2022年5月10日火曜日

断想:「戦争のロジック」と「感染のロジック」と

今日の投稿は、非常にベーシックな点の確認と、たまたま思いついたことの覚え書き。

ロシア=ウクライナ戦争。既に一種の《交渉ゲーム》の局面に移り、長期化必至の情況になってきている。

まさか『正しい方が勝つ。侵略者は敗北するべき』という意見がどの程度まで世界全体においてまだ優勢であるのか?それは小生には不明だが、ただ交渉モデルからある程度は予想のつくことはある。


例えば1億円を二人で山分けするとき、当事者はどんな分配で妥協するだろうかという問題がある。これは二人の利害が対立しているとともに、決裂すれば分け前がゼロになるという意味で、対立と協調が入り混じった交渉ゲームとなる。

交渉の公理に沿った解は「二分の一ずつ均等に分ける」というものだが、現実には貢献度、交渉力によって異なる解が選ばれるかもしれない。が、先ずは二分の一ずつ均等に、が目安となり、更にこの二分の一ずつ均等にという解は、交渉を非協力ゲームと解釈した時のナッシュ均衡でもある。これが交渉プロセスを理解するための理論的な道標となっている。

「二分の一ずつ均等に」という交渉解はシェリングの「フォーカル・ポイント」とも重なっている。

この考え方に沿ってウクライナの戦争を《ロシア陣営 vs 旧西側陣営》の武力紛争とみるとして、

  1. ウクライナを戦場とする今回の戦争において、いずれかが決定的に勝利するという結果は双方とも求めない。
  2. どの妥協線が<双方とも二分の一>に相当するのかを、暗黙のコミュニケーションを通じて模索していく過程に入っていく。
  3. 故に、旧西側陣営による対ウクライナ軍事支援は、<双方とも二分の一>という妥協線に到達するための持続的かつ限定的な支援を目指す。
  4. ロシアによる核兵器使用については、先日の投稿のとおり、新たな政治的境界線を模索するという難しい問題を提起するので、ロシアはかなり慎重である理屈だ。ただ、使用するとすれば<双方とも二分の一>という公理的交渉解から余りにも逸脱する結果を防止するための使用となるだろう。

まあ、こんな方向で1年ないし2年という時間を経て一先ずは終息するだろうと予想する。このプロセスが進む中で、ロシアが消耗戦に疲弊して、国力を減退させるとすれば(西側もエネルギー、食糧事情等で相当疲弊するはずだが)、次に訪れる<旧西側陣営 vs 中国>という競争ゲームにおいてそれだけ優位に立つはずだ、という見方は日本のTV画面でも既に語られている。マ、その通りだと思う。

先に熊を叩いて、あとで鶏を絞め殺す戦略

中国は今回の武力紛争をこう観ているそうだが(熊だったか、虎だったかは忘れたが)、今後の西側対応はかなり戦略性を明確に出していくのではないかネエ、と思う。但し、旧西側が個別合理性を露骨に出していけば、ウクライナのゼ大統領は(当然)怒るわけであり、アメリカも巧みにやらないと

10年経ったらウクライナは反米急先鋒の国になっていた

こんな結末も可能性の一つとしてはあるだろう ― 実際、アフガニスタン、イラク、イラン、その他中東全域を含め、アメリカが親米政権を育てようとして成功した例は、ほとんど第2次大戦後の日本の例だけに限るのではないかとすら思われるほどだ(日本は明治大正期を通してそもそも親米的であり陸軍のみが日本国内で例外的であった)。

なので、アメリカによる今回の対ウクライナ支援が実を結ぶのか、

先の事は分からない

というのが、いま言えることではないかと考えている。その意味では、今回のウクライナ戦争は「アメリカの陰謀」でも何でもなく、その場の状況に対応してやっている、それだけのことであるという見方には賛成する。

「戦争」については、曲りなりにも「理論」があるが、コロナ禍のような感染対策については基礎理論はないだろうか?

以下は付け足し・・・

「マスク解除」でワイドショーが盛り上がっているのが、大変滑稽だ。そもそも日本ではマスクは「義務」ではない。故に、マスクをしたくなければ、外せばイイ。ただそれだけの事ではないか?

にも拘わらず、

マスクを外せるということを政府が宣言するべきではないか

という話が、大真面目に世間で語られること自体が極めて日本的である(TVでもそう話していた)。

イギリスについては、BBCでは先日以下の報道があった。一部を抜粋すると:

  • 中学校と高校では20日から、教室内でのマスク着用が義務ではなくなる。共用部分で顔を覆うべきというガイダンスも「間もなく」撤廃される
  • 公共の場でのマスク着用義務は27日に終了する。ただし、閉鎖された場所や混雑した場所にいる時、知らない人と会う時にはなお、顔を覆うことが推奨される
  • 27日以降、ナイトクラブや大規模イベントで、国民保健サービス(NHS)が提供するワクチン接種証明書の提示が義務ではなくなる。ただし、主催者はなお、証明書の使用を選ぶことができる。
URL:https://www.bbc.com/japanese/60063782

アメリカでは<政府によるマスク義務化>そのものが違法であるとの判決が出てしまった。
米フロリダ州の連邦地裁は18日、ジョー・バイデン政権による公共交通機関でのマスク着用の義務付けについて、「違法」であり無効とする判断を下した。

URL: https://www.bbc.com/japanese/61145745

日本では、最初からマスクは「義務」ではない。義務ではなかったことを、政府が「義務を解除します」と言えるロジックはない。が、それでも

マスクはもうしないでください

と、まさかネと思うが、やりかねない。もし実際にこうなれば、実に理屈が通っておらず、やはり日本的だと思う。

マスク云々より、最も有難いのは、感染者がまた増加して、自分が発熱した場合にとるべき、行動ルーティンである。近くのクリニックに行って、検査・診察を受けて、もしコロナに感染していれば、自宅療養、投薬等々、医師が話してくれる。そんな状況になれば、感染者が増えても、岸田政権の支持率は低下しないだろう。しかし、

感染センターに電話してもつながらないヨ!保健所からも連絡がないヨ!!

まだこんな体たらくであれば、感染者が急増すれば、内閣支持率は急低下するだろう。夏の参院選も含めて、何ごともコロナ次第になる。


戦争もコロナも、ある程度まで、視るべき目線は決まってきている、と言えそうだ。

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