2016年7月6日水曜日

覚え書: 高齢化の中では、実質賃金が伸び悩み、労働分配率が低下するのがロジカルだ

付加価値がどのような割合で賃金と利潤に分配されるかという問題は、リカード、マルクス以来の大問題である。

そして、いま労働分配率が低下傾向をたどっているのは、グローバルな規模で進行している格差拡大の象徴であるとも言われる。日本も同じであって、間もなく投票される参議院選挙でも大きな論点になっている。

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当たりまえの点に気がついたのでメモしておく ― いま思いつくのも頭脳活動が低下した証拠だが。

国民所得とは付加価値の生産に参加する生産要素が獲得する報酬の合計である。

総人口が100として100全員が現役世代であれば、付加価値は働いて得る労働所得と資本を提供して配当・利子・賃貸料のいずれかを得る資本所得のいずれかに分かたれるという見方が経済分析の上でも効果的だ。もし労働所得部分に経営者自らが働くことの報酬である役員報酬(の一部)を含めるとすれば尚更だ。

もし全員が現役世代であれば、実質賃金の上昇は人の暮らしが向上することと裏腹の関係になる。

が、高齢化が進むと言うことは、働かずして所得を得る人の割合が増えるということだ。高齢者全体が得る所得はその社会の労働所得ではない。

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現役世代が減少すれば、賃金が上昇する(はず)ので、人から設備への代替を進めるプレッシャが生じる。たとえば自動化や人工知能(AI)を活用したロボットへの代替はその一環だ。

介護施設で働く人の数を増やさない一方で、一人一人にパワースーツ"HAL"を支給し、労働生産性、持続可能性を確保しようとするのは具体的な一例だ。パワースーツの装着可能性向上などR&D投資が増えるということは、典型的な資本深化の一例だ。もし人ではなく、全面的に介護ロボットにシフトするなら、もっと資本集約化が進むことになる。

これらの一連の事柄は、施設運営者の利益拡大 ― ヒトは高く(なければならない)、ロボットは安い ― の努力として進むはずだが、結果として現場で働く人、介護をされる人の満足度向上にプラスの寄与をすることを理解できないはずがない。

高齢化が進む中で賃金の規制や介護方法の規制など規制を全面的に撤廃すれば、機を見るに敏な経営者が勝ち組となる可能性が高い。しかし、社会的には望ましい状態を作ってくれる可能性が高い。

それは社会の進化というものではないか。


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機械への代替が進む中で賃金上昇は緩和される。人は減るので労働所得の増加も抑えられる。他方、資本集約化されることで生産活動は全体として減ることはないので、利益が拡大する。労働分配率は低下する。

「悪い低下」ではないだろう。

ロボットの持ち主が得る報酬は賃金ではなくレンタル利益、つまり利潤である。

自動化とロボット化を進めることで、高齢化社会の生産活動が維持可能となる。この方向を促進することは高齢者の生活水準向上、格差拡大を縮小するという政策目的にも寄与するはずだ。


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高齢化社会においては、実質賃金の伸び悩み、労働分配率の低下を問題視するべきではない。むしろ経済問題が合理的な形で解決されつつあることを裏付けるものだ。

人口増加社会における経済的な常識は、人口減少社会においては経済的な非常識となる。

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