2012年2月3日金曜日

欧州危機とドイツの負担

ドイツの五大研の一つであるIFO InstituteからNews Letterが届いた。

IFOが公表している景況感指数(Business Climate Index)はドイツと欧州の景気を把握するうえの主要データに含まれる。これによると1月に入っても、やはりドイツ経済は拡大を続けている。特に今後の見通しは顕著に明るくなっている。驚きますねえ・・・。フランスのサルコジ大統領が最近ドイツかぶれ呼ばわりをされているそうだが、それも無理ないか。現在の独経済の勢いには幻惑されてしまいます。ドイツを模倣して増税を言い出すのも無理はない。

同じニューズレターに欧州債務危機と不良債権処理に伴うドイツの負担を試算した結果が掲載されていた。


解説の部分だけを引用させてもらおう。本文はリンクしておきたい。
Figure 1 presents three different breakdowns of total exposure. The middle column shows the total potential exposure. This represents the guarantees and/or credit volumes provided via the bail-out initiatives and packages of the Eurozone countries, including contributions from the International Monetary Fund (IMF), as well as the sums that the European Central Bank (ECB) has spent on purchasing sovereign bonds and the Target credits granted to the central banks of Greece, Ireland, Portugal, Spain (referred to collectively as the GIPS countries) and Italy. The column on the left shows the amounts of this total that have already been paid out and/or firmly pledged to each recipient country, and which could potentially have to be written off should the recipient country become insolvent and any potentially available collateral be lost. The column on the right shows Germany’s share in the exposure depicted in the middle column and is based on the assumption that the GIPS countries and Italy drop out as warrantors. (Source:  IFO Newsletter, No.1, January 2012)
右端のドイツの不良債権(=資産喪失)は、ギリシア、アイルランド、ポルトガル、スペインというGIPS諸国に加えてイタリアまで破綻する場合の負担予想額である。単位は10億ユーロ。円に換算すると大体ドイツだけで60兆円になるのか・・・?EU合計では潜在的に1975(10億ユーロ)。約200兆円になる??まあそんなところかなあ。

どちらにしても心配されているようなスペイン破綻、イタリア破綻というドミノ破綻が進行すると、リーマンショックを超える谷底に世界経済が落ちてしまうことは確実なことだ。アメリカ経済とヨーロッパ経済、両者の間には経済政策当局の柔軟性、労働市場の柔軟性、競争メカニズムの徹底、個々の企業経営の柔軟性に大きな差があると見ている。リーマンショックからアメリカ経済は最終的には立ち直るだろうが、ヨーロッパ経済が日本の失われた20年をそのまま再演してしまう可能性はかなりあると思う。

× × ×

それにしても痛感するのは良質の情報を提供する能力の違いである。アメリカが発信している経済経営情報が極めて高いレベルであるのはずっと以前から言えることである。小生の専門分野である統計分析手法を試すサンプルデータを収集する源泉は、日本に居住しているにもかかわらず、最近はアメリカのFRBや商務省の経済分析局、労働省など米政府の公表サイトであることが多い。本当におかしなことである。日本政府も努力していないことはないのだが、情報提供にかける熱意の違いが、質量両面で歴然とした優劣につながっている — そう考えざるを得ないのだな。今回とりあげたIFOは民間組織である。日本の民間シンクタンクで、これだけ詳細なデータ、レポートを<無料で>提供している機関は一つもない — 小生の調査不足であったらお詫びしますが、まず確実にそうだと思う。

沈黙の経済大国であると見られても抗弁できない点は確かにある。日本で暮らしていてもそう感じることは多いのだ。

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