2022年1月4日火曜日

ほんの一言: 今年の箱駅駅伝に想う

読売新聞がバックアップする箱根駅伝をTVで観戦するのが、ここ30年程の習慣である。ちょっと調べてみると、TV中継が読売系の日テレでスタートしたのが1987年の第63回だそうである。しかし、それより以前、小生が岡山県に出向していた1984~85年当時も、夫婦二人でTV観戦していた記憶があるのだ。そのときの情景も、正月三賀日の休日をのんびり過ごしていた心持ちもよく覚えている。すると、更に調べていくうちに、こんな説明がWikipediaにあった:

日本テレビが中継を始める前の第55回(1979年)から第62回(1986年)までは東京12チャンネル→テレビ東京が箱根駅伝の中継番組を放送していたが、1月3日12:00 - 13:54の録画ダイジェスト放送(ゴールは生放送、中継を開始した1979年は13:25 - 14:10に放送)であった。

してみると、あれはテレビ東京であったのか、と。そう思ったりするのだが、その頃の岡山市で東京12チャンネルの放送を視聴することはできたのか、という新たな疑問が湧いてきたりする。記憶の中では、順天堂大学が何連覇かしたはずだが、岡山在住時であったはずの60、61回大会(1984、85年)の優勝校は2回とも早稲田になっている。順天堂は次の62回大会から4連覇を達成している。どうやら、順天堂の箱根駅伝全盛期は岡山から千葉県・柏市に転居したあとのことであるようだ。「そうか・・・あれは岡山にいた時のことではなかったンだなあ、柏に移ったあとか・・・」と。

どうも、記憶というのは、何枚かの過去の情景を並べ直すような作業だから、時間的な継起が正確ではない。 

それはともかく、

今年の大会は青山学院大学の完勝で終わったが、例によって、本日のTVワイドショーではその話題で持ちきりである。

上の愚息はとにかくスポーツ観戦が大好きなので、何でもよく知っている。

愚息:駒大で8区を走った選手。持ちタイムではダントツなんだけど、秋に太腿を骨折したばかりだから、無理だったみたいだよ。

小生:8区というと、持ちタイムでは圧倒的に劣勢だった順天堂大学の選手が、逆に途中からスパートして、そのまま走りきって区間賞をとったヤツだな。

愚息:あれは、想定外というより、心配していたことらしい・・・

小生:多分、優勝を狙って賭けたんだろうなあ。でもな、それは大学のスポーツでは邪道だと思うネ。大学のスポーツは、要するに「体育」なのさ。勝って何か得すること、学生だからカネじゃあないだろうけど、何か欲しい物があって、それで頑張るなら、それはもうプロだよ。学生スポーツとしては邪道だな。色々選択がある中で、わざわざ大学でスポーツをやるっていうのは、運動をして身体だけじゃなくて、精神というかな、メンタルも強くする。これ以外にはないだろ?学校のスポーツの目的ってこれしか本当はないはずなんだな。そのプロセスでもし優勝するとか、表彰台に立てるなら、これはご褒美だし、そんなイイ思い出を作れるのは、神様からのプレゼントだ。でも、大学スポーツの目的は、あくまでも体と心を鍛えるということだから、勝つために出場して骨折した箇所をまた悪化させるというのは、結果からいうと「学生スポーツからの逸脱」ってヤツにあたるな。

愚息:監督は優勝したいだろうけどね

小生:これが相撲の照ノ富士だったら、これはもう「体調のいかんにかかわらず、横綱たるもの、カネをもらう以上は、お客さんの前で恥ずかしい相撲は見せられん」ということになるンだけどネ、学生にそれを求めるのは教育にはなっちゃあいない。4年走って、卒業したときには足が壊れてました、なんてことは人を造る教育としては完全な失敗だ。 

愚息:こんど悪化したらもう駄目らしいよ。 

勝利した青山学院の原監督は評価が上がっているらしい。確かに「口八丁、手八丁」、箱根駅伝優勝を目的に掲げた練習プログラムをハイカラな名前のプロジェクト仕立てにして、参加する若者たちを奮起させて、ヤル気を興し、あとは仲間同士の自主的な「切磋琢磨」で個々人の成長を促すというのは、相当の「やり手」である。アンチが相当多数いるらしく耳にするのは、部員集団を統率して、集団全体のレベルを引き上げる方法論が、どことなく企業的、ビジネス的で、旧来型の不器用だが情熱だけはある監督像にハマりきらないためであろう。

ずっと以前、昔と言ってもよい位だが、プロ野球の広岡ヤクルト監督が「海軍式野球」という名前でトップダウンで、かつ整然としたリーダーシップを実践してみせ、一世を風靡したことがある。アマチュア・スポーツとはいえ原監督という紛れもない「おじさん」が現代の「若者世代」をまとめ、一つの目的のもとに「結集」させ、「メディア露出」と「コミュニケーション」を駆使しつつ「指導」を続け、「自発的成長」を促すことに成功し、課題である「最終ゴール」に誘導していくその「体系的方法」には、当然、注目が集まるだろう。同監督がこの10年間で成功してきたことは、多くの日本の企業経営者が正にいま悩みながら、模索していることでもあるはずだ。

アクティブ・ラーニングの実践例であるとも小生には思われ、大学教育のあり方という目で青山学院大学の駅伝の成功を詳細に研究して見る価値は大いにありそうだ。

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