2016年6月30日木曜日

政治的バブル? BREXITで何が残る?

記念すべき2016年6月23日の英国・国民投票で「離脱派」が勝利したが、結局何が最後に残るのか?

株価は世界的に大暴落した。特に、香港上海銀行(HSBC)やバークレイズなどの金融関連はそうだ。

あれからまだ一週間も経っていない。

しかし、ロンドン市場やNY市場で英国株は投票前の水準をほぼ取り戻しつつある。

流石に金融株は元に戻っているとは言えないが、もともと、英国の金融関連株は国民投票の結果というより、中国経済への不安から先行きに自信が持てないという一面のほうが強かった。

日本株も、今回もまた下げるに急で回復にはモタモタと遅れている感じがするが、近日内に英国の国民投票などはいつのことだったかと、そんな状態に戻るであろう。

国民投票自体は、やはり純粋に政治的なイベントであったと見える。というより、一体、何をどう変えたいのだろう、イギリス人は……、そう問いかけると、政治でさえもなく、イギリス社会に爆発的に流行した熱狂(ユーフォリア)。これまた、『根拠なき熱狂』の一例であったかもしれんネ、そう思っている。何しろ、イギリスと言えば18世紀初め、資本主義がまだ根付いてもいない昔、「南海泡沫事件」という一大バブルに踊った国である。

大雑把に割り切れば、非常にイギリス・ローカル。だから、先日の投稿でも『政治家による失火事件』にたとえたのだ、な。

ずいぶんハタ迷惑なレファレンダムであったが、結局、何が残ったのだろう?


英国とEUがどんな関係を取り結んで落着するかによるのだろう。双方が合意するまでは、長年月がかかるに違いない。

肝心の離脱派の主要人物さえ『すぐに離脱をする必要はない』と語っている。英国は国民投票を対欧州交渉力を強化するための脅迫に使ってきたが、結論は「離脱」と出た。

「離脱」の結論を出しておきながら、残留状態を続けつつ欧州と交渉を続けようとしても、それは筋が通らないというのは、確かにドイツの言い分に理屈が通っている。交渉をするなら「離脱交渉あるのみ」というのが、ロジカルな結論だ。

英国は出してはならない結論を性急に出したため、最大の交渉手段を失った。

経済の実態は変わらないが、戦術ミスを犯した分、英国は何をしようとどこかで損失をこうむる。

英国が損した分、(ロシアを含めた)大陸欧州のどこかの国が得をする。そう見るのが正しい目線だろう。


ずっと先のことは……、それは誰にも予言はできないだろう。

「予測」は常に外れる。「予言」はなおさらだ。無数の予言のどれかが結果的に的中する、それも当たり前だ。が、いまそう言っても、何にもならない。


今回の国民投票。これは政治的バブルと言ったが、バブルといえば冷静な国民性にみえるオランダのほうが熱狂にかけては先輩だ。最初(?)のバブルとして有名な「チューリップバブル」が起こったのは、17世紀初頭、日本で言うと寛永時代でちょうど参勤交代が慣例化されようかという時代にあたる。

ということは、オランダでも「EU離脱」の政治的熱狂が起こりうるということか・・・。

一つ言えることは、「バブル」というのは時代の境目に発生しがちであるという経験則だ。大きな変化が世界を待ち受けているのだろう。

今回の場合、まあ、ネガティブバブルであったのが特徴ではあったが・・・。「爆発」ではなく、「爆縮」であったわけだな。

2016年6月27日月曜日

党首というのは発言を縛られるのだろうなあ・・・

英国のEU離脱をきっかけに先週金曜の株式市場は世界的に暴落した。ところが、概観してみると当の英国の下落率は日本よりも小さく、アメリカのNY市場はもっと落ち着いた低下振りを示した。

そんな展開をうけて、週明けの今日月曜日現在、東京市場は234円高になっている。

このまま週内に元の水準に復帰するとまでは行かないと思うが、そもそもが株価が暴落する経済状況ではないという事実はそこにあるわけで、市場も現実を反映したものになる。これは間違いない。


イギリスの話題で舛添前都知事の話題は吹っ飛んでしまった感がある。

参議院選挙も盛り上がらないねえ。別に、政府のせいで株価が落ちているわけではない事くらいは国民はご存知だ。むしろ『頑張って、海外とも連携しながら、うまく対応してくれ』と、庶民の気持ちはその辺りだろう。


ところが、民進党党首の岡田代表はUKのEU離脱を踏まえて『アベノミクスは終わった』、『年金の評価損をどうするのか』と。政府批判を強めている。

大体、昨年8月の株価暴落は中国経済不安。今年初めの暴落も中国経済不安が原因で、さらにいえば世界景気の循環的要素も加わっている。日本政府の政策に原因があって世界の株価が下がってきたわけではない。国際商品市況は、ちょうどその頃には回復してきていた。

いくら世界の中の日本をみないといけないと言っても、ここでまた更に、イギリスの国民投票が想定外であったことで起きている株価暴落をとりあげて、だからアベノミクス ー 特に日銀の超・量的緩和政策を指すのだろうが、それは間違いであったと。これはチャンとした経済学的ロジックになっているのかいな、と。本質的には、いまの金融政策方針に賛同しない専門家も、年金積立金を株式市場で運用するべきではないと考えている専門家も、「イギリスがEUを離脱した以上、アベノミクスは終わったんだ」、そう言う人はいないのじゃあないか。

これではまるで『株がまた下がっちまったよ、(元横綱の)朝青龍は引退しないといけねえな』、むかしそんなことを言っていた某先輩がいたが、それと同じだ。

恥ずかしいですヨ。そう思いますな。

経済ブレーンは民進党にはいないのだろうか。

岡田代表は元々は経済産業省で日本経済の実相をモニターしていたはずである。自由に演説するなら、もっと真っ当で示唆に飛んだ政策的アイデアを語れる人物だと思うのだが、やはり党として言うべき事はこういうことです、と。そんな風に発言内容を縛られているのだろうか・・・。

半ば同情的な気持ちでみているところである。

2016年6月25日土曜日

一昔前には「経済安定化政策」というのがあったものだが・・・

英国のEU離脱は、それ自体としては純粋に政治的な決断である。決して経済政策ではない。実際、国民投票で離脱派が勝利して、株式市場は暴落し、G7は金融不安懸念を払拭するため共同声明を発表するに至っている。

今回の英国の政治的決定が世界経済を混乱させている。こんな「経済政策」があるはずがない。

経済的な不安定は国民の厚生を損なう第一の要因であるから、政府は、必要なら他国とも協力して、まず国内経済の安定化に努力しなければならないというのが、戦後ずっと一般的な理念になってきた。ところが、英企業の行方には不透明感が漂っているのが現実だ。ということは、英国民の生活にも不透明感は増しているというべきだろう。

そういう意味では今回の英国の選択は、<チャブ台返し>であった。憤慨する人は世界に多いだろう。


★ ★ ★

政治的なショックで株価が暴落したといえば、1953年3月の「スターリンショック」があげられる。突然の死去の報に接して、東京市場は前日比で10パーセントの急落となった。この急落率は、1987年10月に発生したNY市場の「ブラックマンデー」に破られるまでは戦後第一の株価崩壊として記憶されていた。「ブラックマンデー」の当日(10月19日)、アメリカのダウ平均は前日比で22.6パーセントの大暴落を示し、それを受け東京市場では日経平均が14.9パーセントの下落となった。スターリンショックを上回る新記録となったのだ。

