2012年2月20日月曜日

バイキングの勝利 ― やったもの勝ちの経済政策

Ambrose Evans-Pritchard氏が英紙Telegraphに連載しているコラム記事によればアイスランド経済の劇的回復は、文字通り、国家戦略的大勝利ということになる。最初の部分を引用させてもらおう。
Congratulations to Iceland. 
Fitch has upgraded the country to investment grade BBB – with stable outlook, expecting government debt to peak at 100pc of GDP. 
The OECD's latest forecast said growth will be 2.4pc this year, after 2.9pc in 2011.
Unemployment will fall from 7pc last year to 6.1pc this year and then 5.3pc in 2013.
The current account deficit was 11.2pc in 2010. It will shrink to 3.4pc this year, and will be almost disappear next year. 
The strategy of devaluation behind capital controls has rescued the economy. (Yes, I know there is a dispute about exchange controls, but that is a detail.) The country has held its Nordic welfare together and preserved social cohesion. It is slowly prospering again, though private debt weighs heavy. 
Nobody is forcing the elected government out of office or appointing technocrats as prime minister. The Althingi sits untrammeled in its island glory, the oldest parliament in the world (930 AD). 
The outcome is a vindication of sovereign currencies and national central banks able to respond to shocks. (Source: The Telegraph, Monday 20 February 2012)
 アイスランドの基本戦略は<債務踏み倒し>であった。
【ロンドン=木村正人】欧州債務危機で単一通貨ユーロ圏の国債格下げが相次ぐ中、2008年の世界金融危機で金融システムが完全に崩壊した人口32万の島国アイスランドの格付けが「投資適格」に引き上げられるなど回復が顕著になってきた。民間銀行の海外債務を政府が肩代わりせずに大半を踏み倒し、金融危機ではアキレス腱(けん)になった小さな通貨アイスランド・クローナが切り下げられ、輸出ドライブがかかったためだ。(出所: MSN産経ニュース、2012.2.18 19:48配信)
 資本の取引規制はする。為替暴落は放置する。借金は踏み倒す。やりたいほうだい。批判はあれど、それでも回復に成功すれば、大手格付け会社は投資ランクを引き上げてくれる。国債の信用も回復し、マネーを再び呼びこむことができ、経済成長が可能になる。その間、国家的団結は見事に維持された。<国家>たるものこうでないとねえ・・・というのは小生も同感なのである。ドイツの国旗を燃やしてまで反発しつつも、今後何年もの間、忍従の日々をおくるギリシア。ま、国のサイズが違うからと言えば、それまでだが、ちゃぶ台をひっくり返して座敷を出て行きたくなる誘惑にギリシアもかられるのではないか。そう思う今日の午後である。

× × ×

<債務踏み倒し戦術>は、幕末の薩摩藩がやった。上方資本に対する500万両の債務を無利子250年分割払いにリスケジュールすることに成功したのが調所広郷である。実質的には踏み倒しである。というより、明治維新と廃藩置県は、経済的に窮迫していた封建大名による体のよい債務踏み倒しである。結果として、破綻したのは借りた方ではなく、貸した方であった。その意味で明治政府は、あくまで武士による新政権であって、武士をカネで支配していたはずの商業資本による政権ではなかった。それだけは明白だ。ずっと昔に本を読んでいて思ったことだが、いま書いても、考え直す必要はないようだ。

ま、重債務問題から逃れるには色々と手はあるということだ、な。イギリスから見ると、ギュウギュウと絞られるギリシアは、ある意味で愚かにも見えるのでありましょう。

0 件のコメント: