2020年5月14日木曜日

抜かずの宝剣?それとも無能?マイナンバーカードの怪

一人一律10万円の定額支給金。この二か月、巣籠り生活を続けている小生も遠慮するつもりはない。そして、いまという時代、オンライン申請が効率的だと思っていた。何年か前にマイナンバーカードを申請して面倒でもe-Taxにして良かったナアと思っていた。

ところが、昨日来、マイナンバーカードを使ったオンライン申請の向こう側では自治体の職員が申請内容と住民基本台帳とのデータ照合を手作業、というか二人一組で目視、読み合わせをしてやっているという呆れ果てるような実態がテレビで報道され、文字通り吃驚仰天してしまった。

ひょっとすると、郵便申請の方がオンラインより速いかもしれないと伝えられているから、正に<3然>、つまり唖然・呆然・慄然の三重奏となった。

そもそも「マイナンバーカード」それ自体が、住民基本台帳データをカード化した「住基カード」の発展形である。なので、世帯主がマイナンバーカードでオンライン申請すれば、小生のカミさんは何という名前で、マイナンバーは申請内容と一致するかしないか等々、一瞬のうちにスクリーニングされて、あとは申請内容から銀行振込口座を作業用ワークシートにコピペするだけ。これまた(どうせエクセルだろうから)VBAで自動化していれば瞬時に自治体の仕事は終わるはずだと。こう考えていた。

ところが、実態はそうでなかったわけだ。その理由は、マイナンバーカードと住民基本台帳データベースが連結使用できるケースとして、災害は想定されているが、今回の新型コロナ感染は「災害」には該当せず、だからオンライン申請しても住民基本台帳データベースにはアクセスできない。そういうことである。連結するためには、法律を改正しなければダメだ、と。政令や省令ならすぐ改正できるが、法改正となると国会でやらんといかん。「こりゃあ、あかん」というわけだ。

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「政治(家)主導」なんて所詮はこんな程度サ、などと斜に構えるだけでは何も解決しない。確かに、もし20世紀のボトムアップ式官僚行政に任せきっていれば、この位の作業は祖語なくできたろう。この点については確信する。そもそも官僚組織にとって一律的なプロセスは最も得意な分野である。ただ、普段からそれが出来る法制、権限、システムを作りあげて磨いておかなければならず、以前なら省庁間を総合調整するための官庁として行政管理庁、経済企画庁などが存在していた。要するに、一律定額支給といった事務は日本政府にとってはツボにはまる得意中の得意だった。たとえば「防災」もルーティン化すれば「日常」になるわけで、この辺が日本独自の<集団的匠の技>だと言えていたような気がするのだ。それが「政治(家)主導」になってからはネエ・・・と言っても今更はじまらない。

もし国税庁に申告している銀行口座番号にもアクセスできるなら、給付金をオンライン申請時に「国税庁データの参照を承認」欄にチェックを入れさえすれば、住民基本台帳とのデータ照合、国税庁データベースから振込口座を取得、この二つが瞬時に完了し、市町村の担当職員は出来上がったワークシートをただ開いたうえ、あとは振り込み手続きを実行するのみ。というか、市町村を経由する必要もなく、総務省から直接的に振り込みまで済ませることができる理屈である。

小生: 安倍首相がさ、『今回の新型コロナ感染を災害に準ずる事態と解釈し、災害対応として許可されている行政手続きを進めることといたしました』、ただこの点だけ閣議で決めて、記者会見でそういえば済む話しヨ。それが出来ないんだネエ。 
カミさん: だって法律で決めてるんでしょ。 
小生: 解釈を変えたって言えば、それで済むよ。今度のコロナ、災害みたいなものだからね。国民も「そりゃ、そうだ」って、反対はしないよ。ま、野党は「また、解釈変更か!」って騒ぐだろうけど、政府有利の展開だろうね。このまま放っておくと、「バカ殿」になるのは間違いないネ。
カミさん: バカ殿? アハハハ・・・気の毒だよ、一生懸命やってるのに。 

こんな話を今朝もしたわけだが、このままでいくと、『結局、安倍政権がやったことは集団的自衛権で解釈改憲、秘密保護法や共謀罪をつくって、あとはアメリカから武器を大盤振る舞いで買ったことだけ』、そんな総括になってしまうかもなあ、と。『学校のオンライン授業は、所詮は急な話しで、準備もまだまだ』、『マイナンバーカードは非常時に使うために設けた制度であるのに、今回の新型コロナでは準備不足で役立たず』。まあ、観光に力点をおき、TPPやEPAも締結できたが、どちらかと言えば地味なPCR検査体制の弱体ぶりには気づかず、新型インフルエンザ流行後も公衆衛生の司令塔を設立しないままであった。

【5月18日追記】巷の指摘では消費税率を2回も引き上げ財政再建に貢献した点が挙げられている。しかし、「安倍政権による消費税率引き上げ」は民主党政権時の野田内閣が自民党・公明党と3党合意した「社会保障と税の一体改革」の一環であって、いわば前政権から引き継いだ政策合意を実行したという役回りだ。それどころか、2017年4月の景気拡大期に訪れた絶好の機会に税率をあえて上げず、2019年10月という最悪のタイミングで10%に上げたことで、既に始まっていた景気後退をより悪化させている。これまた政策判断上の大きなミスであるのは否定できない。

今回のドタバタ政治喜劇は、世界の中で笑いものになるだろうが、真面目に「政治家と官僚の仕事の分担、線引き」を深く考える絶好のチャンスになれば、これも怪我の功名だ。

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マスクや防護服、消毒用アルコールなどなど、もう2,3か月も経ったのに必要な物は何もなしの「ナイナイ尽くし」に加えて、安倍政権の8年間、実は『あれもやってない、これもやってない』であったのか、と。長すぎたサボリのツケの請求が一気にやって来た感がある。

功罪相半ばするというより、罪の方が多かったかもねえ、10年も経てばこんな評価が定着してしまうかもしれない。

ところが、
日本は新型コロナでは「勝ち組」なんだよ。「超優等生なんだよ」。死者数も致死率も格段に低い。政治は結果が全てだ。もう少し政府も称賛されていいはずだよ。それが評判が悪いなんて、まったく理解できない。
こんな思考をする人もいるようだ。

日本の死者数の少なさ、致死率の低さは「日本の奇跡」と呼ぶ人も海外には多いらしく、その原因について様々な憶測をよんでいるらしい。カミさんは「そんな風に考える人が理解できない」と言っている。これが普通の人の感覚であろう。人は色々、である。

まあ、野球でいえば「先発ピッチャーが打たれて、投手交代が遅れるうちに大量失点したうえに、チャンスでは代打が凡退。こりゃあダメだあと思っていたところが、8回になって相手が出してきたクローザーが大乱調。奇跡的な逆転満塁ホームランで逆転勝ち」。試合後のヒーローインタビューには監督が出てきて、「今日は冷やひやしました、何とかなると思って、こらえたのが勝ちにつながりました」と。どんな展開であっても、結果がすべてだと言いつつ、自分の采配が良かったと宣える人もたまにはいるから、上のような思考には驚かないが、「変なおじさん」に分類されてしまうのは確実だろう。

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