ブラックマンデーは、1985年のプラザ合意以降に進行していた急速な円高・ドル安を進路変更するため、FRB当局が金利引き上げを画策していたことから突発的に発生したと云われている。その意味では、金融政策のほころびであったわけだ。

スターリンショックも、まったく経済動向と無関係であったのではなく、スターリンの死去にともなって3年間続いた朝鮮戦争も終結する、そうなると日本経済復興を支えてきた「特需」も終わるのではないか。そんな連想から売りが売りを呼び、株価が暴落したのであった。

純粋に政治的なイベントで株価が暴落することはない。

今回のUKショックは、金融センターとしてのロンドンの地位、英国とEUとの今後の関係、EUという巨大な単一市場の行方に対する不安が経済的不安定を引き起こしているのだが、もっと本質的な背景には欧州各国に流入している大量の移民をコントロールできていないことへの不安、反統合派がこのまま力をつけ最終的にヨーロッパは四分五烈するのではないか。こういう不安は、やはり生活への不安であり、大きな経済問題であると考えれば、EU離脱の先兵となった英国が欧州経済を揺るがせ、「揺らぐ欧州」が世界経済を揺るがす構図になっている。ギリシア問題、欧州債務問題とある意味では同根であり、このあたりが最大公約数的な見方だろう。

根本的には、移民政策、債務問題、対ロシア問題、対中東政策等々、すべての問題の背景には経済問題があるとみれば、マルクス的な視点と同じになってしまうが、今回の株価暴落の本筋はついているだろう。


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ただ実際に英国がEUを離脱するのはかなり遠い先になりそうで、ある人は『はやくて二年、おそらく七年』と話している。

当面は、ポンド急落もそうだが、投機家の不安、そして金融不安であろう。

アメリカのYahoo! Financeでもこんな解説をしている。
The first thing most economists are flagging right now is tighter financial conditions. Simply put, tighter financial conditions means that it is harder and more expensive for businesses and consumers to get money. That in turn leads to less borrowing, less investing, and ultimately less economic activity.
And these tighter financial conditions are appearing in the US.
金融要因による不安定は、多分に一過性であり、中央銀行が判断ミスをおかさなければ永続性をもたないということは多くの研究から確認されている。

今回の株価暴落は、リーマン危機当時のような金融システムに内在する要因で発生したものではない。

まあ、このまま何もなければ、2,3か月のうちには株価は元に戻るだろう。

その後の動向は、実際に英国がどんな交渉方針を立案するのか、EUは英国とどう向き合うつもりなのか、英国に進出している企業はどう対応するのか等々、あくまでもリアルな次元に属する要因が決めることである。

基本はそうなのだが、やはり不透明感の高まりは投資を抑え、1~2年の景気後退は避けられんかもねえ・・・、短期的・マクロ的にはこの辺りの判断になろう。

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『英国は離脱の混乱をおさめるのに10年、離脱を後悔し始めてから10年、EU再加入を申請しようと決心するまでに10年、再加入申請が認められるまでに10年、40年後には元に戻るだろう』と、こんな見通しを語る人もいるようだ。

民主的な手続きでなされる政治的決定は、長い目で見てその国の国民の暮らしを全体として豊かにする、幸福にするはずのものであろう。政治はそういう風に行われていくはずだ。こう考えると、英国人がより満足できる道が、離脱の後に見つかるだろうし、おそらく英政府はEU当局と交渉して何とか見つけるだろう。

見通しとしては上のようになる。ただ、これは離脱した英国と残ったEUとの関係だけのことだ。間接効果、というか英国の行動が他国に与える影響と、その影響が英国にフィードバックする戦略効果までを考える場合に、今回の英国の選択が真に英国の利益をもたらすかどうか、定かではない。実にリスキーな選択だといえる。

それほどのリスクを覚悟してでも、EU当局の指図は受けたくないと、そう思わせる何かがあったとすれば、欧州統合そのものに大きな方向転換が迫られている ― 多分、根底には旧ソ連圏に対して純粋に政治的な観点から推し進めたEUの拡大戦略が(どの国の利益を反映した戦略であったのかは置いておくとして)経済的には無理だったという現実があるのだろう。

本ブログには、英国のEU離脱に関して5年前から関係情報をメモしている。左上の検索欄に<英国 EU>と入れて検索すると、最初の投稿は2011年時点にさかのぼる。そこでは(当時の時点で)すでに70%の英国人がEU残留/離脱の国民投票を望んでいるという世論調査結果が紹介されている。

シリア内戦をきっかけにする難民の大量発生は比較的最近に問題になってきたものだ。それより以前に、すでに英国民はEUに対して不満をもっていたわけであり、不信の根は深かったのだろう。

40年後に英国が戻ろうとしても、その時にはEUそのものが無くなっている可能性もゼロではない。

【加筆】

それにしても「国民投票」という政治ツールは、即効性はあるものの、実に危険ではないか。

国民投票の結果を再確認する国民投票を3か月くらい経ってから実施すればいいかもしれないネエ・・・。前の国民投票を否決する国民投票になる可能性はいつだってあるだろう。人の気持ちは変わるものだ。

2016年6月24日金曜日

EU離脱: 『何があるか分からない』のは本当だった

ひょっとするとと思っていたが、まさか離脱が多数を占めるとは想定外だった。英国の国民投票である。

ソ連崩壊以来、欧州が台頭して旧ソ連圏は後退した。ロシアのプーチン政権は経済制裁の下で逼塞状態にある。

英国がすぐにEUから離脱するわけではないが、結論は決まってしまった。ヨーロッパの弱体化が進むのは確実だ。

ロシアは喜ぶだろう。ロシアとドイツは今のところ(歴史的にも)悪くはない。ヨーロッパは弱体化する。その中でドイツは欧州筆頭国になる勢いを示すだろう。フランスは単独でドイツとやりあう必要がある。フランスは落胆しているだろう。落胆したフランスはロシアとの距離を縮めようとするだろう。ロシアは仏独を天秤にかけるに違いない。ロシアのプーチン大統領は中国を訪問する予定だが、過剰生産、過剰設備にあえぐ中国にはロシアの石油を爆買いする意欲はもうないだろう。そんな中国に頭を下げて頼みごとをする必要がなくなったとすれば、プーチン大統領は幸運ではないか。逆に、ロシアに貸しを作るチャンスを逸するだろう習近平国家主席は落胆を感じているだろう。日本にとっては少し有り難い話かもしれない。まさに『風が吹いて桶屋がもうかる』という話しである。欧州と距離をおく英国は、米国が対欧州、対ロシア戦略を考える際の価値が下がってしまったが、弱体化しロシアの影響力が強まる今後のヨーロッパ大陸に直面するとき、英国の存在はやはり大きいだろう。

非常に長い目でみて英国にとって欧州と距離を置くのが得か、共同体の一員であるのが得か、それは現時点ではなかなか予想できない所だ。しかし、自分の国の運命は自国で自由に決めたい、それができるだけの外交、経済資源を英国はもっているというなら、それはヤッパリ持っているのだろう。

