2012年8月1日水曜日

アメリカと欧州の経済近況

アメリカでは住宅市場が底入れしつつあるように見える。下図はブログ"Calculated Risk"から引用した最近のケース・シラー指数。5月には季調で2.2%の上昇。


新規失業保険申請件数も減少したことも明るい材料だ。
Department’s latest reports on how many Americans are filing new claims for jobless benefits have contained positive news about the economy even as other gauges of health have worsened. Thursday’s numbers add to that: Claims dropped 35,000 last week to a seasonally-adjusted 353,000. (Source:  Wall Street Journal, Real Time Economics)
足元のマイナス材料は農産品価格の上昇だろう。
As the world’s financial markets focus on the Fed and the ECB, another threat to global growth is showing up across emerging markets. Food inflation is spreading much faster than anyone had anticipated. (Source:  Pragmatic Capitalism
ここでも指摘されているように、マネーを「コントロール」する中央銀行が特に景気ウォッチャーにとって最重要であるわけではない。経済の実態を本質的に変えるのはマネーではなく、相対価格の変動であることは経済学全体の中で最も固い結論である。価格弾力性の低い農産品の価格上昇は、直接効果として、常に他商品の需要減退要因として働く。

最新のIFO Newsによると、ドイツの景気動向指数(IFO Business Climate Index)はまた低下したとのこと。


元々、今年の欧州経済は昨年末から上昇気配を示していたドイツ経済と債務危機から財政緊縮を強化する南欧経済との綱引きになると見ていた。上の図をみると、明らかに昨年末から本年初にかけて認められたドイツ経済の回復は、ストップしたと見てよい。

リーマンショック震源地となったアメリカの住宅市場はどうやら低落鈍化から底打ち状態に入りつつあるようだ。あとは家計の債務状況。そして住宅価格はしばらくは<鍋ぞこ>だろうが、低迷から反転へいつ移行するかが最大のポイントだ。

しかしながら、アメリカの消費者心理の低迷ぶりは変わらない。ミシガン大学のConsumer Sentiment Indexについてはロイターがこう報道している。バブル崩壊後の消費者心理悪化と政策効果に対する不信の増長は世界共通であり、ここがどのようなプロセスを経て<寛解>なり<変化>に至るのか?政治と経済の相関のありかたをみる大事な視点には違いない。
The Thomson Reuters/University of Michigan's final reading on the overall index on consumer sentiment fell to 72.3 from 73.2 in June. It was the second month in a row attitudes have soured and the lowest level since December.
But the level was a touch higher than economists' expectations for it to be unchanged from July's preliminary reading of 72.
"While consumers do not anticipate an economy-wide recessionary decline, they do not expect a pace of economic growth that could satisfactorily revive job and income prospects," survey director Richard Curtin said in a statement.
"Moreover, consumers have become increasingly convinced that current economic policies are incapable of solving the underlying problems facing the economy." 
(Source:  Reuter, Fri Jul 27, 2012 10:27am EDT)
いずれにしても、東日本大震災で地震と津波による被害よりも寧ろそれに引き起こされた原発と電力事情が日本経済の足を引っ張っているのにも似て、経済危機の発端となったアメリカ住宅価格の崩壊よりは寧ろそれによって引き起こされたヨーロッパ銀行危機をどう解決するか?いまは、こちらのほうが世界経済の構造調整要因として大きくクローズアップされたきた。

小生思うに、昨年夏のECBによる<金利引き上げ>。あれほどマクロ経済センスのない政策判断もなかったねえ。何度もいうが、そう思われます、な。


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