2017年6月7日水曜日

「加計学園騒動」で世論は分かれている

加計学園騒動そのもので書くことはなくなってきた。ただ、結末、というかこの騒動がきっかけになって、何がどう進んでいくかは全く予想できない。おそらく、<事前には>予想できないことが起こってきて、<事後的には>「加計学園」も一つのきっかけだったねえ、と。そんな風に物事は進んでいくのだろう。

圧倒的多数のマスメディアは、何ということか文科省前次官が正しく、総理、官房長官、そして組織としての内閣府、更に言えば国家戦略特区という制度そのものが悪い、と。そんな風な論調をとって、前次官の一言一言をそのまま流している状況である。

野党も国会の場ではマスメディアの論調に乗っている ー 「乗っている」というより、どこかの誰かの意図が背後にあるような印象も受けるのだが、だとすれば民進党などはツールとして使われていることにもなる・・・。

他方、「森友事件」と異なるところは、現在の状況に批判的な意見も出てきている点だ。覚書として整理しておこう。

記事1:橋下徹氏、森友や加計学園における安倍政権の対応を指摘
結論から言えば森友学園問題と同じく、安倍政権側にダイレクトにお金が渡っていない限り不正・違法性はない。・・・特に今回の獣医学部の新設を規制するような「需給調整規制」こそ日本の行政を歪めている典型例。すなわち加計学園に獣医学部の新設を認めたことよりも、これまで52年も獣医学部の新設を認めてこなかった文科省こそが行政を歪めている。そして何よりも前川さんも自ら手を染めていた文科省のルール違反の天下りこそが行政を歪めている。(出所:livedoor NEWS 2017年5月31日)
記事2:前川前次官の“反乱”に霞が関の官僚は非難ごうごう(八幡和郎)
 前川氏の言い分が事実無根とはいわない。「内部のメモ」としてはあったのかもしれない。だが、内容は最低限、著しい誇張だ。上司(官邸上層部)から希望をほのめかされても、あんな直接的な言葉で相手方に伝えるような部下(官僚)などいるはずない。
 守旧派の抵抗を排しての獣医学部新設は十数年前から構想され、民主党政権で大きく前進し、安倍政権が国家戦略特区制度を創設して岩盤規制に穴を開ける機が熟した。地域バランスから「四国でも戦略特区を1つ」というのも合理的判断だ。(出所:産経ニュース、2017年6月6日)
記事3:加計学園「問題」は本当に「問題」だろうか(古川康)
いろんな事情で全国的な制度としては担当府省がやりたがらないことをまず試しにある場所でやってみる、と言うことがこの特区制度の意味。だから国家戦略特区についての責任者は安倍晋三内閣総理大臣になっている。それぞれ所管の大臣にしておいたのでは物事が進まないからだ。
だから国家戦略特区について、責任者である内閣総理大臣がどのように考えるか、ということはとても大きい、と僕は思う。今まで報道されたところだけを見ていれば、今回の件は国家戦略特区のあり方としてそんなに違和感はないような気がしている。
もちろん友達だからやる、知らない人だから断ると言うような行政のあり方はおかしい。しかし、一般的にはメディアと言うのは役所側の主張に対して批判的な論調を持つことが多いが、今回の件についてだけは「文部科学省の主張が正しく、それが内閣府によって曲げられた」と言う流れで報道されているように思う。(出所:BLOGOS、2017年6月6日)

記事4:“告発”前川氏を文科省大先輩が“一喝”「文科省の態度を反省すべき」(加戸守行愛媛県前知事)
「加計学園」問題に関する、あるインタビュー記事が話題になっている。同学園の理事長が、安倍晋三首相の友人のため、愛媛県今治市に獣医学部を新設する計画が「総理の意向」で進んだと主張する前川喜平前文部科学事務次官(62)に対し、同省の先輩で、愛媛県前知事の加戸守行(かと・もりゆき)氏(82)が反論しているのだ。・・・加戸氏は「知事在任中に困っていたのが、牛や豚などの動物を扱う公務員獣医師が不足していたことだ」と述べている。前川氏の認識とまったく違う。 
 前川氏が強調した安倍首相の意向についても、加戸氏は「安倍首相が加計学園の理事長と友人だからと(意向を)言っていたとしたら、10年、5年前に(獣医学部が)できていたかもしれない」といい、加計学園の計画を高く評価している。(出所:産経デジタル、2017年6月6日)
記事5:経団連会長、加計学園問題「優先度低い」
経団連の榊原定征会長は5日の記者会見で、学校法人「加計学園」が国家戦略特区に獣医学部を新設する計画が国会審議の主要テーマになっていることに苦言を呈した。「集中して議論してほしい項目が山ほどある。優先順位からすれば加計学園ではないだろう」と述べた。榊原氏は国会で優先的に議論すべきテーマとして、北朝鮮問題やテロ対策、環境政策をあげた。(日本経済新聞、2017年6月6日)

愛媛県前知事にとどまらず、中村時広・現愛媛県知事が開設予定の獣医学部が「風評被害」を被ると懸念しているのは当然のことだろう( 出所:産経WEST、2017年5月25日)。読売新聞による前次官下ネタ報道も大方のメディア報道に棹さすという意味ではここに含めてよいのかもしれない。

どうも、こうしてみると安倍政権に対して産経新聞は徹底支持、朝日新聞は徹底攻撃、読売新聞は(何となく)政権派、そんな構造が垣間見え、ある意味で「代理戦争」を演じているとも言えそうだ。この周辺に数多くのブログやフェースブック、ツイッターといったソーシャル・ネットワークが網の目のように社会に「意見」を拡散させながら「世論」という一つの実態を形成しているのが今という時代なのだろう。

まあ、こんな構造は以前から周知のことでもあり驚くほどでもないが、上の少数例を見るだけでも日本社会の「チャンとした」人達は『加計学園問題は特に問題ではなし』、その他の圧倒的多数は『「特区」という制度を悪用して「うまい汁」を吸っている奴がいる』と。受け止め方にはそんな分断構造、というか分布の構造があることが、どことなく伝わってくるようだ。この分布の構造と各メディア企業の読者層、政党の支持基盤が重なり合って、現在の状況をもたらしている。そう思うのだ、な。ま、これもまた以前から「そうなってるよね」という程度の印象を与えているわけだが。

こんな中で、いま興味津々でみていることは「民共一体」の行方。つまり本来はリベラルな保守勢力であった民進党が選んだ共産党の「外出着」になるという生き残り戦術が、結果として極右からリベラルを含むいわゆる「保守層」が(意図しているにせよ、意図してはいないにせよ)自民党あるいは親自民党小規模政党に吹き寄せられるという結果をもたらし、そのことがまた何かをもたらす。そんな方向で起こる出来事の実際の形である。








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