それにしてもBP、RIO TINTO、HSBC、GLAXOなど英企業に投資するなら、今夜に買えばよかった・・・・そう思う人は多かろう。待っていた賢明な(?)人は、今日が千載一遇のチャンスだと思うだろう。

小生も「残留派」が勝つだろうと思っていた。

「世界経済は危機にある」と、安倍総理はサミットで話したそうだが、今後半年、米大統領選挙もある中で、来年4月に消費税率を引き上げると決めてしまっていいんですかと、それが心配だったから再延期したのです。「だから言ったじゃないですか」、そう言えるようになったわけで、日本の安倍総理もロシアのプーチン大統領と同じく、心中でシメシメと思ったりもしているのではないかねえ・・・・・。

『これでもうイギリスはダメだ』と断定して、欧州の拠点をパリやフランクフルトに移す、ロシアとの関係を強化するなど軽薄なことををすれば、それは第一次大戦後に大英帝国はもうダメだと軽んじて、ドイツの勢いに幻惑され、最終的に失敗した戦前の二の舞になるだろう。ここはよく吟味したほうがいいと思うねえ・・・。

それにしても、競馬やパチンコとは違う、実に迫力があるリアルそのものの政治劇ではあった。まあ、いま世界で話されているのは『キャメロン首相も、ホント、アホじゃなあ』。そんなところだろう。

2016年6月22日水曜日

離脱と決まる前日にしてはこの株価はない: FT指数

22日のロンドン株式市場は、国民投票前日であるにもかかわらず前日比プラスにある。まだ終わっていないが、FT指数は現在、前日比0.6%の上昇だ ― 但し、午後遅くに入って下げに転じているようでもある。

残留派の労働党議員暗殺事件の直後、一時は残留派が多数を占めるようになっていた世論調査も再び離脱派優勢を示すようになったそうだ。

にもかかわらず、株式市場が前日比プラスであるとはこれいかに、だ。当てにならないのは、世論調査のほうか、それとも英国株に将来をかける経済人がノーテンキであるのか。

この点についての感想はともかく、だ。確実に言えることは、毎日毎日、イギリス国民の心情は刻々として変わるのだなあという事実である。

ということは、大事な国の方向が<その日の気分>で決められる。そういうことでありますなあ、ということだ。いいのかな・・・こんなことで。

× × ×

先日の報道記事のように、最終的には英国一国だけが選択の結果を負担することになるのだろうと考えられる。その外側の世界市場は、今回のイギリスの選択にほとんど何も影響されずにこれまでの軌道をたどっていくだろう。

英企業でさえも、世界市場を相手にしているメガ企業は、ブリテン島に執着する考えはなにもないだろう。

それでも、23日のイギリス人の投票結果は大きな波紋となって株価や商品市況を動かしていくだろう。生産設備調整を余儀なくされる企業も出てくるだろう。

確かに世界に降りかかってくるコストもゼロではない。原発事故を起こした日本に暮らす人間がいうセリフじゃああるまいが、本当に迷惑な話である。

× × ×

ギリシアは、EUを離脱して債務を踏み倒し、通貨を暴落させるほうが、最終的にはギリシア国民は助かったと思うはずである。しかし、まだ残留しているし、ギリシア国民も残留したいと思っている。

イギリスは、EUに残留し、大陸欧州への影響力を持ち続けるほうが、最終的にはイギリス国民はよかったと思うはずである。しかし、離脱したいと思っている。そして本当に離脱するかもしれない。

人は色々だが、国もいろいろだ。

英国のEU離脱レファレンダムが近づいてきた

標題の件で離脱派が残留派の国会議員を暗殺したというので英国の国情はずいぶんと先鋭化し、複雑化しているようだ。

総じて首都ロンドンは残留を支持する人が多く、疲弊した地方都市は離脱を支持する人が多いという。

新聞も割れている。
 【ロンドン=岡部伸】英高級紙タイムズ(18日付)は1面で欧州連合(EU)離脱を問う23日の国民投票に関し、「なぜ残留が英国にとって最善か」との論説記事を掲載し、残留支持を表明した。
 同紙は「最善の結果は、自由貿易と改革を重んじるEU加盟国との同盟を英国が主導することだ」と指摘。「われわれは改革に向け残留した方が望ましいと信じる」と論じた。
 一方、英国最大の120万部の発行部数を誇る大衆紙サンは13日、離脱支持を訴える記事を掲載。両紙は新聞王のルパート・マードック氏が経営するニューズ・コーポレーション傘下の新聞。昨年の総選挙では共に保守党支持を打ち出したが、今回の国民投票では購読者層に合わせて編集方針を変えたとみられる。
 英経済紙のフィナンシャル・タイムズは残留支持を表明している。
(出所)産経ニュース、2016年6月18日

地域別にも濃淡がありそうだが、所得階層、というか社会階層別にも違いがありそうだ。

「上流」は残留。「下流」は離脱。

「中流」は?

上流志向であれば残留を支持。反エリートであれば離脱を支持。 ま、そんな所ではないかなあ・・・。

年齢別にセグメントしても、総じて若者は残留支持、中高年は離脱支持だそうだ。

性別ではどうなのだろう?・・・と思ったりする。男女で分けても、有意ではないのか、な。

まあ、概して言えば、地方で暮らす、中高年の、どちらかといえば低所得層ほど、EU離脱を望んでいる・・・と、データからはそう言えるわけだ。人口だけをみると、全英国的には多数なんだろうねえ。

多数が全体の方向を決めるのが、民主主義であると言われれば、確かに民主主義であるとも言えるだろうねえ…釈然としないが。

そんなところだ。



そういえば、米経済をとりまく四つのリスクが6月10日付けのWSJで紹介されていた。その四つとは、1.中国、2.設備投資、3.米政治(トランプ効果?)、4.米景気の失速速度であった。気になる英国の国民投票だが、これをアメリカにとってのリスクに数えたのは質問された専門家70人の中の3人のみであったという。

アメリカにはほとんど影響がなく、日本には津波のような影響がある。これも不自然な思考である。

世界経済においては、火事になった家が一軒出た。その時は大変だが、実はこの位の事で終わってしまう可能性は十分にある。むしろ(英国内を含め)世界の投機家に絶好のチャンスを提供しているとも言えそうだ。

国民投票といえばいかにも民主的だが、あまり賢明な選択ではない。英国のキャメロン政権が、EUを脅迫するつもりで約束したのが、本当の火事になってしまった感がする。

ま、いうなれば政治家による「失火」という辺りになるのではないか。

2016年6月20日月曜日

最近の枕元にある本

小学生時代の趣味は枕の側にあった書棚の一番下に並んでいた『日本百科大事典』からランダムに一冊をとって、眠くなるまでランダムに開いたページを読むことだった ー このことは既に投稿した。

最近、枕元に並んでいる書籍は、小生の読書歴を振り返るとややリバイバル調で、岡本綺堂の『半七捕物帳』、チェスタートンのブラウン神父もの、そしてつい先日に岩波文庫から出版された『自選 谷川俊太郎詩集』である。

チェスタートンは一冊目の「童心」と次作品の「知恵」を置いてあり、半七のほうは光文社時代小説文庫の第一巻がある。

半七は、青空文庫にも岡本綺堂の作品が多数収録されているので、買わなくともよいと言えば買う必要はないのだが、気に入った個所にもう一度直ぐに戻りたい時など、やっぱり本当の本に勝るものはないわけで、そこはどれほど進んでもKindleでは読書の体感という点で相手にならない。

