2020年5月13日水曜日

一言メモ: 特定警戒地域と解除区域との間の人の移動を止められる?

政府による緊急事態宣言が一部解除される見通しだ。

ところが今度は、解除される34県と自粛が継続される東京都、北海道ほか「特定警戒都道府県」との間で予想される越境移動をどう規制するか。これが問題になっている。

まあ、当たり前の問題提起である。

解除される地域は「特定警戒都道府県との往来はこれまでどおり自粛するように念を押してくれ」と政府に要望しているようだが、お願いしても耳を傾けない人々は政府が何を言おうが罰則なき要請に従うはずがない。

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こんな問題が生じると、法律専門家は「やはり罰則規定が必要である」とか、「入県を拒否できる権限を知事に付与する」等々、すぐに法的権限の議論を始めたがる性向をもつ。

確かにルールを明らかにするのは行政の透明性を確保するうえで欠かせない。

しかし「これこれ、このように行動してほしい」ことがあるならば、命令よりもインセンティブを刺激するのが最も効果的である。命令に服さないこと自体に快感を感じる人物は一定数いるものだ。そんな人には自らそのように行動するように動機付けをすればよい。

移動を抑制したいなら、移動コストを上げればよいのだ。そのための手段なら様々ある。

例えば、

JR、私鉄の運賃体系をより一層、必要なら極端に距離累進的にする。たとえば東京ー鎌倉なら臨時的に片道運賃を現行の940円から約1.5倍の1500円に上げる。東京ー名古屋であれば、片道乗車券運賃を現行6380円から外出規制期間中は約3倍の2万円に引き上げる。一方で、各駅停車3区間なり5区間以内等であれば運賃を据え置く。そうすれば、不要不急の遠乗りは自らの意志で避ける。遠方から出かけてくる人の数は減るだろう ― 完全にシャットアウトするには入県を拒否する権限がいるがそんな事が必要だろうか。

ビジネス目的の人は定期を使うはずだ。定期がない場合でも商用なら大口契約を臨時に結べばよい。通勤や通学目的の定期代は据え置きにすればよい。バスも同じだ。高速料金も大型トラックを据え置く一方で、普通の乗用車は料金を距離累進的に引き上げればよい。路上の違法駐車取り締まりが必要な点は言うまでもないことだ。何なら駐車禁止区域を臨時的に拡大する、県内住民にのみ駐車票を発行してもよいだろう。

まあ、とにかく方法なら幾らでもある。

最初の非常事態宣言が4月7日に出された時、安倍首相は『交通は止めません、これまで通りです』と語っていたが、人の越境移動を制御することが求められている時に、移動コストを「これまでどおり」とするのは経済的ロジックに矛盾している。モラルに訴えるのは社会がギスギスするだけであり愚策である。

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価格に手をつけると、『カネでヒトの行動を縛る』と言って、政策の品性が低いなどと非難する人が多いが、自分で考えて決めるよりは権力から命令されるほうがいいと考えるなら、そちらの方が品格が低いというものだ。

どうやら政府の「新型コロナ諮問委員会」に経済専門家が入るということだ。

最初からエコノミストが入るべきで遅きに失した感があるが、人々の行動を望ましい方向に誘導する工夫が出てくることを期待してもよいだろう。

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