は地方も国家公務員に準拠してほしいと話している。実に無責任であり、民主党内で慎重に議論したとはとても思われない。
復興増税は官民が等しく費用を出し合うということだ。なぜなら税率は官民で差別されているわけではないからだ。所得税率は収入ごとに差別化されているが、職業で税率が差別化されてはいない。とはいえ、公務員が国の復興のために更に多くの貢献をするべく、それを決めておくのは、決して下らないことではなく、倫理的にも支持できると言うべきだろう。そうであるなら、そういう措置であると総理なり、民主党の責任者なりが、最初からそう言えばよいのではないか?つまりは、官僚に<瘦せ我慢>を要請すればすむことである。
公務員に高い倫理を求め、職業倫理からより高い資金的貢献を求めるのではなく、給与調整の問題としている所が極めて稚拙である。給与調整は団体交渉によるのが憲法上の原則であり、団体交渉を認めないのであれば、あらかじめ制度化された方式によるべきだ。その制度を使わないというのであれば、公務員と早く交渉するべきである。その交渉自体、既に団体交渉になっているのだから、公務員の団体交渉権に関しても法案を審議するべきである。
公務員の給料自体は、誠に瑣末な問題なのだが、その進め方が非常に危うく、「ほんと、大丈夫なのか?戦後日本の統治システムを壊すようなことはするなよ」と言いたくなる様子でもあるので、覚書きとして記しておこうと思った。
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官僚の瘦せ我慢はプラスの寄与をするに違いないが、欧州の瘦せ我慢は世界市場をむしろ揺るがしている。
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