今日は建国記念日である。東京では「日本の建国を祝う会」主催の式典があり、安倍総理はこの日にあわせたメッセージを発表した。NHK News Webによると、「現職の総理大臣によるメッセージが出されたのは初めてで、心より歓迎し、政府主催の式典が開催されることを願う」と、主催者側が感謝の念を述べたということだ。
とはいえ、アメリカの独立記念日(=7月4日)やフランスのパリ祭(=7月14日)が、グローバル時代にふさわしい広がりと記憶を伴っているのに対して、建国記念日の今日、いったい何があった日であるかに正解できる人は日本人であっても少なかろう。
2月11日という日付は、むしろ、はるかに重要であった出来事と関連付けられている。それは第二次大戦後の世界の構造を決めたヤルタ会談が終わり、米英ソの首脳(ルーズヴェルト、チャーチル、スターリン)が最終コミュニケに署名した日である-中国・国民党政権の蒋介石は招待されてはいなかった。
今日は、インフルエンザにかかったカミさんが病臥しているので、PCをもって小生一人で外出し、気に入りのカフェで1時間余り成績評価作業をしたあと、書店に寄ってアルチュール・コント『ヤルタ会談 世界の分割-戦後体制を決めた8日間の記録』を買って帰った。
その巻末に「1945年2月11日付けコミュニケ」の正文と「ソ連の対日参戦に関する協定(ヤルタ秘密協定)」がある。もちろんどちらも日本語訳である。後者の2項の3に『千島列島はソ連に引き渡される』と記されている。対日参戦の報酬の一つが千島列島であったわけだが、日本語によるWikipedia<千島列島>でも「千島列島(ちしまれっとう)は、北海道本島の東、根室海峡からカムチャツカ半島の南、千島海峡までの間に連なる列島。」と記されている。北方領土の領有権を主張する日本政府は、したがって「択捉島、国後島、色丹島および歯舞群島を北海道の属島とし、千島列島に属さないとしている」という立場をとらざるをえないのだが、小生不勉強なもので戦前日本の小中学校で「千島列島」がどの範囲を指すと教えられていたのか確かめたことがない。おそらく帝国陸軍参謀本郡・陸地測量部が作成していた地図をみれば明記されているのではないだろうか。
思わず「領有権」についての話になったが、上の本を買うきっかけになったのは、帯に書かれていた文句だ。ミッテラン元・仏大統領の発言だそうだが、『西欧の愛国者の思いはただ一つ。ヤルタ体制の打破である』。う~む、なるほど。フランス、というか欧州から戦後世界をみる時にも、そこには失われた幾つもの国益への哀惜があるわけか。いやいや欧州ばかりではない。今後将来、平和的台頭を目指す中国もまた<ヤルタ体制>を打破する動機があるに違いない。確かに冷戦は終わったかもしれないが、アングロサクソンとロシア勢力圏が世界の秩序を決めようというヤルタ・スピリットはまだ灰の中で燃え続けていて、戦後世界を支える基本構造となっている。その支柱を倒壊したいという夢想は、案外多くの国で共有されているのかもしれない。表面的な対立構造は、実は文字通りの表面であり、共有されるべき宿願という点では協調への動機がある、より大きな利益をもたらす21世紀の結託への動機がある。刺激的な一冊である。
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