しかし、民間企業は効率的生産と利益の実現を目的に設立された独立組織である。
社内は決して平等ではない。
上位の階層にある者は組織構成に則って下位の者に業務命令を下す事ができる。有能な社員を優先的に配置して、組織全体の効率的運営を実現する事は日常に行われている、というかそれが大事な事である。そもそもビジネスマンたるもの、会社が平等原理で成り立っていない事くらいは、とっくに分かっているものだ。まして軍隊、警察においておや、である。兵がどう行動するか、兵士の民会で決議をして、その決議にそって上官は作戦を決めるようにさせよう、と……本当にバカであります。組織の自己否定だ。
いかに民主的な国家に暮らしていようとも、起きている時間は大体は社員として動いている。そこでは命令を受けつつ動いているのだ。平等社会といっても、具体的毎日の次元においては、上役のプレッシャを感じつつ生きているのであって、国全体の平等の哲学は多分に理念的なものである、というのが現実なのだな。
こむずかしい話しなどせずに、周りを見なさいって。どこが平等ですか?そういうことであり、やはり現実と理念は区別して考察する必要がある。
国家が自らの構成原理を、国家内部のあらゆるサブ組織に貫徹させようとすると、全く愚かな行為となる事はままあることである。会社の組織運営に自由・平等・博愛の徹底を強制する、思想・表現の自由などを持ち込んで議論し始めると、国は残って暮らしは滅ぶことにもなるであろう。
国家とそれ以外のサブ組織は目指す目的が違うのであって、それ故に組織原理も違うのである。内部に多様なサブ組織を含む国家というメタ組織は、決してピラミッドの頂点ではなく、風呂敷のような存在だと考える。それが小生の国家観である。
朝日新聞に以下の報道がある。
まだまだ働き続けるつもりだったのに「仕事は年度末の3月末まで。4月からは来なくていい」と告げられ、納得できない――。短期の更新を繰り返し、市立図書館で丸5年働いてきた女性からの相談です。
(中略)更新が年度ごとで、働ける期間を通算3年や5年に限る自治体もあります。こうした運用は、労働者だけでなく、仕事に慣れた熟達者を失う自治体にも、サービスを受ける市民にも不利益です。不条理な「官民格差」に、きちんと抗議の声をあげれば、制度改善につながるはずです。
(出所)朝日新聞、2013年03月25日配信多様な働き方、幅広い就業形態を提供することは、雇われる側からみると選択の範囲が広がることである。選択範囲は、せまいよりは広い方が人々の便益にかなうというのが理屈だ。だから、官公庁組織において有期契約職員を雇用しているのは、雇う側にとっても、雇われる側にとっても、よいことであるに違いない。
短期雇用のマイナスは、なるほど期間が終了すれば、延長・再雇用の手続きを経なければ雇い止めになってしまう点にあるだろうが、反対に有期契約であるので延長せずに当期限りで突然退職したとしても、本人が不利益を蒙ることはない。つまり、短期雇用には短期雇用のプラスとマイナスがあり、長期・不定期・正規雇用にもプラスがありマイナスがあるということなのだ。
期間を定めない正規雇用はすべてプラスで、期間を定めた短期雇用はすべてマイナスということはない。プラスマイナス両面があるという事情は、雇用する側・雇用される側、どちらにとっても同じである。だから就業形態には広い選択肢を提供して、ベストミックスで組織を運営するのがよい。組織は、組織全体の利益を目指すわけであるし、雇われる側もまた自分と家族の生活を第一に考えるのが当たり前である。
上に引用した報道を読んでいると、どうもあるレストランでカレー、サラダ、コーヒーをアラカルトで注文して、それを食した後、臨席の人が同じ品をセットで頼んでいる、しかも価格は隣が800円であるのに、自分はバラ買いだから1600円する、「これはおかしい、バカにしている」と店にクレームをつける。「ほとんど同じものを食べたのだから、値段もほとんど同じであるべきだ」と。そんな連想をしてしまうのだな。
レストランの経営者は、すべての客を平等に扱わなければならない、などと国家建設の平等理念を持ち出してきては、かえって現場が混乱するのではなかろうか。やはり物事には節度が大事で、過ぎたるは及ばざるが如し。教条主義は社会全体を硬直化させることになるのではなかろうか。
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