2013年11月29日金曜日

米株価 – 上昇トレンドに入ったのか

アメリカの株価はダウジョーンズが16000ドル台に乗ってきた。景気の今後の動きを考えると新時代到来に期待が持てそうな気分にもなってくる。

実際DJは、リーマンショックのあと14000ドルの壁を超えるのに相当の時間を必要とした。14000ドルの壁を突破した後は15000ドル、16000ドルは案外早期に到達した印象がある。


一部の銘柄の動きを反映しがちなDJでなくS&Pの方をみても大勢は同じだ。


2001年に「ITバブル」が崩壊して以降、160の壁が中々超えられなかった。それが最近になって181.12(11月27日現在)にまで騰がってきた。好調な経済指標が相次いで公表されたのに加えて、次期FRB議長に内定しているイェレン氏による「最適コントロール」が市場の評価を勝ち得ているからだ。

アメリカ経済の先行きを総括する指標としては幾つかのLeading Indexが公表されているが、中でも比較的良質で長期データが有料ともなっているコンファレンス・ボードの"Leading Economic Index"をみると以下のような図になっている。赤線は一致指数、青線が先行指数である。


指数の数値自体は基準化されているので意味はない。とはいえ、その変動量は景気変化の強弱を表している。だから、一致指数でみると、現在のアメリカ経済の状況はリーマン危機直前のレベルに復帰しつつあるという見方もあながち的外れではなく–実質GDPというもっと適切なデータがあるが–、他方先行指数のほうはリーマンショックの落ち込みの3分の2をリカバーしたという状態だと言えよう。そして、一致指数、先行指数いずれも上昇トレンドにあり、特に先行指数については最近になって上昇が加速している。 これはこの先6ヶ月程度のアメリカ経済の拡大を予見させる有力な材料である。米株価上昇は足元で感じられている明るい見通しを反映しているものだ。

ただ株価については、順調な上昇局面が既に4年続いていて、その間に大きな調整は行われていない。この背景にFRBによる量的金融緩和政策があるのは言うまでもない。米株価は「政策支援バブル」にあると形容してもいい。バブル要素の混入割合までは計算していないが。

経済実態とは別に金融政策の転換から大きめの株価調整が近々訪れるものと予想する。アメリカ株式市場の長期上昇トレンドはその後だろう。

確かにマクロ経済理論の進歩によって資産バブル崩壊の後遺症を防止できるようにはなった。バブル崩壊によって10年、いや20年間も経済停滞に陥るという危険性は予防できるようにはなった。しかし、非正統的手段で「驚き」を伴った量的金融緩和をおしすすめてバブル崩壊に対処する場合、確かに人々の予想に影響を与える事はできるし、バブル崩壊の負の効果を防ぐ事もできることは分かったのだが、これを終わらせる時期の選択、適切な出口戦略の決定がまだなお未解明ではあるまいか。

結局、生命維持装置をいつまでたっても外せない。そんな状態に追い込まれつつあるのではないか。そういう心配がないでもない。しかし、まあ、それでも政策研究の進展があるまでの時間稼ぎ。その位の意味はあるのかもしれない。




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