なので、数字が徐々に明らかになってくるはずの惨憺たる経済状況を踏まえて、今年の夏から秋冬にかけて株式市場をどのように展望しているのか?この問いかけには「まあ、分かりませんよ」という以外に答えはない。
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とはいえ、新型コロナウイルス禍で実体経済の損傷は大きい。エコノミストによっては1929年の世界大恐慌以来の惨事になるだろう、と。実際、昨日公表されたアメリカの失業率は14.7パーセントで、第二次大戦後で最悪の数字となった。ちなみに世界大恐慌時のアメリカでは1933年に25パーセント超の高さに達し、実質GDPは29年のピーク比で27パーセント程度まで低下した(例えば資料はこれ) — 失業率は実体経済に対して遅行性をもつ経済データである。NY株価は、1932年7月8日にダウ平均が41.2の底値をつけるまで1929年9月のピーク比で実に89パーセントの下落を演じた。
これを考えると確かに恐ろしい。
ただ、
1929年の大恐慌はカネの流れが破綻し、『何を作っても売れない』という需要消失型のパニックであった。
今年のコロナ不況では、需要全体が消失したというより、必要な商品が売られていない一方で、売られている商品は買い手がつかない、需給調整不全症型のスランプが進んでいる。増産に手間取り所得が増えない業種がある一方で、販売不振で減産しているため所得が減る業種がある。なのでGDPがマイナスとなる。前にも書いたがこんな要約になる。故に、市場調整機能が作動するように政府が参入・資格・開業規制を緩和し、生産要素が円滑かつスピーディに移動するインセンティブを刺激できるなら、それが問題解決としては最も有効で副作用のない王道である。
その意味では、今回のコロナ不況は1929年の大恐慌とは原因も病態も異なった「経済の病」である。
ということは、1929年の世界大恐慌と同じ処方で経済政策を立案しても効果はそれほど期待できない、まあ効果ゼロではないにしても、問題を本質的に解決できず、税金の無駄に終わる可能性が高い。こうも言えるだろう。
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こう考えると、今は公衆衛生・医療専門家の意見を聴いている政府が、今度は経済学者の意見に耳を傾けるようになると仮定すれば、実は現在の経済的危機は「突然の戦争状態」に放り込まれた国がどの程度のタイムラグで新たな環境に適応するか、その競争である、と。その認識にいつ至るのか。小生にはここがポイントであると思われるのだ、な。
戦争経済では必ず完全雇用が実現する。勝つためにはいくら生産しても間に合わないからだ。いつ新たな需給均衡に達するか、可能な限り速やかに新たな価格体系と産業配置に到達するとして、それはいつなのか?できるのか?問題はこの点に集約されている。
もちろん"Return to Normalcy"、新たな正常状態にどうやって軟着陸するか。これも解決するべき問題である。
コロナ前の正常状態からコロナ後の新・正常状態に一挙に移ろうとするのは無謀である。目の前の医療上の、公衆衛生上の問題を解決するための生産基盤を整えなければ、いつまでも危機の本質が解決できず、泥沼的状況が続くだろう。
つまり、長期戦略(戦略というのはそもそも長期的なものだが)が不可欠なのである。
3月上旬には下のようなことを書いた:
当面1か月、3か月、1年、ワクチン製造の目途がたつまでの2年程度までに分けて、<緩慢な感染拡大>と<死亡数の極小化>を担保するための戦略見通しがメディアを通して伝えられるだろう。「長期戦略見通し」には、当然、経済戦略が不可欠なパーツになる。コロナ前→感染拡大と集団免疫獲得プロセス→コロナ後という3つのフェーズがある。「不況対策」とか、「救済措置」ばかりを論じるのは、実に近視眼的で、矮小化そのものだ。
実は、「安倍一強」と揶揄される現政権にそんな「長期戦略」がきちんと策定できるのか。十分なスタッフが質量ともにあるのか。甚だ不安である。
そこで今は以下のように今後の株価を展望している。印象派的にならざるをえないが。
この問題解決へ道筋ができるまでは日本の株式市場はV字型回復は無理で、せいぜいU字型、従来戦略の破綻で茫然自失しているかのような政府の姿勢によってはL字型の推移もありうると。今後の日本の株価動向は三択ではなく、二択で見るべきか、と。そんな印象だ。
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