2022年1月12日水曜日

ホンノ一言: コロナの第6波は「もうやって来た」のじゃないかと言う話し

今の時代、《話業》、《話芸》の主舞台となると、もはや落語や漫才というよりワイドショーということになるのじゃないかと思われる中で、今夕も某ワイドショーをカミさんと一緒に視ていたところ、やはり「言葉の仕事師たち」であるせいか、面白い表現が耳に入ってきた。『(コロナ感染の)第6波が現実のものとなりつつあるいま・・・』、こういう言い回し。思わず感心した小生、カミさんに話しかけた:

小生: 「第6波が現実のものになりつつあるいま」ってサ、なんでこんな持って回った言い方をするのかなあ。「第6波がやって来たいま」ってシンプルにいえばいいのにネエ。この「現実のものになりつつある」って、なぜ進行形にするの?一体、こんな台詞、誰が思いついたのかナア・・・

カミさん: そうだね(笑い)

小生: 大体、第6波はもう現実だよ。マスコミもそう言っているじゃない。だから政府も対応を急いでいるんじゃないの。「現実のものになりつつある」ってサ、どういうことなんだ。「第6波がやって来つつあるいま」なんて可笑しいだろ。まだ現実のモノにはなっていないってことかなあ・・・

カミさん: もっと増えて、収まり始めたら、やっぱり第6波だったって分かるんじゃないの?

小生: フ~~ム、確かにねえ、そう言えば2020年の初めにサ、新型コロナが中国から広がり始めたころ、WHOのテドロス局長は『パンデミックという言葉を軽々しく使ってはいけない』って言ってたっけネエ。それがイタリアからフランス、イギリス、アメリカまで段々と広がってくると、『これはパンデミックと言わなければなるまい』って、エラク呑気な話をしていたよナア。火がボヤのうちは『火事などと軽々しく言ってはいけない』、それが屋根まで炎上したあとで『これは火事と言わねばなるまい』、それに似ているねって笑ったっけ。

カミさん: そうそう。だから「第6波が来た」って軽々しく言っちゃあダメなんだよ。

小生: なんだか官僚みたいな感覚だネエ。マ、TV局なんて、官僚と似た感性だろうネエ。現場から離れた東京の都心にいて、正味で一体なにがプラスの仕事なのかよく分からないしサ、それで以てそれなりの収入をもらっているところなんか、役人とよく似てるよ(笑)。

カミさん: そんなこと、普通の人は言わないヨオ。「憧れの職業」なんだよ。

小生: へえ~~~

・・・で、マア、この辺でこのおしゃべりは、これ以上展開されることなくして終わったのだが、最近は政治家の記者会見ばかりじゃなく、TVのニュース解説でも「ひょうたんナマズ」のような捕らえ所のない、輪郭がハッキリしない、色々な意味に解釈できるような、両論併記のような話の進行振りが増えている印象がする。

それにしても、小生が10代の頃には《話芸》といえば落語家、漫才師、講談師など文字通りの《噺(ハナシ)家》と相場が決まっっていた。舞台俳優、映画俳優もセリフ回しで自己表現をするのだが、ドラマ表現のための素材は「言葉」ばかりではなく、「表情」、「所作」もあり、「沈黙」や「間」もまた何かを伝えるには有効なツールであったりする。なので、まさに「言葉の職人」というと、やはり落語家、それも身振りや表情をおさえ、枯淡な声で話しだけを聞かせる江戸風の真打・落語家が「話業」に従事する専門家としては最も価値がある。そう思っていたのだ。

21世紀になってからは、和風の「噺家」はすっかり勢いを失って、「話業」といえばスーツを着てTVスタジオにドカッと座って話す(か、立ち話をする)ワイドショーMCに代表されるようになった。毎日刻々と入るニュース素材をどんな言葉で表現するか、おそらくキチンとした脚本は作成されていないものと想像しているが、しかしMCやコメンテーター達の発言を注意深く聴いていると、確かにそこにはプロットがあり、ストーリーがあり、何かを訴求しようとしている。つまりそこには演出がある。監督であるプロデューサーの演出の下で「話芸」として成立させている。そう感じるのだ、な。

だからこそ、落語の『寿限無』や『目黒のサンマ』ではないが、言葉の洗練には気を配ってほしいのだ。

「あぁ、これ、きんや、また目黒などに参りたいな」

「ははっ目黒は風光明媚な場所につきまして」

「いや、風光などはどうでもよい。この前行った時に出て参った、あの黒やかで長やかで、美味なる魚、さんまを…」

この『黒やかで、長やかで、美味なる魚』という表現が頭に浮かんだ時、そこには表現技術上の「創作」があった。「笑い」を誘う、新しい表現技術があったわけだ。

こういう目で、ワイドショーを視ているとネエ、なるほど「江戸の寄席」が「東京のTVスタジオ」になったのは仕方がないにしても

第6波が現実のものになりつつあるいま・・・

 これは、聞いていて耳ザワリであるし、そもそも「不正確」であると思う。

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