それにしても、チェスタートンの叙述は中村保男の訳本で読んでいるのだが、蕭条とした風景描写がいかにも英国風であって、若いころにはピンと来なかった味わいがわかるようになった。その味わいが岡本綺堂の作品からも共通して感じられるのが非常に面白いと思う。半七シリーズは、幕府御家人の長男に生まれた綺堂が大正6年から昭和11年まで大体20年にわたって書き続けたものだが、江戸に生きて明治に日をおくっている老人の心境や、かつて旗本であった親族を思う語り手、町人の言葉遣いなど、すべてにリアリティの裏付けがある。

大学時代には、ヴァンダインやクロフツ、高木彬光や鮎川哲也、横溝正史を乱読し、仕事を始めてからはルカレやヴィリエがお気に入りとなり、池波正太郎の『鬼平犯科帳』に没頭したりした。その後はホームズに戻ったり、東野圭吾を見つけたりしていたが、『剣客商売』を読みつくしたあとは、ミステリー探しに飽きた状態になった。

どうやら元の好みに戻っているようだ。

チェスタートンの「童心」の奥付きをみると1991年9月20日15版とある。「知恵」は1983年8月12日3版になっている。

順番が逆になっている・・・。確か、発表順に買ったはずなのだが。いまある「童心」は捨てた後に買いなおしたものなのか・・・?

1991年9月というと母が亡くなって翌年のことだ。何か思うことがあってブラウン神父の一冊目を買い直したのかもしれない。が、当時はまだ波長が合わなかったようで、そのまま打っちゃっておいたのだな。

20年以上も放置しておいた本を偶々手に取って再び読んでみると、「実にいい」と感じる。こういうつきあい方は、電子書籍ではちょっと出来ないのじゃあないか。

本には本の良いところがある。

追伸:

谷川俊太郎の作品。学生時代には文庫本の三好達治をいつも鞄にいれていた。その三好の作品とよく似ているので、数年前、集英社文庫の『詩選集』全三巻を買った。が、文庫にするならやはり一冊にまとめてあるのが便利だ。

それにしても「20億光年の孤独」の中の「ネロ‐愛された小さな犬に」と、三好達治の「測量船」にある「Memoire」から「アヴェ・マリア」まで(岩波文庫版による)の感性はよく似ている。

二人はどうも師弟関係にあったことを巻末の解説で知った。

いま文庫本の三好達治詩集にはさんである栞は「秋日口占」にある。

ふたつなきいのちをかくて
愚かにもうしなひつるよ 
秋の日の高きにたちて
こしかたをおもへばかなし

案外若いころである。本当に歳をとってから思うことは上とは少し違うだろうと思うようになった。

2016年6月18日土曜日

都知事選の混迷 ≒ 政治家選別の混迷

二人続けて東京都知事がカネの問題で不名誉な辞任をしたというので、一体どうすれば立派な都知事を選出できるのか、と。都内では盛んに井戸端会議が催されているらしい。

本日の道新には道知事の海外出張に関連する経費が報道されていた。それによれば、ファーストクラスに搭乗する権利はあるものの、それは一度もなく、ビジネスクラスを使っているということだ。問題は『だからよし』というわけにはいかないという点だろう。

適任か、不適任かは単に出張費が高すぎるとか、別荘をもっているとか、そんなことではないはずだ。


そもそも今の日本人は、東京都の知事に、国会議員に、最終的には内閣総理大臣にどんな人物を希望しているのだろうか?

そこが、小生も、わからない。そもそも「日ノ本太郎」なる人物が実際にいるわけではない。確かめようがないのだ、な。

大体、都知事を一人選ぶときに、その人のキャラクター、思想、バックグラウンド、さらには評判、評価、仕事の仕方等々、有権者はどのくらいまで分かったうえで投票をしているのだろう?

ざっとした印象や、人気、世評だけではないだろうか?

こんな有様になるなら、知事選出も議院内閣制にすればいいのではないか。都知事なら、都議会が議員の中から選ぶわけだ。

だからといって、全うな人物が都知事になる保証はない。そもそも都議会議員にはどんな人物が立候補しているか。そこが不透明である。大体、都議会議員の報酬で、東京都を心から愛し、滅私奉公しようと一肌ぬぐ人物がどのくらいいるのか、ここもまたサッパリわからない。

ある県の知事OBは、報道番組で知事辞任の際のルールを決めておくのがいいだろうと話していた。アメリカ連邦政府で大統領が任期を全うできなかった場合は副大統領(兼、上院議長)が、それが不可能の場合は下院議長が、更に・・・という具合に継承順位が定められている。継承者が大統領職をつとめるのは残任期間である。

都知事なら残任期間が2年弱残っている。その期間を緊急的に勤める。ま、ピンチヒッターというわけである。

知事職もそうしてはどうかというアイデアだった。


それでもなお、政治家に対する不信や不満の心情は絶えることがないだろう。

永遠にこうなのかもしれないし、どこかで統治リスクにまで至るのかもしれない。

今の安倍首相は長州の政治家一族の三代目である。アメリカではクリントン、ブッシュ両家の政治独占を嫌悪する心情が強いと伝えられているが、日本ではヒラリー・クリントン元国務長官のエリート臭に対する反発に類似した心理が安倍首相に対してあるのだろうか。

民主党政権の初代首相をつとめた鳩山氏に対する盲目的な信頼を思い出しても、日本では血統に対する尊敬の念が意外と強いのかもしれない。

年齢に似合わず小泉進次郎議員の衆望が意外なほど高いのも、ある意味では親の七光りかもしれないし、別の意味では日本人の名門好き、家元好きの心理に適っているのかもしれない。

持タザル者ハ富ヲ欲スルガ、持テル者ハ金銀デハナク名誉ヲ欲シ、歴史ニ名ヲ留メント欲ス

小生の思いつきでこう書いたが、「カネは働いた分だけもらいますけどネ」という世俗的な政治家が嫌で仕方がないならば、すでにカネなり、土地なり、人脈なりをもっている人に政治をお願いするしか方法はないだろう。

何も持っていない、これからの人に、民主政治をまかせ、滅私奉公がモラルであると言い、カネを作るなと求めつつ、自分自らは儲かる仕事があれば喜ぶという有権者では、日本に「政治」なる行為は成立しがたい。というか、政治の新陳代謝はなくなる理屈だ。

こんな風に思ったりもする昨今でござります。

2016年6月16日木曜日

「官僚的イノベーション」ってある?

