こちらに来る直前、Amazonに予約注文しておいた"Emil Nolde - Meister des Aquarells"が出版予定時期より半年も遅れてやっと届いた。
ナチス政権の支配下、デンマーク国境に近い北ドイツの寒村に隠遁生活を続けながら、何千点にものぼる作品を、主に水彩で描きのこした。それらの作品は、第二次大戦後になってから油彩で描き直されたときいているが、本書は水彩画を対象に約80点を掲載している。
Emnil Nolde, Langensee
Source: Christie's
上の作品は、残念なことに到着した画集には選ばれていない。本当に残念だ。ま、ネットに出回っている作品が、改めて新刊の画集に入っているのも変な話ではある。
ノルデと言えば、"Landschaft"(風景)、"See"(海)、"Lilien"(百合)がタイトルに頻繁に登場するし、人物を描くときには"Alter Mann"(じいさん、翁など)も数多く使われている言葉である。実際、グーグルで"Nolde Watercolor"を検索すると、夥しい数の作品がネットにアップロードされていることがすぐに分かる。以下の画像もChristie'sから借用した。
Emil Nolde, Dschunke auf See
Source: Christie's
水彩画を描くとき、ArcheやFabrianoなどコットンでできた水彩紙に描くのが普通だが、ノルデは滲みが強く、白色が際立っている和紙(Japan Paper)を常々愛用していたという。そういえば上の2作品とも、特に下のヨットを描いた作品の方は、そのまま日本の墨彩画としても通りそうな雰囲気をもっている。
ただ購入しようとすると ― 小生はノルデの水彩画がほしくてたまらないのだが ― 大変高額である。例えば、上の"Dschunke auf See"は、Realized Priceが£39,650 ($59,316)と記されているから、大体6万ドル、日本円にすれば540万円くらいである。ちょっと手が出せない感じである。
しかし上の落札価格はまだましであって、いかにもノルデらしい海の絵になるとこんな風にレポートされている。
This was a very successful auction with 46 of 48 offered lots being sold for a total of $13,852,210 just below the pre-sale high estimate of $13,953,000. ... Lot 21, shown at the top of this article, is entitled "Meer und Zwei Dampfer Mit Rotem Abendhimmel" and is a 8 5/8-by-10 5/8-inch watercolor on Japan paper that was executed circa 1938-1945. It has a very modest estimate of $70,000 to $90,000 inasmuch as it rivals the best work of Turner. It sold for $167,500.
(Source: Here)
Emil Nolde, Meer und Zwei Dampfer Mit Rotem Abendhimmel
価格は、16万7500ドル。1ドル100円で換算すると大体1700万円!これはもう絶対的に入手不可能であります。
まあ、この絵を購入する人は、カネを1700万円持っているよりは、カネをこの絵に変えてもった方が有難いと考えるから、この価格で買うわけである。絵を買ってカネがなくなると生活に不便だから、1700万の10倍は流動資産をもっていなければ、この一作品をこの値段で買う気にはなれないだろう。となると、ざっと2億円の資産をすぐに換金可能な形でもっているはずだ。不動産も合せた資産全体では2倍計算するとして、まあズバリ、5億円か。
資産保有額5億円程度の富裕層であれば、上の作品を購入する気になるかもしれない。この一作品に限ってみての推量ではあるが。ま、これはゲスの勘繰りには違いないので、このくらいにして、小生は画集くらいで我慢するとしよう。それよりも、ノルデの水彩画はゼービュルにあるノルデ・ファウンデーションで良好に管理・保蔵されているようだから、時間をみつけて行くのが一番いいだろう。
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