2015年12月20日日曜日

古い記憶: 叔父の講釈と詭弁

小生の従妹のご夫君が比較的若くして世を去った。叔父から届いた突然の訃報であった。

その叔父には、小生が社会に出るとき、いろいろと世話になったことがある。

たまたま受けた公務員試験に合格して小役人になろうとしていた小生に叔父は公務員の安給料をあげて『悪いことはいわない、止めとけ。必ず後悔する』と忠告したものだ。

小生: 社会のための仕事をして報酬をもらえるなら、それは金儲けとは別でヤリ甲斐を感じるんです(青臭いネエ……)。 
叔父: 民間だって仕事をすることで社会には貢献しているんだぞ。社会のために仕事をするなら、民間も公務員も同じだ!
恥ずかしながら、小生は叔父の意見を正面から論駁することができなかった。

民間企業が栄えてこそ、日本の繁栄がある。公務員は税金から給料をもらっている。だから『国のために仕事をしているのは、役人も会社員も同じだ』と言われると、グッとつまったのだな。

いやあ、無知蒙昧であった・・・。
いまなら、叔父の詭弁を認識することができる。

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会社とは「営利法人」である。当たり前のことだが、利益をあげられなくなれば会社は倒産する。

故に、目の前にローリスク・ハイリターンの投資機会がありながら、余裕資金を「地域社会に貢献できる」という単にそれだけの理由から、低収益が見込まれている廃棄物処理事業に資金を投入するならば、その経営陣は株主総会を乗り切れないはずである。

会社は投資家が満足できる利益を提供する必要がある。

利益を求めざるをえない経営陣の経営戦略を実現するために従業員を雇用する。取締役ではない会社員はすべて「部下」である。故に、会社員の目的とは自社利益である。公益ではないし、まして他社の利益ではない。他社の利益を図れば「背任」にあたる。

他方、いかに小役人であっても役人の仕事の目的は公僕であることであって、役所の利益ではない。

会社の利益のために行動する会社員はモラルにかなっているが、役所の利益(=定員・予算・天下り先)を主目的に行動する役人は非難される。

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正しい結果が予測されるからと言って、その行動が正しいわけではない。

社会的な公益が予測されるからと言って、社会のために行動しているとはいえない。

自社利益の追求は、公益の追求に動機づけられているわけではないのだ。


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