2013年9月1日日曜日

日曜日の話し(9/1)

週末、美瑛郊外の白金温泉まで小旅行をした。カミさんと同行し、旭川で修習中の愚息もピックアップして、三人で湯元温泉ホテルに宿泊した。広くはないが露天風呂は渓流の音が聞こえてきて中々結構だ。愚息の旭川修習期間は今月で終わり、次は東京に行き、来年早々から実際の業務に就く予定である。となると、親子で同宿するような旅行は今回が最後かもしれない。

実は愚息の名は「弘之」という。いままで話さなかったが、名前をつけた由来というか、その訳を昨晩話しておいた。
小生:お前、知ってるか?名前を決めた理由。
愚息:知らない。聞いたような気もするけど。
小生:それは弘法大師の弘の字をとったという奴だろう?実際は違うんだよ。話さなかったけどな。これ、読んでみろ。
愚息:士は以て弘毅ならざるべからず……
小生:兄弟二人に弘と毅の字を一字ずつ分けたわけだな。次に、「任重くして、道遠し」ってあるだろ。弘って字は「広やかな心」という意味なんだな。毅の方は「どんな人も受け入れる広い心をもつ一方で、決める時には断固として決断して、揺るがない。毅然としてるって意味だ。なんでこの両方がいるかっていうと、重い任務を課せられて、歩いて行かなければならないから。これが任重くして、道遠し、だ。
愚息: 次の「仁、もって任となす」は?
小生:重い課題は具体的に何かっていうことだよ。儒学流の人間理解は、古代ギリシアのソクラテスやプラトンあたりとは違っているんだが、ま、大雑把にいって四つ大事なことがあるというんだな。その第一が仁だと言っている。それだよ。次に、「また重からずや」とあるだろ。「仁が任務というのは、これは大変だ。重い課題だ」と、そういうことだね。それから「死して後已む」、つまりいつまで頑張って任務に堪えないといけないのか?死ぬまでだ。一生だ。そこで「遠からずや」と来る。全体としてはそんな意味だ。要するに、言葉で「仁」とはいっても、超一流の人間にとってさえ、そうそう簡単に実行できない、身に付くはずはないということさ。兄ちゃんは、ああいう感じだから、毅然といっても荷が重すぎるからな。これまで話さなかったが、お前は公に就くだろ?利害得失より大事な事柄がある。それで話したんだよ。
この後、「じゃあ、具体的に仁ってどんなこと」というので「惻隠の情は仁のはじめなり」を出して、仁・義・礼・知という、まるで里見八犬伝のような語りをしたのだが、これはまあ省略してもいいだろう。ま、臆面もなく名前の由来など、親が子に対して絶対的優位にたてる話題ではある。それにしても、改めて上のやりとりを読むと、エエカッコをしたものだ。

なるほど確かに、<国益>と大上段に振りかぶってみても、所詮は<利害得失>に関する話しであり、人間社会にとって最も大事な論点ではない。国を考える時も同じだ。是非の違いを認識する智慧があれば、それだけ利益追求が巧みになる。が、それでいいというわけではないというのは、2500年も昔から当然のことだったわけだ。利益など「確かに上手いやり方だね」という以上の意味は人間にとってない。そう割り切っても社会の真相からかけ離れる事はないのだろう。正解を探そうとする是非の心は、相手を思いやる仁、悪をはじる義の心、譲ることを知る礼、これよりも下位にある。そう思うのが、伝統的な儒教的な発想だ。西郷隆盛も「進む道に迷ったときは何が利益であるかではなく、どうするのが悪であり、どうするのが善であるかで決めよ」と語っているよし。同じ文脈だな。利害得失に重きをおかないのは、古代ギリシアの哲学者も同様であり、人間が求めるべきことは<幸福>であって、<利益>ではない。<国益>が大事であると断言する考え方は、すこし単細胞的であって、バカに近いと言われても仕方のない側面は確かにある。

とはいえ、この話題は厄介だ。また別の機会に。


美瑛の樹には名前がついているのが多い。ケンとメリーもそうだ。この後、マイルドセブンの丘の側を過ぎた所にあるドイツ風"Land Cafe"で休憩をとる。


台風が接近して雨がひどく、「青い池」はBlueというよりGreenに近い色調だった。それでも周囲の自然は隔絶してよい。宿への途中に立ち寄ったのだが、更に近くにある陶芸ギャラリー「皆空窯」でぐい飲みと珈琲カップを買う。

今日はパノラマラインから十勝岳温泉を経由して富良野に行く予定だったが、霧が濃く、再度美瑛の街に戻り、国道を南下して富良野まで走る。新富良野プリンスホテル近くの「森の時計」で昼食をとり、そのあと「北の国から」の舞台・麓郷を回った。愚息が同ドラマを一度も観たことがないと言ったのには驚いた。免許とりたての愚息がずっと運転をしたが、いい練習になったようだ。こう書いてみると、今回は倉本聰ドラマツアーであったかもしれない。風のガーデンに寄る時間がなかったのは残念だ。


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