ここ北海道の実家に滞在中、シャンパンを飲みほし、昨今流行のウィスキーを試飲し、東京の地酒「金婚正宗」に舌鼓を打ったかと思うと、すき焼き、カニ鍋を楽しんだ。その合間に小生ともおしゃべりをしたのだが、どうも仕事を始めてから、中身の面であまり成長をうかがうことはできなかった。ただ、周囲の人物、上司の人たちと良い関係を形成する―これがいい仕事をするためには実は一番重要なのだが―この点にはいたく心をくだいて来たようであり、その努力はかなり功を奏していると思われた。
とはいえ、論理構成力や問題の本筋をどうとらえるかなど、実質的な話題で試したところ、たとえば先日投稿した参院選挙違憲判決あたり、ズバリ本質を指摘しあうような会話を愚息とすることは出来なかった。やはり、まだ毎日の仕事の中で課題を処理することに120%の力をつぎ込んで消耗し、本や新聞を読む時間もないように見受けられる。
愚息が帰って行って、カミさんとこんな話をした。
小生: それにしても外柔内剛が理想なんだろうけど、「あいつは使える」っていうパターンになるのは、あんまり良くはないねえ…。
カミさん: 新人なんだから誰でもそうじゃないの?
小生: 中々覚えられない、要領の悪い新人もいるって言ってたろ?ホントに地頭が悪くて仕事が身につかないのもいるもんだけどね、自分の考え方とその組織の手順がどうも相容れないっていうかな、だから反発して仕事の覚えが遅い。これは決して悪い事じゃないんだよな。何を教えても、スウッとね、素直に吸収してしまうというのは、ある面、無主義・無信念の証拠でもあるんだよ。
小生: あの子、小難しいことは考えないのよ。あっそうそう、「東京バナナ」を買ってきたのが、まだ残っているよ。食べる?
小生: 東京バナナ?うちは東京でずっと暮らしてたんだよ。東京バナナなんて、今更食べるはずないだろ!それを買ってきたのか?
カミさん: あの子が好きなのよ。
小生: センスないなあ…ほんとに。無主義・無信念・無感性って言い変えんといかんなあ。
カミさん: だから上の人に評価されるんじゃないの?
小生: 「使える奴だ」っていうことだよ。どうも気にいらんねえ。
カミさん: そう言えばよかったじゃない。
小生: う~~ん、それは悪いから改めろとも言えんだろ。素直すぎるから悪いとは言えんからな。まっ、近年フレッシュマンが守るべき鉄則として推奨されている<ホウ・レン・ソウ(=報告+連絡+相談)>を実に巧みに実行しつつあるのが下の愚息の今日この頃であるらしいのだ。
しかし、どうなんだろう?
既存組織と最初から溶け合うように心がけ、何ごとも自己を滅して周囲と協調するというので、本当に組織は発展していくのだろうか?
本人の思想、戦略が明確であれば、ホウ・レン・ソウなど文字通りのマニュアル化、煩雑なルールでしかないだろう。柔軟な発想をもつ若手の創造力を抑えつけ、管理という美名のもとで企業の成長機会を奪っている諸悪の根源とすら言えるかもしれないではないか。というわけで、過剰な協調性は外柔内剛ではなく外柔内柔。単に「使える奴」。そんな風にはなってほしくないねえ……。今日はこんな風に思っているところだ。
そういう小生は、実に難しく、角(カド)があって、使いづらかった若手であった。もちろん自慢とは違う。その反対で、昔を思い出しては、冷や汗を流しつつ、亡くなった先輩に謝罪したかった。そんな後悔の念にさいなまれているのだが。
小生: それにしても、あの素直さは誰に似たのかな?
カミさん: うちの方かもしれないね。
小生: だけどあれだよ。僕のオヤジの方も現場派っていうかな、分担しながら徒党を組んでやっていく。そんなスタイルがすごく好きだったよ。
カミさん: あの子も現場派なのよ。作戦だ、戦略だなんて仕事はつまらないんじゃない?一年前にはこんな話はしなかった。それを今日はやっている。してみると、愚息はともかく、小生の方は見方の変化、考え方の進化というのがあった。その位は言えそうである。
× × ×
……とはいうものの…だ、まずは一兵卒として優秀であることを志す。それが、上の立場に立った時に人を活用し、組織の問題を解決できる。今日やっていることは、明日やるであろうことの土台になる。ま、そう見れば新・三無主義も過剰な協調性にもそれ相当の戦略性が隠れているのかもしれない。当分はそう思っておくか。
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