「官僚的」という形容詞は、当然ながら、ネガティブなニュアンスをもっている。細かい、非生産的、非効率、前例墨守、保守、反動的、新しいものを拒否する、古い・・・、まあとにかく類義語が出てくるわけだ。

だから、官僚に統治をまかせておくと社会が全く進歩しなくなる。そこで、選挙で選ばれた政治家が方向付けをしていく。それが近代社会の原理原則である - なので、『これはこうでなくてはならない』ということを、国民があまり拘って言い募ると、官僚に任せておくのが一番確実、かつ安心できる、と。この辺は、まったく逆説的にきいてくるわけである。

ただ、しかし、最近腹立たしく感じること。NISA(少額投資非課税制度)の申請から口座開設まであまりに日数がかかることだ。

いま国内株に投資すれば、たとえば住友商事の株式を購入すれば配当利回りは5%に達する。これにNISAを使えば、非課税だから丸ごと5%の利回りで運用できる。長期国債の利回りがマイナスになるというこのご時世に、だ。しかも、今は底値圏-もちろん英国、中国、米国などリスクはあるので断言はできないが-にあるから、キャピタルゲインも相当の確度で期待できる・・・。

ところが申請してから20日が経過しようと言うのにまだ連絡がない。調べてみると、長ければ一か月半かかる(こともある)というから驚きだ。

金融機関で申し込み手続きをしてから口座が開かれるまで、金融機関での事務作業時間を含めると、実際には最長で6週間以上かかる場合もあるという。
国税庁によると、NISAの口座開設数は2013年末時点で約475万件となり、政府が2020年の目標とする1500万件の約3分の1に到達した。
しかし、ロイターが証券会社と銀行の計8社に対して問い合わせたところ、口座の稼働率は平均で2割程度にとどまっている。口座数ベースでは出だし好調だが、今のところNISAを通した取引はそれほど活発ではない。


その原因は長い「待ち時間」にあるようだ。「1カ月半もすれば相場も変わるし、待っている間に投資熱も冷めてしまう」と前出の男性は話す。さらに足元の市場動向が下落基調にあることから投資意欲が湧かず、NISA口座が開設されても利用するかどうかは分からないとしている。
 (出所)ロイター、2014年2月6日

制度発足の直後から、もうすでに欠点が指摘されている。それでも直らない。

この制度は、個人投資家を支援するためイギリスで1999年にスタートした「個人貯蓄口座(ISA:Individual Saving Account)を参考にして日本で制度化されたものだ。本家のイギリスでは金融制度のイノベーションとして発足したこの方式も、日本では非効率な役所仕事になってしまったようだ。

ただ、Wikepediaによれば、2018年以降はマイナンバーを活用して口座開設手続きを簡素化していくという方向で<検討>がなされているようだ。

まだまだ、どうにもなりませんぜ、こりゃあ……。

2016年6月13日月曜日

米金利: まだ金利引上げのチャンスを探すものなのか?

FRBによる米金利引き上げは、過ぎてみると昨年2015年のある時期に必要な分量でやっておくべきだった、と今は思っているのではないだろうか?


8月には上海暴落。12月に引き上げを決めたら年明けには再び上海急落に端を発するダウ平均の暴落。

「いまは無理だよね』と思いつつ、再引き上げを延期してチャンスを探し、いよいよ上げようと思っていたら雇用統計の悪化があった。ちょっと待つかと思っていると、英国のEU離脱問題がクローズアップされてきた。『いまは無理だよね』に戻ってしまった。

今回の景気循環は世界的には設備投資循環として理解できる。今は過剰設備の状況にある。その中で米経済はほぼ完全雇用状態に近いと判断されている。雇用増加数が伸び悩むのは当たり前だ。完全雇用状態に近づいているのは日本経済も同様だ。4月の全国有効求人倍率は1.34にまで上昇した。全都道府県で1倍を超え、求職者数を上回る求人がある状況であるーそれでも「歓迎できない」と報道されているのは、景気判断云々ではなく、就業構造に関する問題であって、こちらは20年単位で考えるべき構造問題だ。

ま、どちらにせよ常に何かがあって上げるべき金利を引き上げられずにきた。上げるべき消費税率を上げないと決めてしまった。

適切な時期に決めるべきことを決めないでいれば、後になってより激しい反応が出てくるのは経済の常である。

自律調整できたはずのアメリカ経済も、判断の遅れのため完全雇用の制約にかかり、成長率の低下から投資が減少し、消費は旺盛なもののマクロ的には景気後退に入っていくかもしれない。典型的なヒックス的不況に落ちていきそうだ。

逃したチャンスはただ逃がしたという事実だけがあるのであって、忘れた約束事のように遅ればせながら実行しても、もはや事態を悪化させるだけである、と。傍から見ているとそう思うのだなあ。

2016年6月11日土曜日

世界株価と世界経済: 一喜一憂するのは幼稚にすぎる

安倍首相が消費税率引き上げ再延期を決める理由に世界経済の危機をあげたときに(一部を除く)専門家はおおむね『景気はいまそんなに悪くはないですヨ、危機なんてどこにもないです』、そう話していたものだ。

ところが世界の株価は、その後、非常に不安定になってきている。NY市場では連続の下げであり、それを受けて東京市場も低下を続けている。

 JPモルガン・プライベート・バンクの米株式ストラテジスト、ナディア・ロベル氏は「マクロ経済データは強弱まちまちで、英国のEU離脱の是非を問う国民投票も控えている。こうした中で株式市場は、米国だけでなく世界全体のマクロ経済環境に引き続き苦慮している」と分析。「バリュエーションの観点から見ると、利益成長の見込みはゼロかゼロに極めて近い。相場は2月の安値から非常に大きく上げてきたことから、投資家はこれから利益確保モードに入るだろう。昨年夏の相場の変動が大きかったことは誰もが覚えているためだ」と続けた。

(出所)ブルームバーグ、2016年6月11日 

利益成長の見込みはゼロだ、世界全体のマクロ経済環境に引き続き苦慮している、と。これは典型的に「何が起こるかわからない」という状況だろう。昨年夏の上海暴落のトラウマがあり、今年は英国のEU離脱の是非をとう国民投票がある。世界には先行き不安が広がっているのは事実である。

文字通り、どうなるかわからない。<専門家>の皆さんが言っていたことは、違っていたのではないですか、というわけだ。

ここにきて国際商品市況の上昇トレンドも変調になってきたことを強調する<専門家>も現れてきた。

まさに一喜一憂。

7月の参院選の後になって、<専門家>が何をどう語っているか?
誰にも予想はできないであろう。
それは現実が予想できないからだ。危機のさなかではないが、危機の入り口(かもしれない)。
何が起こるかわからない、いまは。こう考えるなら首相が言っていたとおりになる。

そうではないというなら、景気回復トレンドに変調はない。BREXITも大丈夫だ。中国も大丈夫だ。商品市況もまた持ち直す。そう主張し続けなければならない。そう主張する人は「消費税率10%、上げられる」というべきだ。

しかし、<専門家>はえらく慎重になってきたようだ。どうなんでしょうね、こういうのは?

