【ロンドン】ユーロ圏で最も大きな債務を背負っている国はどこか。国費で気前のいい年金を支払っている浪費家のギリシャか。いかがわしいロシアの資金をその銀行に預かっていたキプロスか。景気後退に見舞われているスペインか、それとも好況後の不況に陥っているアイルランドか。アメリカの家計債務状況は、リーマン危機直後には心配されていたが、このところ大いに改善されてきている。
そのいずれでもない。実は節度と責任感のあるオランダだ。
オランダの家計債務は可処分所得の250%に達した。これは世界でも最高レベルであり、スペインでさえ、それが125%を上回ったことはない。
オランダは世界でも最も重い債務を抱えた国になってしまった。景気後退に陥り、そこから脱却する兆しはほとんど見えていない。3年にわたってだらだらと長引いてきたユーロ危機だが、これまでに感染してきたのはユーロ圏内の周辺諸国だけだった。しかし、オランダはユーロ圏と欧州連合(EU)の中核国である。オランダがユーロ圏で生き残れなければ、このゲームは本当に終了となる。(出所)Wall Street Journal Japan, 2013年 5月 09日
だが状況は大きく変わりつつある。国際通貨基金(IMF)が4月下旬に発表した世界経済見通しでは、米国の家計の債務は対所得比率で07年の130%から2012年末には105%に下がったことが明らかになった。アメリカ家計のローン返済状況を可処分所得に対するDebt Service Ratioでみると下図のようである。
一方、ユーロ圏の家計債務比率は同期間に100%から110%弱に上昇。これまで欧州の家計の債務比率は米国を常に下回っていたが、今回それが逆転した。
これをどう解釈すべきか。楽観主義者はデレバレッジ(債務圧縮)が著しいほどの規模で起きている可能性が示されたと喜ぶかもしれない。米ニューヨーク連邦準備銀行の最近のリポートによれば、米国の家計債務残高は08年の12兆5000億ドルから1兆ドル近く圧縮された。(出所)2013年5月10日付け英フィナンシャル・タイムズ紙報道、日本経済新聞が翻訳
Source: FRED, Federal Researve Bank of St. Louisで作成
なぜこれほどのビッチで改善されてきたかについては色々な解釈があるが、「アメリカはもはやリーマンショック後ではない」というのは事実である。
家計債務については、実は韓国経済も危機的な状況である。ほぼ1年前の記事であるが、次のように報道されている。
ところが、多くの先進国で消費者債務はこの4年間に減少しているのに対し、韓国の家計債務は増加の一途をたどり、昨年には可処分所得の164%に達した。これは、サブプライム危機発生時の米国の数字をはるかに上回る。(出所)2012年8月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙を日本経済新聞が翻訳ちなみに日本の家計部門(個人企業を含む)の債務状況を国民経済計算(SNA)でみると、2011年に可処分所得が286兆6503億円、債務が360兆1795億円だから、125.7%である。韓国やオランダよりは良いが、アメリカや欧州よりは過重債務状況で、問題なしとはいえない。
デフレの継続は、一定の労務に対する名目報酬額を低下させると同時に、家計が保有する資産評価額を下落させる。一方、債務残高は減らないものである。日本の家計貯蓄率が高いというのも既に古き伝説である。日本政府の財政は危機的状況だが、家計は健全であるという言い分は、間もなく迷信になる。というより、既に日本の家計はそれほど盤石なものではないということを知っておくべきだ。
なお、本日の投稿で登場する数字は、ひょっとすると「債務」という言葉に含まれる範囲に違いあるかもしれず、厳密ではない可能性がある。とはいえ、概ね事実に該当していると思うので覚え書きに記しておく。
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