日本経済新聞によると、日本国内の法科大学院(=ロースクール)はほとんど全校が定員割れになってしまった由。
今春、学生を募集した法科大学院69校のうち、93%に当たる64校で入学者が定員を下回ったことが8日、分かった。文部科学省が同日、法科大学院の在り方を検討している中教審法科大学院特別委員会に報告した。昨年度の86%からさらに悪化し、司法試験合格率が低迷する法科大学院の学生離れが一段と鮮明になった形だ。
(中略)
定員に占める入学者数の割合(充足率)が最も低いのは大阪学院大で7%。次いで久留米大と島根大が10%、東海大と東北学院大が13%、駒沢大が19%と続いた。
国立で5割を下回ったのは島根大のほか、新潟大(25%)、鹿児島大(27%)、香川大(30%)、静岡大(40%)、熊本大(41%)、東北大(44%)。
100%以上だったのは千葉大(118%)、大阪大(114%)、神戸大(105%)、一橋大(102%)、京都大(101%)の5校で、いずれも国立大だった。
昨年の司法試験の合格率が一橋大(57.0%)、京都大(54.3%)に次ぐ3位(53.6%)だった慶応義塾大の充足率は94%。4位(51.2%)だった東大は97%だった。
(出所)日本経済新聞、2013年5月8日とにかく東大も慶応も定員割れである。東北大学に至っては旧帝大でありながらも充足率が5割未満、新潟大学、鹿児島大学になると定員の3割にも達しない。これは個々の大学の努力の違いを反映すると言うよりも、制度設計の失敗を物語る。そう受け取るべきだろう。
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法科大学院を作りすぎた。これも確かに定員割れの理由の一つだろう。しかし、努力をしている大学には希望者が集まり、不熱心な学校からは人が去るのが常態だ。現状はそうなっていない。物価でいえばA財の価格は上がり、B財は下がっているという状況ではなく、すべて下がっている。デフレである。希望者総数が減っている。これは学校側の努力・怠慢によるものではない。
実際、小生が暮らす小さな港町の狭い世界でも、『法学部で食っていけるのか』とか、『司法試験は割に合わない』とか、『技術は世界共通だから理系に行かせた』とか、そう語る知人が多い。理科離れから文理逆転が今の流れである。確かに法学部だけが不人気に喘いでいるわけではないが、激減ぶりが目立つ。
職業資格認定制度の設計ミス。制度設計の失敗である。高額の授業料。ロースクールを卒業してから司法試験受験までの生活をどうするか。司法試験後の修習地決定の不透明と不公平。その間の経済的基盤。それに就職不安がある。確かに割に合わない。低所得弁護士の急増も問題だ。そもそも学部で法律を4年間勉強させて、ロースクールで2年。卒業してから一発で合格するとして、受験から修習開始まで大体半年余りブラブラする ー 自信がない人は引き続き勉強するし、自信がある人は就活をする。いずれにせよ修習が始まると多数の人は大都市を離れ地方に転居する。修習は地方と東京で一年間続く。合計すると最短でも大学入学後7年半程度の勉学を要求される。本当に専門的な法務ビジネスを展開するには、これほどの基礎的勉強が必要なのか?大いに疑問である。これほど長期間、同一分野の勉強を強いれば、最後には重箱の隅をつつくようなマニアックな問題を出して合否を競わせるしかないのじゃあないか?これではかえって職業人として不健康であろう。国際的にみても、法律専門家の教養不足を招いているのじゃないか?ま、疑問はつきないのである、な。
未修者コースならロースクールに3年。学部の4年は必要ないでしょうという理屈になるが、未修者コースの実情をいまさら語ってもラチのないことだ。これまた失敗の上塗りとしか思われないので、あっさりスルーしておこう。
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司法修習生は裁判所に所属している。まあ、確かに小生が財務省主計局で裁判所を担当していたとしてもこんなやりとりはしたろうなあ。
小生: 司法試験の合格者は3千人を目指すと言うのは本当ですか?本当にこんなやりとりがあったかどうかは分からない。
裁判所側: 理想というか、目標はそう置いています。
小生: 現在は司法修習生は<準公務員>という身分であって給与も支給されているのですが、合格者を倍増、3倍増するからといって、給与予算枠も倍増、3倍増というのは、ちょっと無理ですよ。
裁判所側: とはいえ、これをしないと国民に十分な司法サービスを提供できんのですよ。
小生: やったほうがいいということであれば、司法サービスの他にも色々とあるのではないですか?そのためのコストをどう確保するかというのが、今の論点なわけです。裁判所の予算で切っていただく所を見つけて頂いて、それを充当するのが本筋ではないでしょうかねえ・・・
裁判所側: 事業をやっているわけではないので、ただ切るというのはどうも。
小生: 司法試験の合格者を増やしたいから、年金予算を削るとか、公共事業を斬れという話しにはロジックからいっても、なりにくいのではないでしょうか?政府全体のボリュームを大きくはできない以上は、司法府は司法府で一定枠の中でやりくりして財源を確保してから必要な施策を進めるという方式でないと、これは無理筋というものですよ。むしろ、支給半減とか中途半端なことはやめて、支給停止が論理にはかなうのじゃあないでしょうか?だってほとんどの人は国で仕事をするのではなく、弁護士として民間で利益を求めるわけでしょう。国庫でそういう人たちを補助する論拠はないと思いますが、いかがでしょう?
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