そう感じる人は多いのではあるまいか。

まあ、個人的にはこういう時こそ、リスクを取って種まきをするべきだとは思うが。

2016年6月9日木曜日

越後長岡という町の「業」なのか

この夏の参院選が迫り各政党は臨戦態勢、というか既に戦闘モードに入ったようである。
 参院選で共闘する野党4党の党首級が8日、参院選の応援のため新潟県長岡市で合同の街頭演説を行った。長岡などを地盤としていた田中角栄元首相を「政治の師匠」とする生活の党と山本太郎となかまたちの小沢一郎代表も駆け付け、生活で側近だった元職で無所属の野党統一候補、森裕子氏への支援を呼び掛けた。ただ、小沢氏は田中元首相の弟子を自任しながら、北陸地方ではない新潟県を「北陸で最大の県」と発言する基本的なミスを犯すありさまだった。
(出所)産経ニュース、2016年6月8日 22時39分

長岡市には前の週末に訪れて、山本五十六記念館、河井継之助記念館を回ってきた。この話題は既に投稿しているが、戊辰戦争、太平洋戦争と長岡に縁のある人はいつも奮戦し、討ち死にしているところに一抹の悲哀を感じるのは、歴史好きなら共通の心理だろう(と思われる)。考えてみれば、田中角栄という政治家もそうである。政治的な意味合いではあれもまた一つの討ち死にではなかったか。

田中角栄記念館は既に柏崎市西山町に開設されている。柏崎市と長岡市は30キロはなれているので別の街だ。旧幕時代には柏崎市は親藩の越後高田藩、長岡市は譜代の長岡藩にあった。幕末には両藩は敵味方に別れたが、高田藩では長岡藩に対する同情の気持ちが強かったと伝えられている。長岡に本社を置く越後交通は政治家・田中角栄と深い縁があり、田中本人が社長をつとめたこともある。長岡市のホテルはホームページ中の観光案内で田中角栄記念館を紹介している。田中角榮もまた長岡・柏崎を含む北越から輩出した政治家であったわけであり、ひょっとすると長岡市にも政治家・田中角栄を追憶する施設ができるかもしれない。

そうなれば、河井継之助、山本五十六、田中角栄と近代日本で奮戦空しく散った悲運の人材三人がそろうわけであり、歴史好きには実にこたえられない場所になる。

それにしても、弟子の小沢一郎氏が新潟県を北陸に数えたという間違い・・・、新聞というのは細かいことを言うものだねえ。まあ、確かに新潟県は「関東甲信越地方」であり、「北陸地方」ではないことに行政区分上はなっている。他方、電気は東北電力から買っている。直江津までは北陸本線が通っていた ー 2015年3月からは金沢が終着となった。

古い呼び名では、福井県が越前、富山県が越中、新潟県は越後である。そして新潟・山形の県境には鼠ヶ関があった。太平洋側では福島の勿来関を越えればみちのくであったと同じで、日本海側では鼠ヶ関を越えればみちのくという感覚だったのだろう。山形県は出羽国である。要するに、新潟県までは「越ノ国」、ひと続きの北陸の土地として京の都の人々には認識されていた。

「新潟は北陸」としてとらえても感覚的にはマッチしている。それが自然であって、「間違い」というのは役人根性に過ぎる。

話が脱線した。その北越の政治家・田中角栄を師匠とする小沢一郎氏が、今回また再び長州・山口県出身の政治家・安倍晋三氏と対決する。そして、(おそらく)敗北するのであろう。越後長岡と縁ができた政治家の悲哀であるとすれば、これまた長岡という土地がもっている「業(ゴウ)」かもしれない。

2016年6月8日水曜日

財政赤字のツケはいよいよ直接国民に回る情勢になってきた

日本のメガバンクの筆頭である三菱UFJが国債入札の特別資格を返上するとの報道あり。
 三菱東京UFJ銀行は国債の入札に特別な条件で参加できる資格を国に返す方向で調整に入った。日銀のマイナス金利政策のもとで国債を持ち続ければ、損失が発生しかねないためだ。国債の安定消化を支えてきたメガバンクの「国債離れ」は、市場から大量の国債を買い上げてお金の量を増やしてきた日銀の異次元緩和に影を落とす。

 特別資格は「国債市場特別参加者(プライマリー・ディーラー)」と呼ばれる。発行当局と意見交換する場に参加できるなどの特典がある一方、発行予定額の4%以上の応札を義務づけられることが、三菱東京UFJ銀の重荷になっていた。

 今回は財務省も資格の返上を受け入れる見通しだ。プライマリー・ディーラーには現在、メガバンクや大手証券など計22社が名を連ねている。日本の金融機関が資格を返上するのは初めてだ。これまでは外資系証券が本国のリストラなどで撤退した例のみだった。

 系列の三菱UFJモルガン・スタンレー証券とモルガン・スタンレーMUFG証券は投資家に国債を販売する業務を担うため資格を維持する。
(出所) 日本経済新聞、2016年6月8日

民間金融機関の「国債離れ」は既に2年前から伝えられていたことだ。

5月14日に3メガバンクグループが発表した2014年3月期の決算は、いずれも最高益を更新するという好決算だった。一方、貸出とともに各銀行の収益源となっている市場運用では、3グループの間で興味深い違いが出た。 
最大のポイントは国債保有残高の動向だ。三井住友フィナンシャルグループは13年3月末の26.2兆円から14年3月末で13.8兆円まで減らした(三井住友銀行単体ベース)。金額にして12.4兆円、実に約5割の減少だ。一方、みずほフィナンシャルグループは8.8兆円(みずほ銀行とみずほ信託銀行の2行合算ベース)、三菱UFJフィナンシャル・グループは8.1兆円(三菱東京UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行の2行合算ベース)減らした。
いずれも金額ベースでは8兆円以上というドラスティックな減少額だが、前期末比での減少率でみると、みずほが約3割、三菱は約2割と、三井住友ほどではない。
メガバンクに限らず、国内銀行は資金需要の低迷を受けて貸出が思うように伸びず、預金量が貸出量を上回る預金超過の状況が常態化してきた。そのため、貸出に回せなかった預金の一部は安全資産である国債投資に振り向け、その保有残高を膨らませてきた。 
にもかかわらず、メガバンクがこの1年で急激に国債の保有残高を減らす方針に転じた背景にあるのが、昨年4月に日本銀行がブチ上げた大量の国債買い入れによる金融緩和だ。黒田東彦総裁が「次元の違う金融緩和」と述べたが、巨額買い入れを支えたのが、3メガバンクグループによる大量の国債売却だった。 
日銀の異次元緩和によって、国債発行残高に占める日銀の保有割合は18.6%(13年12月末)と1998年6月末の19.5%に次ぐ過去2番目の高さに上昇した。デフレ脱却を目指す日銀は、国債買い入れによる金融緩和を今年も継続する。 
そこで気になるのは、メガバンクが大量に売り、それを日銀が買い取るという構図が今後も続くのか、だ。
 (出所)東洋経済オンライン、2014年5月16日

銀行は日常業務で国債を担保に使用することもあるので、最小限の国債は保有しておく必要がある。言えることは、資産運用としての国債保有は過去のことになりつつあるということだ。

今回の三菱UFJの決定は、日本のメガバンクが国内のカネ余りの捌け口として日本政府の国債を買っていく、結果として財政拡大が日本の景気を下支えしていく、こういうマクロ経済戦略は継続困難となってきた。こういうことである。

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ひと昔前(まだそんな過去ではないか?)には、政府の赤字国債で助かるのは一般国民、国債利回りの急激な上昇(=国債相場の急落)で損失を被るのは、国債を買うしか経営能力のない銀行、そして銀行を当てにしている株主たち、つまり日本の富裕層である。そんな話が井戸端会議をにぎわせていたものだ。

しかし、日本のメガバンクはもう財政破たんで直接には損失をこうむらない ー 全く被らないというのは日本に本店を配置する限り無理であろうが ー 政府の動きに対して頑健な体質をつくりつつある。

