- 就業者が1年前に比べて51万人増加した。
- 完全失業者は1年前に比べて17万人減少した。
- 完全失業率は、男性が4.3%で前月に比べて0.2%低下。女性が3.5%で同じく0.2%低下。
- 消費は、1年前に比べて実質3.7%増加。
雇用機会がこの1年で50万人分増加したという数字は、リーマン危機直前の2007年以来の良い数字であって、政府にとって何よりプラスになる広報材料であるに違いない。失業者の減少以上に就業者が増えているのは、非労働力から新規就職する人たちが増えているからだ。消費の実質3.7%増加には、相当イレギュラーな成分が含まれているだろうが、これを差し引いても良い数字である。
新聞報道によれば、これ以上の大幅な失業率低下は困難であるという判断で、総需要ではなく職種ごとの需給ミスマッチを解消する(=求められている人材が供給されるように職業訓練を拡大する)ことが重要だと見ている模様。
とはいえ、労働市場が全体として均衡を回復して、失業率の低下に限界が意識されるようになったから、人手不足にある職種から順に賃金が上昇していくものと予想する。ある職種の賃金が上昇に転じれば、賃金上昇が職種間に波及していくはずであるので、現時点は永年の<賃金・物価デフレーション>に転機が訪れる直前の段階なのかもしれない、と。アベノミクスの効果については、専門家もいろいろと議論が喧しいが、小生はそう見ているところだ。
もちろん賃金・物価デフレーションが、賃金・物価インフレーションになったからといって、高齢化する日本経済の問題がそれだけで解決されるわけではなく、財政再建が保証されるわけではない。それには別の実質を伴った政策が必要だ。
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それにしても、同じ一人の患者の病状診察と治療方針について、専門家がエコノミストのように、これほどまでに甲論乙駁するだろうか?他分野の人たちにはとても信じられないだろう。
確かに医学においても東洋流儀の漢方薬や鍼灸治療があって、西洋起源の現代医学とは別の世界を構成している。それでも、しかし、鍼灸院に行けば、まずはレントゲンやMRIで異常が見つかっていないかどうかを先に確かめるのだ。「こんな考え方は原理的に誤っている」とか、「あんなモデルに基づいて説明するのは根本的に間違いだ」とか、本質的な対立が長期間にわたって持続するのは、つまりはその分野の専門家を納得させる<決め手>にどの理論も欠けているからである。そもそも経済現象には理論では説明できないノイズが、最悪のケースでは半分程度を占めるものだ。経済現象の本質的な部分を<理解>したと豪語したとしても、今後の進行を<予測>するとなると「色々な要因が入ってきますから厳しいんですよね」と。やれ<反証>が見つかったと言ってはみても、その検証方法は統計的には稚拙であると再反論する余地は常に残っているものだ。
そもそもGDPという国民経済の行く末を考察する際に、一定の増加トレンドの周りで定常か(Trend Stationary)か非定常か(Difference Stationary)、そもそもGDP水準は確定的なドリフトもない非定常プロセスなのか、いつからいつまでのGDPデータに基づいて判断するかで結論は変わってくる。生産性も同様、技術進歩のスピードもそうである。小生は<群盲、象をなでる>情景をよく連想するのだ。
むしろ論争と対立から理解と協調へと、国家戦略の方向軸を変えることによる<心理的効果>の方が、社会科学的知見に基づいた個別の実証的・臨床的な政策よりは大きなパワーがあるのかもしれない。そんな風に思案している今日この頃である。もちろん間違った経済観、世界観の下に理解と協調を演じてみても、20年、30年という長期的なスパンの中では、いずれ失敗することは確実である。それでもなお不確実な状況で、戦略的議論を行う仕組みを作り、その仕組みを機能させていくことの効果は、「社会科学の進歩」を超えるパワーを持つのかもしれない。こんな風にみれば、経済学の競合分野は法学でも政治学でも経営学でもなく、社会思想ではないか。ま、これは本日の思いつきの覚え書ということで。
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諸般の事情があって、このブログは当面の間、限定公開にすることにした。
いまは知人にも見てほしいので一般公開しているが、元来は毎日の個人的な覚え書きだ。誰が読んでも「思い込み」を書いているわけではないと知ってほしいので、極力ロジカルに書くように努力しているのだが、それでも先日のように異論をもつばかりではなく、小生の文章が公開されていることが許せないと考える人も出てこよう。
外国のことならよいだろうが、日本国内の具体的ケースを素材にしながら、すべての人に受け入れてもらえるような書き方は不可能である。特にTPPや消費税率引き上げ、年金減額など、これらの政策ゲームはゼロサムゲームの側面をもつ。何を書いても、一方には味方となり、他方には敵となる。敵は気に入らない議論を、それだけではなく書いた人間を攻撃するだろう。生活がかかっているからだ。
小生一人なら丁々発止戦うのもいいが、トラブルが拡大して万が一愚息の仕事のマイナスにでもなってしまえば、議論が議論でなくなり、相互の生活基盤をかけた紛争になる。やりたいことはそんなことではない。現時点では、状況が余りにVulnerableである。
なので、今回投稿を最後として、次回投稿を機にしばらくの間はグループ限りの限定公開へ移ることに決めた。その内、投稿数が1000回の大台に乗り、小生にも一つの区切りが来る。その頃には周囲も落ち着いてくるので安心して一般公開しながら思ったことをそのまま率直に書き続けて行きたいと思っている。
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