何度も本ブログでも使っている言葉だが、小生の田舎に『キョロマ』という形容詞がある。ま、簡単に言えば「利口バカ」のことである。常に利益を考えて、周囲の変化、周りの好みの変化、価値観の変化に俊敏に対応していこうというのが特徴だ。思想や哲学とは無縁の人柄で、自分の価値観なるものをもっているわけではない。他人にあわせることを旨としている。合理的ではあるが、褒め言葉でいえばせいぜいが「やりて」。そんなわけであるから尊敬されたり、また会いたくて懐かしくなる人物ではない。そんなキョロマは馬鹿では勤まらない。鈍な人間はキョロマではないわけだ。大物は鈍じゃなければいけないから、キョロマはコモノ。なのでキョロマと呼ばれるのは自慢できることじゃあない。
第一次安倍内閣のとき、小生は気概と抱負はあるのだろうが、どこか鈍感というか、普通の日本人の心情がお分かりになっちゃいないんじゃないのか、と。安倍晋三という政治家についてそんな感想をもったことがある。それが昨年末にカムバックして、アベノミクス路線一筋。心理戦にたけた経済戦略、政治戦略を展開するのをみて、雌伏しているうちに社会の底辺を歩き回ったのだねえと思ったものだ。が、どうやら人間的本質には変わりはないねえと思うようになってきた。以下は出所がサーチナだから好意的でないのは当然だ。
日本政府は東京の憲政記念館で28日、1952年のサンフランシスコ条約発効日である4月28日を「主権回復の日」として、「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」を開催した。政府行事として今年初めて行われた。複数の韓国メディアが報じた。確かに好意的ではない文章だ。中国・韓国では第一声をあげたのは首相自身であるとの報道も目にしたことがある。どちらにしても現在でも日本の国会において「天皇陛下万歳」が唱えられる習慣が残っているので、つい出ちゃったんでしょう、その程度かもしれない。しかし、1945年を境にして日本国の主権は天皇から国民全体に移動したのであり、その意味では日本は天皇制を廃して共和制に移行する方向へ一歩を進めたとすら言える、それが客観的な見方だろう。それが68年後の今になっても国民の代表から選ばれた首相や閣僚達までが「天皇陛下万歳」と唱える。そもそも日本国憲法の精神は全く根付いていない。そう受け取られるのが自然なのではないか。
韓国メディアは、「天皇陛下万歳、安倍が軍国主義を叫んだ」、「主権回復の日のイベントで、安倍らが天皇万歳叫んだ」、「日本政府の右傾化の動き加速、論議のなか『主権回復の日記念式典』を開催」などの見出しで伝えた。
式典には、天皇皇后両陛下、安倍晋三首相、衆・参議院議長ら400人余りが出席した。
安倍首相をはじめとする参加者は、式典後に天皇皇后両陛下が退出しようとした際、突然両手を上にあげて「天皇陛下万歳」と3回叫んだ。万歳三唱には、首相、衆・参議院議長など壇上にいた知事らや国会議員が行い、一部の参加者は当惑した様子だったと説明。
実際―既に日本でも和訳されて紹介されているようだが―英紙Financial Timesでは次のような安倍評が掲載されている。
It was only a matter of time. Until now, Shinzo Abe, Japan’s prime minister, has managed to control the demons of his inner nationalism. Unlike his first term five years ago, this time he has concentrated on the business of reviving Japan’s long-moribund economy. He has avoided opening up fractious questions of history and has refrained from visiting Yasukuni, the shrine hated by Japan’s neighbours because it honours 14 convicted Class-A war criminals as well as 2m ordinary war dead.Now Mr Abe – riding high with more than a 70 per cent approval rating – has let the mask slip. Last week he sent an offering of a cypress tree branch to Yasukuni along with several members of his cabinet. Worse, he appeared to question whether Japan had been “aggressive” in the second world war, a rightwing hobby horse. He has also opened a campaign to make it easier to amend the constitution.やはり経済紙である。アベノミクスの成否は近隣諸国の理解、好意、協力が絶対に必要だと指摘している。中国・韓国と「敵対」しても、その他の大国や地域を味方にして国家経済戦略を展開すればよいと万が一考えているなら、これほどのバカはいない。日本に対する近隣諸国の敵意を放置すれば、それは日本のVulnerabilityを高め、国内資本市場のリスクを高め、マネーが流入するどころか流出を加速させるだろう。有望な投資対象から外れるので国内の実質資本ストック成長が停滞し、その結果、競争優位をますます喪失し、日本人の労働生産性上昇、生活水準向上は一層鈍化する。そうすれば労働市場、年金、医療保障など多くの分野でカネが回らず、最終的には日本が行き詰まるのである。これが正確な認識であるのに、総理大臣自らが迷彩服に身を包んで戦車に乗り込んだ姿を撮影させるなど、文字通りの「愚行」である、な。
……In general, though, Mr Abe has better things to do with his time. He has set in train the boldest effort in many years to spark the economy into life. His establishment of a 2 per cent inflation target and appointment of a can-do central bank governor has brought a real sense of hope that perhaps Japan can turn things around. The experiment, however, is exceedingly risky. It also requires the goodwill of other countries, which must tolerate a weaker yen as a side-effect of massive monetary expansion.That cause will hardly be helped if the world loses sympathy. Mr Abe must also follow up with structural reforms to improve economic efficiency. His forays into revisionism are distractions at best, dangerous at worst. He should stick to his knitting. Source: F.T., 2013,April, 28
ま、ひいき目に見て、首相自身は鈍感なのだろう。だとすれば、安倍晋三首相の側近には是非キョロマがいてほしい。昨年秋にも投稿したことだが、そろそろ誰か閣僚が傲慢な失言をして、そのフォローが拙劣に過ぎ、次第に内閣支持率が低下する。そんな突然の暗転が夏の参議院選挙の前に来るか、後に来るかで、日本の将来がある程度は決まってしまう。そんな風に見ているところだ。
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