こういう報道がある。
経営トップの辞任に発展した阪急阪神ホテルズ(大阪市)でメニュー表記と異なる食材を使っていた問題は、公表の遅れやトップの発言のぶれなど対応のお粗末さが傷口を広げた。専門家からは「問題を軽く見すぎた」「名門ブランドのおごりがあった」との厳しい指摘があがっている。(中略)
食材偽装は平成18年3月から行われていたが、19年に大阪市の高級料亭「船場吉兆」(廃業)で食材の産地偽装などが発覚。以後、食品表示をめぐる問題で多くの業者が窮地に陥った。(出所)msn産経ニュース、2013年10月30日確かにトビウオの卵である「トビッコ」をマスの卵である「レッドキャビア」と呼んで客に出せば、食感が違うし、味も値段も違う。「これ違うでしょう」と言えばその通りである。客は、食べたトビッコ相当価格を支払えばいいはずで、にも関わらず「レッドキャビア」であると偽って高額の代金を請求するのは<詐欺罪>に該当する。このようにメニュー誤表記問題の中には、<詐欺行為>がその本質として含まれている。この詐欺がいわゆる<偽装>と呼ばれているのであり、詐欺行為によって不当な利益が得られる以上、詐欺にあった人は損害を被っていて、その損害は賠償されなければならない。なので世間は憤るわけである。
ところが、最近の議論は本質的には詐欺かそうでないかという表示問題を「食品表示法」と関連づけて、その表示は適法かどうかという二つ目の問題に絡めて論じているのでどうも分かりにくいのだな。
そもそも食品表示法上は違法だが、その表示行為は詐欺罪には該当しないというケースはあるのだろうか。まあ、あるのだろうねえ。計画性の有無、悪質性の度合いも関係するだろうし、その誤表記によって利益を得ていたのかどうかも関係しよう。そんなことはないと思うが、たとえば北海道白老牛ステーキと表記しておいて、たまたまその日の食材がないので仕方なく松坂牛を使ってしまう。これも誤表記には違いない。
つまり誤表記という違法性とその表示行為の犯罪性は100%オーバーラップしているわけではない。もしもすべての誤表記が犯罪行為であるのなら、最初から消費者庁ではなく警察が捜査をするべきなのだ。実際はそうではない。消費者庁は、食材の産地、品種等々を正確に表示することを求めている。しかし、食材の生産者と最後の料理人の間には中間に何人もの業者が介在する。一段階経るごとに商品名が変わるかもしれない。そもそも最後の料理人は美味しい料理を食べてもらう事にモチベーションがあるのであって、料理の名前をどうするかには主たる関心を持っていないだろう。「食材名」を正確に表記させ、「料理名」は食材名を正しく反映する物でなければならないのなら、ヨーロッパの付加価値税で不可欠なInvoice(=税額証票)よろしく、各段階の商品名、産地、業者名を順に添付し、最後の料理名には調理法のみを記載し新たな情報を付け加えてはならない、と。まあ、こんな風な一般原則を定めておくしかないだろう。たとえば、単なる小エビを「芝エビ」と誤称したというので、今回の騒動の第二幕が展開されているが、第一段階の水産業者が「芝エビ」だという名称をつけて出荷しているなら、後段階の業者はその通りに表記するべきだ。レストランに誤表記があったというだけでは、レストランが誤表記行為をしたのかどうかが分からない。
今回もまた「食品偽装問題」として騒動が繰り広げられているが、喧しい割には方向性が見えてこないのは、議論にロジックがなく、表面的でなにも深まらないからである。
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