ということは、日銀が国債を買うしか政府は財政を運営できない。いつか限界が露呈した時、日銀が国債評価損を引き受ける。日銀を倒産させるわけにはいかないので、政府が税金で日銀を支える。

日本の財政も、単に銀行にしわ寄せするという段階から、日本の国民にダイレクトに負担を求めるという段階になってきた。

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消費税が8%とか10%とか、焼け石に水のような細かな話があるかと思うと、年金額を4割減額するとか、保険料を3割アップするなど出来そうにない議論があったりする ー そもそも年金額を4割削れるなら、消費税率を8%から10%に引き上げることで迷うはずがあるまい。

予想できるのは、相続税率の引き上げである。消費税率の引き上げより、やってみれば相続税率の引き上げのほうが、それも累進的な引き上げのほうが、社会的抵抗は小さいはずである - まあ自民党には無理かもしれないが。

ただ子供であることを理由に親の資産を継承できるという判断がいつまで社会的に容認されるだろうか?それでなくとも、資産の不平等は所得の不平等よりも高い。

個人金融資産は1700兆円。実物資産を加味した正味資産では2700兆円(2014年度国民経済計算確報、ただし個人企業を含む)。他方、国債残高は840兆円。個人が保有する資産は、いずれ誰かが相続する資産である。

親の死に際して親の資産を国が奪うのは一種の暴力であるには違いない。相続税率100%というわけにはいかないであろう。それでも、相続税率引き上げで財政が再建できるというとき、日本国民の何パーセントがその方向に反対するだろうか?相続財産などあまりないという子弟のほうがずっと多いのだ。

私有財産権はなるほど神聖だが、親の資産は子の私有財産では決してない。

・・・・・・田園調布や成城学園、芦屋や帝塚山などいわゆる「高級住宅街」が消え去っていくときは予想するよりずっと近い。そう思っているところだ。地方都市の名士が代々住んだ豪邸もいずれ文化遺産として市町村の保有になるだろう。

世代全体として今の高齢世代は財政赤字で得をしてきた。最後に資産をお国に納めて(子供は落胆するだろうが)、生涯収支のバランスをとるなら、必ずしも将来世代に迷惑をかけるとも言えないのである。

・・・ ・・・

ウン? みんな国有財産になってしまう? そんなことはない。
収納して公有となった実物資産は、若くて野心がある能力のある人に払い下げればよい。この時点で政府の債務と相殺されて財政は再建される。

何パーセントか、外国人に払い下げれば刺激的だろう。こうして資産は再び民間で稼働する。払い下げられた新たな企業家が分割払いで国に返済すればよい。

2016年6月6日月曜日

新潟県: 観光地ではないがお薦め訪問地

下の愚息が新潟市にいるので週末に旅行をした。とはいえ、新潟市は観光地としてそれほど有名ではない。愚息から評判の良い温泉地をきくと、たとえば瀬波温泉はどうかという。自分も泊まったことがあるが、相当良い、と。それで温泉地のある村上市に一泊し、二泊目は新潟市内に宿をとった。

村上の宿はお薦めの汐美荘にした。確かに接客サービス、館内の清潔度、料理の味と量どれをとっても秀の評価に値する。




佐渡島は、思ったよりずっと島影が小さい。郷里の四国・松山の正面に見える興居島は佐渡島よりずっと小さな島だが、一軒一軒の家まで見えるかと思うほど近くにあるので、港に立つと視野全体の何割かを島が占めるほどに大きい。それに比べると、佐渡島はずっと遠くにあり、写真にそのまま撮ると写ったのか映らなかったのか分からない。

芭蕉の名句
荒海や 佐渡によこたふ 天の河

本当に佐渡の島影が眺められたのか疑わしくなった。(見えないが)佐渡があるはずの西の空には天の川が銀漢下り落つるようにかかっている、そういう叙景の句ではないかと今は想像する。


汐美荘は夕映えの美しさを謳っている宿である。しかし、季節は夏至の近く、日没を待っていてもなかなか日は沈まず、夕食の時間が近づいてくる。食事前には温泉入りたいので、この位でいいかと撮影したのが、下である。




温泉に浸かっているうちに更に荘厳の度合いを増したのが残念だった。

村上市は新潟県最北端にある町である。新潟市に戻る列車をまっていると向かいのホームには酒田行きが停まっている。



ちょっとした旅情を感じる。『鶴岡、酒田は行きたいところなんだよね。昔の庄内藩でね、やっぱり戊辰戦争の激戦地だったんだよ』、連れのカミさんと話す。

新潟市に戻ったその日は、愚息の運転で弥彦神社をみておく。





風格があって規模の大きい神社である。昔の越後一宮で、主祭神は天香山命(アメノカグヤマノミコト)である。この神は神武東征にも功績があったそうで、武士や軍人にも崇敬され、今に至っているよし。境内には古い杉の巨木が林立し、年代の古さは一目瞭然としてわかる。交通の便が悪いにもかかわらず、言葉の響きから察すると中国からの観光客だろう、ここ弥彦神社にも大勢来ていたことには、一寸吃驚する。

三日目は長岡に行く。歴史好きな小生は新潟ときけば当然に長岡市である。山本五十六、河井継之助、更には米百俵、良寛とくる。食べるほうでは、ヘギソバである、な。




敗戦の将となったが、歴史に名を残したの河井をはじめとする長岡藩士、藩士の家族達の本望であったには違いない。が、それにしても、このような家屋で、このように展示されているのは、気恥しく思うのではないかねえ・・・、親切な高齢のボランティア(だろうか)のお爺さんが、丁寧な解説をしてくれた。ありがたいことであった。『長岡藩は、7万石しかなかったんです、越後高田藩はずっと大きくて、親藩だったんですから(投稿者注:戊辰戦争当時は譜代の榊原家が統治)、そこが西軍に裏切るなんて情けないことでしたろう』。小生の田舎は、やはり親藩の松山藩である。一戦して大した損害も受けなかったのにすぐに降伏して、土佐藩に占領されてしまった。子供たちは『いくさをしたら、マの字に、ケの字・・・』、こんな手毬り歌をうたって遊んだと、司馬遼太郎の『坂の上の雲』には紹介されている。田舎は松山ですとは・・・言えなかった。

いま長岡城があった場所にはJRが通り、駅舎が建っている。新政府の意地悪であったのかもしれない。

『幕末で町は全部焼け、太平洋戦争でも空襲をうけてすべて焼けてしまいました。運の悪い町です』と笑いながら語る説明員のおじいさんの声が耳に残った。


長岡は生真面目な町である。
歴史好きにはこたえられない。










2016年6月2日木曜日

確かに今回の景気後退は2008年とは違う

2015年以来の景気後退はー内閣府による公式の景気基準日付では前回の景気後退はまだ2012年3月から11月までの期間であると認定されているままなのだがー確かに2008年9月に発したリーマン危機とは違う。

典型的な設備投資循環であると言えるだろう。

景気循環観察の古典的手法は商品市況に着目するもので、実質GDPの前年比に基づく議論は第2次大戦後に発達した方法である。どちらが正確であるか、それぞれ一長一短である。ここでは主要品目の国際取引価格を簡単にみておこう。

