厚生労働省が26日まとめた11月の有効求人倍率(季節調整値)は1.12倍と前月より0.02ポイント上がった。改善は2カ月連続で1992年5月以来の22年6カ月ぶりの高い水準だ。企業からの求人が高止まりする一方で、新たに働きに出る人が減っているため。総務省が同日まとめた完全失業率は3.5%と前月と同じだった。
有効求人倍率は全国のハローワークで職を探す人1人に対して、企業から何件の求人があるかを示す。ハローワークが11月に新たに受けた新規求人数(原数値)は前年同月より4.4%減った。情報通信業や建設業、サービス業で10%超のマイナスとなった。過去に出した求人が採用につながらないまま積み上がることが増えており、求人数全体で見るとプラスが続いている。
一方、新たに職を探す新規求職件数は10.9%減った。職探しをする少数の人を多くの企業が奪い合う状況が続いている。(出所)日本経済新聞、2014年12月26日
求人と求職の関係はバブル景気ピークアウト直後の1992年5月以来というから嬉しいではないか。というより、人手不足については相当以前から耳にしていたことでもあり、改めて現在の雇用状況がわかってきたというわけでもある。もちろん人によっては、非正規雇用ばかり増えても意味がないという向きもあるだろうが、そもそも非正規雇用が全体の40%前後を占めるようになった現在、「正規」、「非正規」という呼称そのものからして非現実的になった。現在は、戦後日本の企業別労働組合で身分が強く保護されてきた社員が、本来の「労働者」に解体されつつあるプロセスにあり、いずれ技能・職能ごとに団結できるまでの過渡期にあるのだと小生は思っている。景気とは関係のない構造的な変化である。
ま、いずれにしても人手不足である以上は、来春において賃上げが通るのはほぼ確実である。
ではどの程度の賃上げになるだろうか?
何の説明変数もつけずに、毎勤ベースの全国5人以上企業における所定内給与を予測すれば、来年4月時点の賃金は実はプラスには出てこない。
上図の黒い実線が本年10月までの実績、青い線が11月から来年7月までの9か月予測である。縦軸は2010年平均を100とした指数の対数である。4月時点の前年比をみてみると、来年4月には予測値が元の指数で100.4(▲0.2%)となる。若干のマイナスである。もちろん予測は確率的にみないといけないので95%予測区間の上限を確かめると101.6となる。上昇率にすると1%だ。
名目賃金は、消費者物価指数の変動、その他の要因に影響されているので、名目賃金一本で統計的予測を行ってみても、それはあくまでも参考に過ぎない。しかし、賃金変動には、景気や消費者物価、生産性向上などあらゆるマクロ的変動が織り込まれているのであり、そもそもそれが予測可能であるのなら、賃金データ自体に予測の基礎となるべき統計的パターンが残っているはずなのだ。その統計的なパターンを見る限り、来春時点の賃上げは吃驚するほどの引き上げ率にはならない。これが(現時点において)示唆されることである。
消費者物価は、なるほど、消費税率引き上げに伴って上がっている。とはいえ、消費税は広く消費者全体が負担する税であるというのが基本的な理屈である。政府は、消費税率引き上げ(物価ベースで2.9%の上昇)を取り戻すほどの賃上げを企業サイドに求める気はさらさらないはずだし、もしそんな要請をするなら健全な経済運営とはいえない。
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