まず石油。引用元はすべてNASDAQである。



Source: NASDAQ

最近の石油関連株価の上昇は石油価格の反転が背景である。

次に、銅。


銅の国際価格は、設備投資、特にインフラ投資を反映して変動する。

石油価格と同様、リーマン危機の後に急落した後、ごく最近に至って底打ちしたかという図になっている。ただ、銅は石油に比べて、それほど明瞭には2009年から2016年に至る投資循環が形として表れていないともいえそうだ。むしろ、2011年にピークを付けてからは低下トレンドを辿っている。これはリーマン危機後に拡大した中国の公共投資(及び投機)によるものと推察される(詳しく確認してはいないが)。

さらに木材。


こちらは石油価格とほぼパラレルな変動を示している。ただリーマン前の価格急騰は見られず、むしろ2008年にはピークアウトしていた。石油価格に対する木材価格の先行性が認められるところは実に面白い。むしろリーマン後の価格上昇が目立つが、これも銅価格と同じく、中国の建設投資を反映していると憶測される(これまた詳しく確認はしていないが)。

小麦価格をみておこう。


リーマン危機後に急落しているのは同じである。その後の変動は銅価格に近似しているようである。2016年に入って、ごく最近の動きをみると、やはり3年に及ぶ低下を経て底打ちの気配が認められる。

このように、世界経済はリーマン危機による恐慌を谷とする中期設備投資循環の谷を過ぎようとしている段階だと思われる。

その意味では、これから更に世界経済が深い底に落ちていくという見方は現実的ではない。ただ、これにも条件があって、中国経済が輸出主導型高成長経済から国内消費主導型中成長経済にソフトランディングできるかどうか。そのマネジメントに失敗しないかどうかによる。ほかの新興国にもそれは言えることである。いま心配されているのは、経済的不安定が容易に政治的不安定に直結し、マネージできる課題がマネージできず、問題が危機になるという事態であろう。

いずれにしても、2008年の恐慌は、設備投資循環と建設循環が重なり合って谷を構成し、それとオーバーラップして「金融工学」という発展途上のテクノロジーの未熟さが露呈したところに発現したものであった。だからこそ"once in a century crisis"、「百年に一度の危機」であったわけだ。

今回の景気後退は特性が違う。ただ、日本が高度成長から中成長に移る境目で生じた「40年不況」を乗り越えるため、政府は戦後初めて赤字国債発行による補正予算を編成し、山一証券倒産を防止するため日銀特融にも踏み切った。政策決定面におけるこの種の飛躍は、多分に当局の人間的要素に依存するものである。

問題解決に失敗し、後退が危機に転化してしまう事態は、珍しいことではない。その意味では、世界経済はいま危機のすぐ傍にある-危機そのものにはないとしても。そう言おうとすれば、言ってもいいよね、と。これを間違いであると決めつけるなら、そちらこそ「間違い」であろう、と。

これも一つの観点だろう。
そんな風に見ているところだ。

ただ、まあ・・・、あえて言うなら、「軽減税率」も決まっていることだし、消費税率の10%引き上げは可能なんじゃないの?そうは思っていたので、やはり「再延期」は意外感があった。延ばすなら、その分、軽減税率の余裕はなくなるんじゃないの?そう思ったりもする。



2016年6月1日水曜日

中国株価の見通しが難しいのだが

昨日は安倍首相がサミットで発言したという「リーマン前」発言はなかったという話が出てきた。「何だかおかしいよなあ」という声に屈したのだろう。

しかしながら、だ(小生がへそ曲がりであるのは自分でもわかっている)。
On Monday, the Shanghai A-Share Index slipped under the neckline of an intermediate head-and-shoulders top, sliding through a very thin Ichimoku cloud. Not surprisingly, volatility is at its highest in two months. The move adds weight to a view that over the medium term a trading band between 2,750 and 3,200 points is being established. However, we shall also allow for cautious probing down to the psychological 2,500 level, maybe even 2,200, acting as a magnet because this index is still in a long-term bear market. Downside pressure increases if we hold below the neckline, then below the lower edge of the cloud. This should push the index down to the lows of January and February at 2,750 points.
Source: South China Morning Post, 2016-5-10

上海市場の株価が2500を割るかどうかが心理的節目になるかもしれない。5月中旬の時点でそう見ている。どちらにしても上海市場は中期的な視点では依然として弱気でみるべき市場である。そんな見方が示されているーもちろんこの見方も多数の見方の中のサンプルでしかない。現実には、その後2800台から昨日は2900台に戻している。ではあるが、2015年に5000超まで暴騰した株価は明らかにバブルである。そのバブルが崩壊したことも明らかだろう。にも関わらず、まだなお3000近くの水準にある上海市場は調整不足である。これまでの経験則から憶測すればピーク比▲70パーセントの1500に向かって低落中であるとすら見るべきなのではないか・・・。

東京市場の株価は特に最近は上海市場とシンクロしながら変動していることが観察されている。実際、みずほFG社長も『リーマン級危機はすごく意識している』と日本経済新聞(5月30日付け)で述べている。そこではこうも述べている。
 みずほの方針転換を促した一つは「歴史観」だ。“経済危機10年周期説”。1987年の株暴落「ブラックマンデー」、97~98年の「アジア通貨危機」、そして2008年の「米リーマン・ショック」。佐藤社長は「見事に10年ごとに大きな危機が起きている。これは単なる偶然じゃないと思っている」と解説する。
 根拠は「資本主義は成長の過程で必ず負のエネルギーをためていくので、時々はき出さないと次の成長に向かえない」という考え方。米リーマン・ショックが起きたのは8年前。あと2、3年で10年目を迎える。「危機的なモノがここ数年で起きると思う。それをいち早く見つけた者が生き残れる」と強調した。
経済予測は天気予報よりもっと当たらないものだーマクロ経済理論の看板をかけてはいるものの、実際には「マクロ経済の一つの見方」くらいにうけとるのがよい。理屈とは別に、経験則が侮り難いということはビジネスに身を置いていれば納得するものである。

他方、投資家(投機家?)として著名なソロス氏は今年4月時点でもなお以下のように語っている。
著名投資家ジョージ・ソロス氏はこのほど、中国政府は大量失業が経済に大きなダメージを与えることを認識しており、失業者の受け皿としてサービス業の発展を促進していると指摘。これが中国の金融危機の爆発時期を先送りすることになるが、結果的に規模を拡大させる恐れがあると警告した。
ソロス氏は、サービス業が製造業の失業問題をすべてカバーできないと強調。また、経済の安定成長を維持させるため、中国政府が貸し出しペースを加速させていると指摘し、これが大きな金融危機の発生につながると警告した。
一方、ソロス氏は自身がアジア通貨を空売りしていると宣言しており、中国経済にネガティブな見方を示したほうが自身に有利だとの見方も出ている。
(出所)ロイター、2016年4月26日

これまた、多数の情報の中のサンプルに過ぎない。自分が思うとおりのデータを探して、自分の見方に合致するデータを実証的根拠として示しても、単なるデータマイニング、いやもっと悪質なデータクッキングに堕してしまうのは明らかだ。

それでも、上のような見方がある以上、「今はリーマン前のような雰囲気があることを否定できません」という意見を一笑に付すとすれば、素人ならいざしらず、もし経済専門家でありたいというなら、失格であると言わざるをえないだろう。

特に、今後1年間は何があるか分からないというのが、現時点の不透明さを表現する適切な言葉だと思うのだ、な。